ナパの大きな決断、スタイルか実質か?

ナパの大きな決断、スタイルか実質か?

ナパのあの有名な豊かなスタイルはテロワールに勝るのか?ある専門家は、今こそ難しい話をする時だと考えています。


・ヴァレーでテロワールは重要なのか?それとも、ワインメーカーのスタイルがテロワールに優先してもいいのだろうか?この疑問は先月、このトピックの第一人者から投げかけられました。

 

『ワイン・バイブル』の著者であるKaren MacNeilは、ナパ・ヴァレーのワインについての有識者で、最も尊敬されているライターの一人であるだけでなく、実際にナパ・ヴァレーに住んでいます。彼女は頻繁にナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの教育的なテイスティングを行っています。筆者はナパのワイナリーが彼女を雇ってワインを紹介するイベントに参加した事もあります。

 

MacNeilは先月Philippe Melkaが手掛ける高級カベルネの試飲会に参加した後、Facebookに投稿し、活発な議論を巻き起こしました。 「これらのワイナリーは全て、Philippe Melkaというコンサルタントを雇っている。これらのワイナリーは全て、ふくよかで柔らかく、骨格のしっかりした、とても高価なナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンを造っている。その多くがほとんど同じ味であることは問題ないのだろうか?」

 

これは皆が「おっ」と思った瞬間ですが、それはこのコメントのせいではありません。SNSでは毎日のようにそんなことが書かれているのです。発信源が問題なのです。MacNeilは部外者ではなく、ナパのカベルネについて最も詳しいライターなのです。

 

また、Melka はナパ・ヴァレーで最も尊敬されているコンサルタントの一人でもあります。MacNeilが参加したAtelier Melkaの試飲会( Premier Napa Valley トレード・オークションの下見会)には、30社ものワイナリーの顧客がいました。ナパ・カベ愛好家でなければ、 Dana Estates ($600のワイン)やRoy Estate($300のワイン)のような「ビッグ」な名前でさえ、無名同様かもしれません。 Raymond VineyardsやQuixote Wineryのような例外を除いて、Melkaの顧客は高価なナパ・カべを少量生産する小規模生産者であることが多いからです。言い換えれば、まさにテロワールが重要だと思われる種類のワインです。しかし、本当にそうなのでしょうか?

 

ワインの議論ではよくあることですが、Facebookでの議論は盛り上がりました。

 

ある小さなワイナリーのオーナーはこう書いています。「Philippe Melkaについて特にコメントするつもりはないが、私はナパ全体が『魂を失った』と完全に思っている。そして2010年以前の、ビッグで、大胆で、絹のように柔らかく、濃い果実味の凝縮したワインの時代に戻った。最近のPNV(Premier Napa Valley )のオークションをざっと見れば、ナパが少数の有名なワイン造りのコンサルタント、スタイル、方向性だけの産地になりつつあることは明らかだろう…。ナパは自分自身を鏡で見る時だと思う。我々はすでに高い価格設定のために産地の勢いを失っている。均質化によって次世代の消費者も失うことになれば、破滅的だ」。

 

しかし、Melkaのワインをいくつか扱っている流通業者は反論しました。「試飲しました。マグナムのLailが気に入った。12年と13年のヴィンテージは素晴らしい。ワインビジネスの原動力は常に品質です。彼のワインのスタイルは、よりエレガントなブレンドだ。同一性に関しては、私にとって問題ではない。マルゴーや他のテロワールのワイン、そして世界中のワインメーカーのコンサルティングを受けたワインには、共通の特徴があるのではないだろうか?消費者がこれらの生産者全てを一度に購入できることはめったにない。骨格のあるフルボディのワインも同様だ。偉大なワインとワイン造りは、時の流れに耐えるものです」。

 

MacNeilは彼にこう答えた。「念のために言っておきますが、私もLailのワインが大好きでした。とても個性的だと思った。(彼女は他のワインについてはそう思わなかったようだ)。

 

茨の道

業界関係者ではなく、ワイン愛飲家からもコメントが寄せられています。「ボルドーが各シャトーを独自の基準で区別していることは評価したい。創造性には限界があるかもしれないが、少なくとも区別はできる」。

 

また他にはこのような意見もありました。「ワイナリーやその顧客層にとっては問題ない。消費者が望むスタイルなら、どこに問題があるのだろう?」

 

MacNeil に電話をしてこの話をする前に、MelkaのワインがPNVオークションでどの程度の成績を収めたか調べてみました。答えはとても良いものでした。

 

