オーストリアの生産者、アルコール度数による法制度を廃止

オーストリアの生産者、アルコール度数による法制度を廃止

あるワイン生産者は、アルコール度数によるアペラシオン規則の設定は、温暖化前の今よりも冷涼だった時代の過去の遺物であり、やめるべきだと言います。


国際的なワイン業界では、気候変動によるワイン栽培へのダメージをいかに抑えるかが問われる中、オーストリアでは、温暖化するブドウ畑の現実と伝統の戦いというような事例が現れました。

 

ヴァッハウの著名な生産者Franz-Josef Gritschは、気候変動とワインのアルコール度数との相関関係を、制度的なレベルにまで押し上げた世界初の生産者の一人です。この問題はアペラシオンの規則にますます影響を及ぼしています。Weingut FJ Gritschのオーナーであるこの若きエノロジストは、1983年以来ヴァッハウ・ワイン産地の生産者を結集してきたVinea Wachau協会を辞めることを決めました。

 

その理由は?この協会のワイン格付けシステムは、いまだにアルコール度数-糖度とブドウの成熟度-に基づいており、気候変動がブドウ栽培とワイン醸造に及ぼす影響を考慮していないためです。

 

グリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの産地として有名なヴァッハウには、Steinfeder、Federspiel、Smaragd といった、アルコール度数を前提とした独自の格付けシステムがあります。

 

Weingut FJ GritschはヴァッハウDACを創設したワイナリーのひとつなので、難しい決断でしたが、熟慮の末の決断となりました。

 

「2023年ヴィンテージから、私たちはFederspielやSmaragd といった、Vinea Wachau協会のワイン格付けシステムの典型的なカテゴリーでワインを分類することをやめ、もっぱら“より広範な” (Districtus Austriae Controllatus)原産地呼称ピラミッドに従って分類するようになりました。その理由は、気候条件の変化や国際的な背景を考慮すると、DACシステムの方がより信頼性が高く、将来性があると考えるからです」。とGritschは説明します。

 

ヴァッハウのシステムは、品質カテゴリーに基づいてアルコール度数の上限と下限を定めており、ブドウ畑でのブドウの適切な成熟を心配しなければならなかった時代には、理にかなっていました、と彼は言います。

 

「今、私たちは毎年、このカテゴリー分けが気候変動のある現代にそぐわないと感じています。アルコール度数による格付けは、ワインの品質評価にはならないからです」。

 

オーストリアの若いワインメーカーによると、これは特に国際レベルで顕著だということです。

 

「私たちは、様々な輸出市場のパートナーや小売業者から、アルコール度数による格付けはもう時代遅れだと言われ続けています」。

 

このニュースはオーストリアワイン業界をざわつかせましたが、それはアクスポイント、ホッホレイン、ロイベンベルク、クラウス、ジンガーリーデル、セッツベルク、1000-アイマーベルク、カルコフェン、デュルンシュタイナー・ブルクなど、この地域の最高の立地に15haを所有するオーナーが、問題を投げかけているからだけではありません。

 

ヴァッハウ・ユネスコ世界遺産の中心に位置するシュピッツ・アン・デア・ドナウの教会広場を見下ろす場所にあるWeingut FJ Gritschは、 Vinea Wachau協会の創立メンバーであることに加え、この地域で最も歴史あるワインセラーのひとつです。13世紀に設立されたこのワイナリーは、地元に古くから伝わるブドウ栽培の伝統と最先端の技術を融合させ、200年以上にわたってワインを生産しています。

 

ヴァッハウには、世界で最も厳しい生産規制があります。ワイン生産は法律で定められた栽培地域に限定され、会員はヴァッハウ以外の場所でブドウを購入したり、ブドウ畑を所有したりすることはできません。急斜面のブドウ畑での収穫はすべて手作業で行わなければならず、ゆるやかな斜面であっても機械の使用は禁止されています。同協会の仕様書にあるように、ワインを表現するためにブドウ畑の名前を使用することは、ヴァッハウでは長い伝統があり、最もよく知られた名前の多くは13世紀にまで遡ることができます。

 

「これらの名前は、単にブドウの原産地を反映しているだけではありません」と、協会は説明します。「これらの名前はまたワインの特徴を示しています。そのブドウ畑がどのような場所なのか、誰が所有していたのか、あるいは地元の歴史的な出来事を暗示していることも多いです。100以上の異なる畑は、地質、土壌、気候、地形の違いから生じる複雑性を表しています。ワインメーカーの個人的な理解と経験が、ヴァッハウのテロワールを反映する最終的な要素なのです」。

 

Vinea Wachauの規則では、Steinfeder、Federspiel、Smaragd というスタイルは、ブドウの成熟度と出来上がるワインの複雑さを示し、これはFranz-Josef Gritschが批判しているアルコール度数と品質の明確な相関関係を確立するものとなっています。

 

Steinfederはアルコール度数が11.5%を超えてはならないが、Federspielでは最高12.5%という規定です。Smaragd では最低アルコール度数は12%です。

 

しかし、これらの数値は、今日のように温暖な気候ではなかった時代、協会が設立された当時に決められたものです。

 

この規則に代替するものはすでに動き始めています。2020年の収穫から、ヴァッハウ産のワインはDACのピラミッドに従って生産されるようになっています。地域ワイン(Gebietswein)、村名ワイン(Ortswein)、単一畑ワイン(Riedenwein)です。

 

「原産地重視の考え方は、この地域に合っていると思います」とGritschは言います。「アルコール度数よりもね。ヴァッハウDACの規定は、この地域にとって未来志向の新しいシステムとなりました。それゆえ、私の努力がこの流れに弾みをつけ、私の地域のブドウ栽培のさらなる発展に寄与することを願い、辞任することにしました」。

 

 

引用元: Austrian Producer Quits System over Alcohol
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