寛大な2023ブルゴーニュ、不安定な市場に直面する

寛大な2023ブルゴーニュ、不安定な市場に直面する

2023年のブルゴーニュワインは、収量も豊富で親しみやすさも兼ね備えていますが、市場の状況は不安定な様子です。


2023年のブルゴーニュワインは、難解な季節的ヴィンテージレポートと、実際にグラスの中で感じられる印象を一致させるのがなかなか難しいかもしれません。とはいえ、2023ヴィンテージの生産量は非常に多くなったため、素晴らしいニュースだといえるでしょう。

 

収穫量は、同様に豊作だった2022年と比較して9%増加し、2018年から2022年の5年間の平均と比較して29%も多い結果となりました。

 

2023年のブルゴーニュは、一般的に暖かく乾燥した気候が続く中、夏には深刻な嵐がいくつか発生したことや、豊富な収穫量が特徴的でした。そのため、果汁の希釈や、青っぽさ、イチジクや干し葡萄のような風味が現れることを予想するかもしれません。しかし実際には、ピノ・ノワールには驚くほど深い色調が見られ、分析によれば、黒っぽさが目立つ2020年ヴィンテージよりもアントシアニン量がやや多いことが分かっています。また、全体的に果実味は活気にあふれ、フレッシュで、赤白ともに良好なテンションを持つ骨格を見せています。

 

ピノのテロワールは非常に明確に表現されており、一方でシャルドネはややばらつきがあります。特にシャブリでは、収穫期を含む季節の暖かさが、例年より豊満な構造と果実味をワインにもたらしました。それでも、Domaine Gilbert PicqのDidier Picqは、自身の2023年ヴィンテージが2022年よりも産地の個性をよく表していると感じています。コート・ドールの白ワインでは、未熟や過熟に近い特徴が一部に見られることもあります。

 

これらの非常に良好な結果は、天候、ノウハウ、迅速な対応によるものです。2月の降水量は通常より80%少なく、生産者たちは深刻な懸念を抱いていましたが、霜の被害はほとんどありませんでした。年間の降水量は平均より13%減少しましたが、降るべきタイミングで雨が降ったのは幸いでした。

 

頻発した夏の嵐は激しかったものの、コート・シャロネーズを除けば雹害はほとんどありませんでした。Domaine Paul & Marie JacquessonのMarie Jacquessonによれば、リュリー北部では20%の損失が出たとされ、同様にメルキュレイも被害を受けました。一方、コート・ドールでは、いくつかの生産者がこれを「自然なグリーンハーベスト」と例えています。

 

厳しい嵐による果皮の破損は、うどん粉病やベト病が点在する畑において、より深刻な問題を引き起こす可能性がありましたが、幸いにもそれは避けられました。Domaine Drouhin VaudonのFrédéric Drouhinは、天候は良い悪いを繰り返しましたが、最終的にはシャブリではほぼ平年並みに戻ったと語ります。気温は2022年を上回り、“観測史上最も暑い年”となりました。生育期はそれほどの酷暑ではありませんでしたが、夜間の気温は高めで、収穫期は耐え難いほど暑くなりました。ですが、最後の2回の熱波がなければ、収穫物は成熟に至らなかったでしょう。

 

厳しい環境にもかかわらず、ほとんどの生産者がオーガニック・ビオディナミ認証を維持しました。

 

また、収穫量が多かったため、選果台で果実を取り除く余裕もありました。Domaine Jean GrivotのMathilde Grivotは、傷んだり乾燥した粒を切り取るよりも、選果台で房ごと廃棄することを選んだと話し、Domaine de SuremainのLoïc de Suremainは、メルキュレイの村名ワインの房の80%を選果したと語っています。

 

興味深いことに、選果がほとんど不要だったとする生産者もいれば、すべての房に手を加える必要があったとする生産者もいました。同じ房の中に青い粒や破裂した粒が混在していることがあり、場合によっては完璧に見える房の反対側が焼けていることもありました。

 

多くの生産者が収穫量を管理するために2回のグリーンハーベストを実施しました。Domaine Rossignol-TrapetのNicolas Rossignolは、「7月にグリーンハーベストを行い、その後8月に“ブルーハーベスト”を行った」と話します。それでも、シャンボール・ミュジニーとモレ・サン・ドニの両アペラシオンの保護運営組織ODG(Organisme de Défense et Gestion)は、これらのグラン・クリュの収穫量の上限を引き上げるよう要望を受けています。Domaine des LambraysのJacques Devaugesは、自身が唯一そのようなリクエストを提出しなかった生産者だと述べています。

 

全房の使用を必須とするワイナリーの多くでは、茎が30%以上ものスペースを占有するため、その使用に変更を余儀なくされるケースもありました。一方で、茎の質に懸念を抱き、必要とされる茎の木化(リグニン化)が十分に進んでいないと感じる生産者もいました。Domaine de MontilleのBrian Sieveは、色調と濃縮度を高めるためにセニエ(ジュースを抜き取ること)を取り入れた少数派の一人です。この方法はタンク内のスペース確保にも役立つと指摘する生産者もいました。