Melkaは、1本あたり$1167(卸値)という最高値をつけたFairest Creatureのワインに関わった3人のワインメーカーの内の1人でした。オークションに出品された彼の他の4つのカベルネ(Raymond、 Quixote、Gamble Family、Fairchild)の1本あたりの平均価格は$290で、カベルネ全体の平均価格は過去最低の$207でした。Philippe Melkaは、ワインバイヤーがナパのカベルネに熱狂し続ける手助けをしているとも言えます。

 

「このコメントをソーシャル・メディアに公開したとき、多くの人が 『これはひどい。ワインは似たような味をするべきではない』と言うだろうと思っていました」とMacNeilは語ります。「しかし一般の意見は正反対だったと言えるでしょう」。Philippe Melkaには成功したスタイルがあり、それは消費者の心を打つのです。

 

「Philippe Melkaは素晴らしい人だし、とても才能があると思う。しかし、いいとこ取りばかりはできない。ナパ・ヴァレーには16のAVAがあり、テロワールを反映したワインを造っているとは言えない。そして、どれも似たような味わいのワインばかりだ」。

 

Melkaは多くを語ろうとはしなかったが、次のように述べました。 「私はナパ・ヴァレーのテロワールを広める地質学者/ワインメーカーとしてキャリアをスタートさせた。1991年からナパでワインを造り、1995年からオークションでワインを紹介してきました。このようなことを聞くのは初めてです。誰かの味覚に反論するのは難しい」。

 

確かに、それは事実です。ロバート・パーカーは引退するまで、ナパを神のように支配していました。ワイナリーのオーナーは、近所の人が孫を自慢するように、パーカーのスコアを自慢していました。パーカーがテロワールを気にせず、ワインの味だけを気にしていたのは有名な話です。しかし、突出した著名な批評家がいない今、消費者は誰の意見を最も重視するかを決めなければならないのです。

 

MacNeilは読者を増やそうとはしていません。彼女が心配しているのは、ナパ・ヴァレーの将来だと言うのです。

 

「商業的な成功は別の論点かもしれません」と彼女は言います。「でも、そこには何か悲しいものがある。ブドウ栽培と農業の違いは、ブドウ栽培が差別化を重視していることです。同じものであってはいけないのです。これらのボトルはどれも高価だった。その多くは非常に手の込んだ重いボトルに入っていたので、味が似ている事は目立たなかった。全てとは言いませんが。Lailは少し違っていて、私はそれが好きだった。その他はマーケティングも似ていた。価格も$25以内だったし、環境保護の観点からは無責任なハンマー型ボトルを使っていた」。

 

「Melka の試飲会で話をした(ワイナリーの)オーナーたちの多くは、ワインビジネスの経験が比較的浅かった。彼らは自分たちが正しい事をしたと思っていた。Helen Turley&David Abreu時代のようだった。彼らは正しいコンサルタントを雇った。そのコンサルタントがトップへの早道だと信じていた。でも私は、『土地のテロワールを表現しようとしているなんて、言わないでくれ』と思った。違うでしょう。 Philippe Melkaのワインの独特な豊かさを表現しようとしているのだと言うべきだと」。

 

「私たちは自分たちが何を見逃しているのかさえ分かっていないのです」とMacNeil は言います。「フレーバーやアロマ、スパイスやテクスチャーの全く新しい表現を見逃しているかもしれない。あなたや私のような人種がワインを愛する理由のひとつは、ワインは頭の体操になるからです。何かを味わって、『これをどう言葉にすればいいんだろう?これは魅惑的な風味の万華鏡だ』と思う。もし味わいが万華鏡でなくなり、何度も使えるような数個の説明語だけになってしまったら、ワインは崩壊し始める。ワインがある程度代替可能なものになれば、なぜ価格の安いワインを買わないのか?という事になります」。

 

「これらのワインは、ワインが本来あるべき姿に対するアンチテーゼなのです」とMacNeil は述べます。「Matt Kramer の “somewhereness “(その土地らしさ)という言葉を思い浮かべるでしょう。これらのワインは “nowhereness “個性がないのです。どこまでも似ている。ナパ・ヴァレーの土地に大金をかける理由がわからない。1エーカー(約0.4ha)の土地に$50万もの値がつきます。16km先のワインと同じ味のワインを造るために、コンサルタントに大金を費やす。偉大さは際立った個性から始まるのです」。

 

 

引用元: Napa’s Big Decision: Style or Substance?
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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