Ribera del Duero(リベラ・デル・ドゥエロ)
他エリアとは一線を画す酸の高さが スペインらしからぬ引き締まった味わいを生み出す
リベラ・デル・ドゥエロはスペイン北部カスティーリャ・イ・レオンにある重要なワイン産地である。
この地を世界に知らしめたのはテンプラニーリョであり、その代表として名が挙がるのがベガ・シシリア(Vega Sicilia)である。1864年に設立されたこのワイナリーは、現在なおリベラ・デル・ドゥエロを、そしてスペインを代表するワイナリーとして君臨している。もう一つ忘れてはならないのがティント・ペスケラ(Tinto Pesquera)で、これは同地区で最も著名なワインメーカーであるアレハンドロ・フェルナンデスによるワイン。ロバート・パーカーをして「スペインのペトリュス」と言わしめたエピソードはあまりにも有名である。世界的な評判を恣にした両ワイナリーの成功は、多くの地元の生産者たちの意識を変えさせることとなった。元来、多くの生産者はバルクワインを作り協同組合に売るようないわゆる量の生産に焦点を当てていたが、地元のスターの大成功を目の当たりにし、品質にこだわるようになった。
こうしてDO認定当時(1982年)は数えるほどしかなかったワイナリーが、今では300軒近くに増え、その中には泣く子も黙るピングス(Dominio de Pingus)やエミリオ・モロ(Emilio Moro)といったプレミアムワイナリーが名を連ねる。
テロワール
「ドゥエロ川の岸」という名を持つリベラ・デル・ドゥエロは、巨大な山々に囲まれた内陸の高台に位置する。
トロやルエダと似た気候を持つが、こちらの方がより極端な大陸性気候で、冬は極寒の-18℃まで下がるが、一転して夏は熱く乾燥し40℃まで上がる。標高も750-1000mと高いため、日較差も同様に激しくなり、例えばある年の9月には日中30℃、夜間4℃が記録された。これはブドウにとっては理想的で、太陽によって糖分をしっかりと蓄えつつも、冷気が酸をしっかり残し、またフェノールをじっくり完熟させる。また、年間降水量も比較的少なく400-600mm程度である。
標高の高さ、乾燥した空気、まばゆいほどの太陽と涼しい夜といったリベラ・デル・ドゥエロのテロワールは、しっかりとワインにその特徴を刻み込んでいる。色が濃く、力強い果実味がある一方、酸が生き生きとして旨味が乗っている。
土壌は北部に石灰岩が見られ、貴重な雨からの水分を保つのに役立っている。エリア全体としては砂質ロームや粘土などの土壌が一般的となっている。
味わいの特徴
リベラ・デル・ドゥエロといえばテンプラニーリョの赤ワインである。ワインは深みのある色調で、フルボディ寄りのスタイルにかっちりとした強固なタンニンと高めのアルコールを持つ。また、生産者たちは収穫を早めることで高い酸を保持する傾向があり、これがスペインらしからぬ味わいの引き締めを生んでいる。フレーバーにはブラックベリーやプラムなどの完熟した黒系果実にヴァニラやチョコレートなどのオークのニュアンスが混ざる。フレンチオークが一般的だが、一部の生産者はフレンチとアメリカンをブレンドしている。最上級のプレミアムワインでは50-100%の高い新樽率となることも珍しくない。こうしたワインは驚くほど長熟に耐える。一方で、現在は優しい抽出、発酵後マセラシオンの短縮、より低めの新樽比率といったトレンドも見られる。
DOの規定では、テンプラニーリョを最低75%使用しなければならず、残りはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、マルベックなどがブレンドされる。なお、5%までであればアルビーリョ(地場白ブドウ品種)とグルナッシュも認められている。熟成規定はリオハと同じで、クリアンサは最低 2年(内1年はオーク樽)、リゼルヴァは最低3年(内1年はオーク樽)、グラン・レゼルヴァは5年(内2年はオーク樽)がそれぞれ必要となる。生産量から見るとクリアンサが最も多く、グラン・レゼルヴァはかなり少ない。しかしこうした熟成カテゴリーを名乗っていないワインも多く見られる。
全体的にリベラ・デル・ドゥエロのワインは品質が高く、市場ではプレミアムなワインが目立っている。例えばベガ・シシリアのウニコは小売価格で6万円以上、ピングスに関しては10万円以上というスーパープレミアム価格で取引されている。