オレゴン、ワインコレクターの新たな憧れ

オレゴン、ワインコレクターの新たな憧れ

過去10年間で、オレゴンはニッチな産地から、ワイン愛好家やコレクターの間で人気の産地になりました。


何十年もの間、ワイン愛好家たちは以下のように同意してきました。オレゴンは世界最高のピノ・ノワールを造っています。

 

オレゴンのワイナリーは、特に同価格帯のワインを生産する他のアメリカのワイン産地と比較した場合、長い間、批評家による賞賛の数々を独占してきました。

 

これは偏った宣伝広告のようにも見えます(というのも、オレゴン州を拠点とするワイン・ライターたちが誇らしげに宣伝しているのは事実だから)。しかし、ここ数年、オレゴンワインは権威あるワイン賞のリストに6つほどランクインしていて、オレゴン州は世界のワイン生産量の1%にも満たないことを考えれば、これは偉業と言えるでしょう。オレゴン州は、ワイン・スペクテーター誌が大々的に発表した2023年のトップ100ワインリストに7つのワインをランクインさせました。

 

世界のワイン価格が徐々に上昇し、オレゴン州のワイン産業(特にウィラメット・ヴァレー)への投資が急増する一方で、本格的なコレクターはブルゴーニュ、ナパ、トスカーナのワインに”課金”し続けました。

 

しかし、ここ数年、非常に静かに、コレクターたちはオレゴンに目を向けているのです。

 

成長の10年

このオレゴンワインへの突然の渇望は、数十年にわたる静かな上昇と、それに続く急速な加速の後に生まれました。オレゴンワインの最初のパイオニアたちが1960年代にウィラメット・ヴァレーに到着してから、1980年代初頭まで、この地域の名声と経済力の成長はゆっくりではありながらも、着実なものでした。

 

「 Oregon Wine History Archiveを立ち上げた2011年頃、オレゴンのワイン業界はブームに火がついたようです」と、同団体のアーカイブ&資料共有担当ディレクターRich Schmidtは語ります。「ここオレゴン州内では、すでにそうなっていたようですが、国内外におけるオレゴンワインに対する認識は、その頃から変わり始めました。オレゴンワインが資本主義的な産業になったのはその頃です」。

 

実際、2012年までに545のワイナリーと905のブドウ畑が存在し、ワイン産業は約$30億の経済活動を生み出し、13,500人のワイン関連雇用をもたらしました。生産量は10,295haのブドウ栽培地から50,176tに達しました。約$2億7,600万相当のワインが販売されたのです。

 

しかし、2022年(データが入手可能な直近の年)には、この数字は急激に増え始めました。2022年の時点で、ワイナリーは939軒、ブドウ畑は1467あり、ワイン産業は約$72億の経済活動を生み出し、50,786人の雇用を創出しました。生産量については、18,003haのブドウ栽培地から137,065tに達しました。約$3億3,000万相当のワインが販売されました。

 

また、ワインに対しては様々な価値観がありますが、オレゴン州は、カジュアルなワイン愛飲家からも、手に取るようにわかる関心を集め続けています。2022年1月までの1年間で、プレミアム($50以上のワイン)の売上は45.8%増加し、オレゴンのテーブルワインの平均価格は約$17.10で、カリフォルニアの平均$10.46、ワシントンの平均$8.15と比較検証できます。

 

高まる評価と複雑な心境

誰もがこの変化を喜んでいるわけではありません。

 

「オレゴンでは今間違いなく、ペテン師症候群が起こっています」とSchmidt は言います。「3桁の値段のワインに疑問を抱き、試飲ではお金を取らず、高級ワインは(市場ではなく)自宅の庭先で売られるのを望む人たちがいます。しかし、少量生産で価値の高いワインの需要も非常に多いのです」。

 

ナパやブルゴーニュのようなコレクターズアイテムであるとは、オレゴンでは誰も言いません。Schmidtが言うように、「オレゴンワインの転売で老後の資金を賄えることを証明した人はまだ誰もいない」のだから。

 

オレゴンの外にいる人達は(こうした自己不信感的な)モヤモヤを持ってはいません。

 

コンサルティング、ワインセラー管理、ワイン鑑定を手がけるEnotriasの創業者Melissa Smithは、彼女が仕事をする億万長者たちのスプレッドシートのウィッシュ・リストや、すでにセラーに保管されているワインに、オレゴンワインが登場することが増えてきたと言います。

 

「ここ数年で、コレクターの間でオレゴンワインに対する認識が変わりました」と彼女は言うのです。

 

バックヴィンテージと高級ワインの小売業者、Benchmark Wine Groupの創設者であるDave Parkerは、本格的なコレクター向けのウェブサイトでオレゴンワインの売上が「好調」であると述べ、様々な要因によって、通常はカリフォルニアやヨーロッパの高級銘柄だけをターゲットにしていたコレクターの間で、オレゴンワインがマストアイテムになりつつあると考えています。

