2023年カリフォルニアの収穫:全ての場所で、全てのブドウが、一斉に

2023年カリフォルニアの収穫:全ての場所で、全てのブドウが、一斉に

突発的な災害が起こらない限り、カリフォルニアの生産者はここ数十年で最高の収穫を迎えるでしょう。


コンサルティング・ワインメーカーのCary Gottは、ナパ・ヴァレーの4人の顧客のためにブドウの収穫を待っているよりも、ハワイのビーチで9月を過ごしたかったと回想します。
気温が低く、ブドウの生育が遅かったので、通常なら収穫が始まる時期なのにほとんどすべての黒ブドウが木に残っていたためです。

 

しかし10月中旬の現時点で、畑の収穫は総動員で進められており、タンクは全てブドウで埋め尽くされています。カリフォルニア州中のワインメーカーが大量のブドウをワイナリーに搬入していますが、理由の一つは多くのブドウがようやく収穫できるようになったことと、来る週末に予報されている雨を避けるためです。今週はビーチでの休暇は難しそうです。

 

「例年から3~4週間ほど遅れでほとんどの品種の収穫を開始しました。美しい果実が畑を埋め尽くしていますが、全てはこれからです」
そうGottは話します。

 

この流れに乗って無傷でゴールテープを切ることが出来れば、2023年はカリフォルニアにとって傑出したヴィンテージになるかもしれません、そしてゴールは目前です。

 

「本当に素晴らしいヴィンテージになりそうです。雨が降り始める前に全てのブドウを収穫出来れば、2023年は本当に満足のいくヴィンテージになると思います」
セント・ヘレナにあるTitus Vineyardsのワインメーカーを務めるStephen Cruzanはこのように語ります。

 

(当たり年)の特徴は、2022-23年のカリフォルニアの異常なほど雨の多い冬から始まりました。数年に渡る干ばつの後、州の貯水池を満たし、ロシアン・リヴァーの水量制限を解除し、休眠中のブドウ木に幸せな夢を与えるのに十分な雨が降ったのです。

 

「冬に降った雨のおかげでブドウ木はとても幸せそうでした。ブドウ木は新鮮な水をたっぷりと吸い、(干ばつによって)土壌に蓄えられた塩分は溶け出しました。冬は涼しかったのでブドウ木は休眠できました。例年なら1月の週末は23~27度になりますが、今年はずっと涼しかったんです」
モントレー郡でValley Farm Managementを営むJason Smithはこのように語ります。

 

涼しいのは春だけではありませんでした。気候学専門家のGreg Jonesによれば、2023年は世界史上最も暖かい年になりそうだといいます。しかし、気候変動は地域的なものであり、予測不可能です。北米のほとんどの地域では、夏の間記録的な暑さに見舞われ、たとえばテキサス州中部では78日連続で37度を超えるという記録を打ち立てましたが、カリフォルニアでは人々はほとんどエアコンを必要としませんでした。

 

「暑い日はありましたが大きな猛暑には見舞われず、本当に理想的な気候でした。我々は温和な夏を過ごし、37度を超える日は多くはありませんでした」
そう語るのは、ナパ・ヴァレーにあるRenteria Vineyard Managementのブドウ栽培責任者、Brittany Pedersonです。

 

これはブドウの成熟に例年より時間がかかった事を意味しますが、ワインの品質にとっては良い事です。暑さが続くと、風味の発達が十分に伴わないままに、糖度とアルコール度数が上がってしまうからです。何事も問題が起こらなければ、涼しく長い夏というのは、真に素晴らしいワインを得るための最良の方法なのです。

 

パソ・ロブレスにあるAlta Colina wineryのオーナー、Bob Tillmanはこう話します。
「2023年の生育期は2011年以来最も寒くなりました。実際、生育日数における暑さの蓄積は、7月中旬までは2011年より遅かったのですが、以降通常の気温が戻ってきて最終的にその差が縮まったのです。その後、ブドウの成熟は例年通り進みましたが、スタートが遅かったため、最近のヴィンテージと比較すると全てが4~5週間遅れています」
そしてWine-Searcherから2011年の補足をするとすれば、2011年の北カリフォルニアのワインはリリース時に不当なほどに酷評されましたが、温暖なパソでは偉大なヴィンテージと見なされていたことは注目に値します。また2011年のナパ・ワインは2023年現在、素晴らしい飲み頃を見せています。

 

10月中旬の現時点で、州の大部分は猛暑には見舞われていませんが、全てのブドウが一度に収穫されています。
アマド―ル郡のStory Wineryの醸造責任者、Rob Campbellは昨日シラーを収穫したばかりです。
「我々は昨日シラーを収穫したばかりで明日はバルベーラとプティ・シラーを収穫します。
通常これらの品種は3~4週間の間隔があるのですが、今年は晩熟の品種が早熟の品種と一緒にセラーに入ってきます。カーネロスのシャルドネは先日収穫したばかりなのですが、ジンファンデルはもう終わっています」