 

クイック・スマート

収穫が始まると、悠長に構える余裕はありませんでした。Florence Heresztynは、「最後の瞬間まで、適切な選択をし続けなければならなかった」と振り返ります。一部の畑では酢酸菌が発生しており、Domaine de la Pousse d’Orでは、隣接する畑で兆候が見られたという知らせを受けて、コート・ド・ニュイにチームを急行させて収穫を行いました。潜在アルコール度数も待ってはくれず、1日で2度上昇するケースも見られました。最終的なアルコール度数は、幸いなことにほとんどが12.5%~14%の範囲内に収まりました。

 

全てのブドウが突然同時に熟しましたが、猛暑の中で一日中収穫をするのはほぼ不可能でした。ほとんどのワイナリーが午後2時までに収穫を終えており、このような激しい暑さが9月に記録されたことはこれまで一度もありませんでした。

 

現在では畑に冷蔵トラックを送ったり、ブドウをタンクに入れる前に一晩冷却するワイナリーもありますが、全ての生産者がそのような設備を持っているわけではありません。Denis Bacheletは、最初のタンクが満タンになった時点ですでに30℃に達していたものもあり、冷却に4時間を要したといいます。また、hottesと呼ばれる収穫用カゴ(長い筒状のリュック型容器)を用いているワイナリーでは、畑で収穫中のカゴの中で発酵が始まるケースも見られました。

 

通常より酸度が低いため(高収量により酸度が保たれている場合を除く)、マロラクティック発酵は一般的に早く進み、赤ワインでは、まれに果皮と一緒に行われることもありました(”sur marc”と呼ばれる手法)。一部の生産者はリンゴ酸を保持しようと試み、Louis Jadotのシャブリのセラーで働くFrédéric Barnierは、グラン・クリュのBlanchotでさえその努力を行いました。一方で、Domaine Christian MoreauのFabien Moreauは、彼らのChablis Vaillons Guy Moreauの発酵は2024年4月まで終わらなかったといい、ヴォルネイのClothilde Lafargeは、2つの赤ワインが2024年11月時点でもマロラクティック発酵の途中であったと振り返ります。

 

シャブリの生産者たちは、自然発生する二酸化炭素をワインに保持することでフレッシュさを高めることに非常に熱心でした。また、Domaine Bernard DefaixのDidier DefaixやDomaine A&P de VillaineのPierre de Benoistは、厚い果皮から生じる「魅力的な苦味」が、このヴィンテージのシャルドネに緊張感をもたらしていると指摘しました。補酸が認められることは滅多にありませんが、コート・ドールの赤ワインの中には、やや鋭い味わいのものも見られます。

 

多くの困難がありながらも、生産者たちは人々に好まれるワインを生み出しました。ほとんどの生産者が、2023年のワインは瓶詰め後も開いていて、閉じ気味な2022年のワインよりも早い段階で楽しめるヴィンテージになると感じています。その軽やかさと明るさから2017年を引き合いに出す生産者もいる一方で、2018年の果実味の豊かさ、寛大さとの類似性を指摘する生産者もいます。

 

シャブリにあるDomaine Jean-Paul et Benoît DroinのBenoît Droinは、2023年と2018年を比較し、「2018年や2015年のアルコール的な熱さは、2023年では収穫量の多さのおかげで感じられない」と話します。興味深いことに、一部の生産者は、自分たちの2023年のワインが2022年を上回ると感じているようです。

 

全体として、赤ワインは白ワインを凌駕しており、2023年ヴィンテージでは北部のコート・ド・ニュイの村々が際立っています。モレ・サン・ドニ、ジュヴレ・シャンベルタン、マルサネのワインは、心を奪われるような深みと骨格を示しています。

 

豊作にもかかわらず、赤ワインはブルゴーニュ全体のヴィンテージの27%に過ぎません。そのため、2023年の赤ワイン全体の46%を占めるBourgogne Rougeカテゴリーでさえも多くのワイン愛好家には手が届かない価格となるかもしれません。我々がインタビューした150以上の生産者のうち、約半数は価格を据え置くと答えました。3名は値上げを検討しており、残りはまだ考えていないと述べています。

 

しかし、販売はフランス国内でさえも著しく鈍化しています。最近販売が好調だったシャブリの生産者たちが最も懸念を示している、もしくは不安を率直に語る様子が見られました。不安定な世界市場、新たな米国関税の可能性、そして2024年の極めて少ない収量予測により、2023ヴィンテージは満足度の高い品質を備えながらも、究極の試練に直面するかもしれません。

 

引用元:Generous Burgundies Meet an Uncertain Market

この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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