Constantia(コンスタンチア)
南アフリカの歴史上、最も重要なワイン産地 かつてナポレオンが愛した伝説の甘口ワインは 現代の職人の手によって見事に息を吹き返した
南アフリカのウエスタン・ケープの州都ケープタウンは、アフリカ有数の世界都市であり風光明媚な観光名所として知られている。この街の南に位置するコンスタンチアには、その起源を1685年まで遡ることができる程の深い歴史がある。とりわけ18-19世紀の時代には、伝説の甘口ワインVin de Constance(ヴァン・ド・コンスタンス)で名を馳せたという記録が多く残っている。かの英雄ナポレオン・ボナパルトらを含む当時の王や皇帝たちからその味わいを大絶賛されただけでなく、ジェーン・オースティンやチャールズ・ディケンズといった文豪たちをも虜にし、彼らの文学にもその名が登場したほどである。
こうした輝かしいエピソードがある一方、1860年代に起きたフィロキセラとうどんこ病の流行でコンスタンチアのブドウ畑は壊滅状態まで追い込まれ、その後1980年代頃になるまでは、見向きもされなくなってしまったという悲しい過去もある。
今日では、生産者の数はそれほど多くはないものの皆クオリティにフォーカスしており、とりわけ注目すべきは高品質なソーヴィニヨン・ブランやボルドーブレンド、またミュスカからの甘口ワインである。
■テロワール
南大西洋に向かって伸びる細長いケープ半島の麓にあるケープタウンには、世界的な観光名所であるテーブルマウンテンが鎮座する。その南の延長線上にはコンスタンチアバーグと呼ばれる別の山があり、半島を縦断するように西の南大西洋と東の内陸を隔てている。
コンスタンチアのブドウ畑はちょうど山陰に隠れるようにして山の東側斜面から低地にかけて広がっている。最も標高の高い畑で400mほどの高さを持ち、南アフリカで最も急な斜面の一つにも数えられている。土壌は痩せた花崗岩が砂岩の層の上に広がっており、優れた排水性を持っているのが特徴である。
コンスタンチアのテロワールを作るもう一つの要素は、南に広がるフォールス湾までわずか10kmという近さである。冷たい海風の影響を受けることと山の影に位置すること、この二つがブドウ畑の平均気温を下げ、その結果ブドウはよりフレッシュな酸を保持できる。また繰り返し強く吹き付ける海風はブドウ木にストレスを与えるため、ブドウ木は栄養を求めてより深く根を張り、高品質なブドウが生まれる。
■味わいの特徴
白ブドウの主要品種はソーヴィニヨン・ブランにシャルドネ、そして忘れてはならないのがミュスカである。コンスタンチアを語る上で絶対に外せない生産者Klein Constantia(クレイン・コンスタンチア)は、過去の栄光を取り戻そうと1980年代初期にこの地にミュスカを再植樹し始めたパイオニアとして知られる。1986年に見事な復活を果たし、それ以降Vin de Constance(ヴァン・ド・コンスタンス)の名で素晴らしい甘口ワインを世に送り出している。ソーテルヌやトカイ、トロッケンベーレンアウスレーゼといった世界的な甘口ワインと大きく違うのは、王侯貴族たちが愛飲していたときと同じ味わいを追求するため、貴腐ブドウは使わないという点である。貴腐のついていない遅摘みのミュスカから造られるワインは、驚くほどピュアで濃厚な果実味と見事な酸と甘味のバランスが備わっている。国際的にも非常に高く評価され、南アフリカを代表するワインとして重要なアイコン的存在となっている。
黒ブドウではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったボルドー品種が主要であり、これらはより温かい斜面下部の畑で見られる。より長い日照時間の恩恵を受け見事に完熟したブドウは、リッチで濃厚な味わいを生む。
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