 

豊作の地

昨年、Campbellは自身のワイナリーであるMeyye Winesも立ち上げました。ブドウを置ける場所が2つ出来たことで、Campbellは突然人気者となりました。

 

「毎日誰かしらから“売りたいブドウがある”とメールが届くんです。今、ブドウは明らかに供給過剰です」

 

2021~2022年と収量が少ない年が2年続き、カリフォルニアのワインメーカーの多くは、収穫前までは“2023年は平均を僅かに上回る程度だろう”と予測していました。しかし、ブドウ木にとって喜びの多かった2023年は、実際に収穫した果実をタンクに入れた所、予想より多い結果となった生産者もいるようです。

 

「収穫を進めていますが、全ての房が予想より重くなっています。先日カーネロスの畑でピノ・ノワールを収穫しました。当初の見込みは12トンでしたが、それを15トンに修正、最終的には20トンのブドウが取れました」
冒頭のコンサルティング・ワインメーカーのGottはこう話します。結果、彼はタンクスペースの確保に奔走することとなりました。

 

Barra of Mendocinoの醸造ディレクターを務めるRandy Meyerは、今年の例外的な収穫をこのように語ります。
「レイク郡、メンドシーノ郡、ソノマ郡からのブドウが届き、今日だけで400トンのブドウをワイナリーに搬入しています。今日は少なくとも20台のトラックが入ってきていますが、これだけの動きは数日前の天候に起因します。先日少し霧雨が振りましたが、その前に少し暑さが続いていました。私たちは皆、全てが最適な熟度に達するのをずっと待っており、ついにそれが実現したのです。収穫の適切な時間枠がこれ以降は狭められていく中で、複数の品種が収穫を待っています。例年通りであればソノマのピノ・ノワールとカベルネを同時に収穫すべきではありませんが、今年はそれが起きているのです」

 

同時に、州内の一部のブドウは腐敗の問題を抱えています。品種にもよりますが、グルナッシュやプティ・シラーのようなタイトな房を持つ品種は被害を受けやすく、霧の多い地域でも被害が見られます。影響を受けた房は発酵前に取り除かれるので消費者にとっては問題ありませんが、生産者にとっては収量に影響します。

 

「私はロシアン・リヴァー・ヴァレーの端に住んでいますが、霧が多く寒い日が続きました。ですが、一部のシャルドネとソーヴィニヨン・ブランに少しカビが生えた以外は、今年の品質は今のところ素晴らしいです。昨年は猛暑で苦労しましたが、今年は暑さはありません。このままゴールラインに辿り着くまで忍耐強くあることが重要です。もしまた雨が降れば、ジンファンデルとプティ・シラーは大打撃を受けるでしょう。その前にプティ・シラーを収穫し、被害を受けた房を取り除く予定です。プティ・シラーは、ジンファンデルほどは被害は酷くないですが、雨は嫌いなんです」
Barra of MendocinoのMayerはこう話します。

 

さて、まだ触れていなかったカベルネ・ソーヴィニヨンについてです。
カリフォルニア州食品農業局によれば、カベルネはカリフォルニアで収穫される全ブドウの6分の1しか占めていません。ですが、カリフォルニアの今年のヴィンテージ、そして全てのヴィンテージの評価を決める品種です。また、カベルネは最も遅く熟す品種のひとつで、まだ多くが木にぶら下がった状態で、今後数週間で母なる自然が投げかけるかもしれない突然の異常気象に対して脆弱です。

 

「畑では素晴らしい化学反応が確認出来ました。シャルドネは24 Brix、pH3.19※で収穫されました(Wine-Searcher注:この数値は素晴らしい熟度とフレッシュさを備えたブドウを意味する理想的な結果)。これは白ワインにとっては素晴らしいもので、赤の場合でも同様です。もう少し畑において、より成熟させる事が出来そうです。ヴィンテージの観点からは現時点で上手くいっています」
ナパ・ヴァレー、Spring MountainにあるSmith-Madrone Vineyards & Wineryの共同設立者Stu Smithは、このように話すと、さらに続けます。

 

「熱波がなかったので、全体的に今年はかなり楽な収穫となっています。ですが、涼しい日が続いているので、どの生産者も天気にとても神経質になっています。次に本格的な雨が降るのはいつになるか分かりません。私たちは過保護な母親のように、毎日心配し、思い悩んでいますが、けっきょく杞憂に終わるという事もあります。現時点では幸運にも杞憂で済んでいます」

 

カベルネの結果が分かるのはもう少し先ですが、生産者は喜んでいます。

 

引用元: California Harvest: Everything Everywhere All at Once
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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