 

「オレゴンの気候とワイン造りの方法は、カリフォルニアのほとんどの地域で造られる同じ品種よりも、常にブルゴーニュのそれに近かった」とParker は言います。「過去10年ほどの間に、トップ・ブルゴーニュの人気と価格が上昇するにつれて、オレゴンのワインはより評価されるようになった。全般的に温暖な気候は、オレゴンにとって特に好都合だった。カリフォルニアの一部の地域が温暖になりすぎて、熟した果実味と程よい酸の両方を持つバランスの取れたピノ・ノワールやシャルドネを容易に、また定期的に造ることができなくなったとしても、オレゴンは暑過ぎることなく、これらの品種の成熟はより確実なものとなりました」。

 

傑出したブランド

もちろん、”最もコレクターの多い”ワインを語る際に何度も出てくるような傑出した生産者もいます。例えば、 00 Wines、Antica Terra、Bergström Wines、Beaux Freres、Domaine Drouhin、Domaine Sereneです。

 

「収集可能な銘柄は何十とあります」とParkerは言い、必然的に他よりも注目される銘柄があることを認めています。「オレゴンの品種ではピノ・ノワールが王者だが、シャルドネへの関心も高まっている。00 Winesのような生産者は、トップ・ブルゴーニュの白ワインと同じような方法で、同様の品質、熟成能力のあるシャルドネを生産しています」。

 

00 Winesの共同設立者でオーナーのChris Hermannは、その野心に臆することはありません。

 

「私たちはコレクターうけするワインを目指したのです」とHermann は言います。「私は40年間、ワイナリーのために弁護士として働いていたので、何がうまくいき、何がうまくいかないかを観察できるような経験がたくさんありました。妻のKathrynと私は、単に価格の高い素晴らしいワインを造りたかったわけではありません」。

 

彼らは “目を見張るようなもの”を造りたかったのです。コレクターに 「これは地球上で最高のワインだ」と言わせるようなもの」です。

 

彼は、ブルゴーニュ・グラン・クリュ(DRC、Dujac)で有名なPierre Millemannをコンサルタントとして雇いました(Millemannの自社ワインは1本$1000前後から)。彼はMillemannに、ウィラメット・ヴァレーのテロワールを表現する味わいでありながら、ブルゴーニュの魂を持ったシャルドネを造るよう命じました。

 

「私は深いテクスチャー、緊張感、酸、少し還元的な質感を求めていた」と、Hermannは指摘します。「誰もそれをやっていなかった。2015年にOregon program を始めました。そして2016年と2017年に、グラン・クリュの畑からワインを造ることを目標に、Burgundy program とChampagne programを始めました」。

 

2017年、彼はオレゴンの2015年を500ケースリリースしました。Hermannの投資と注意深く練られたアイデアが実を結ぶのを実感し始めたのは2019年になってからだと言います。

 

「その時点で1500ケースありましたが、Domaine de la Romanée-Conti などを販売するごく限られたディストリビューターと、主にコレクターだけに販売する会社にしか売っていませんでした」とHermannは言います。「本格的な小売店はありませんでした。すべては口コミです。あるコレクターが別のコレクターにワインを紹介していくのです。今ではオレゴンで5000ケースの割り当てがあり、コレクターが自ら私たちを探してくれるようになりました」。

 

疑問は残る

・ワインの収集に関しては、まだ日が浅いとParkerは指摘します。

 

「トップクラスのブルゴーニュは何十年も熟成させることができるが、オレゴンワインにはそのような長い熟成期間を約束するだけの歴史がない」とParkerは述べます。「私は1985年の偉大なヴィンテージのワインをいくつか飲んだことがあるが(Ponzi Pinot Reserveが思い浮かぶ)、1998年以前は良いヴィンテージが少なかったので、長期熟成したワインを知る機会が少なかった」。

 

マンハッタンのFlatiron Wines and Spiritsで販売と教育に携わるかたわら、個人でワインの鑑定を行い、コレクターのコンサルタントも務めるAnnie Edgertonは、コレクターはまだオレゴンワインを投資用に備蓄しているわけではないと言います。その代わりに、彼らは好きなオレゴンワインを買い込み、今飲んでいるのです。

 

彼女はまた、ブルゴーニュには「オレゴンにはないものがいくつかある」と指摘します。

 

「ブルゴーニュには長い歴史があり、非常に小規模で高度に規制されたアペラシオンがあり、ブドウ畑が区画され、ヴィンテージのばらつきが大きい」とEdgerton は指摘します。「その全てが、オレゴンにはないロマンと高級感を生み出している」。

 

しかし、

 

時代は変わりつつあり、彼女はコレクターブームの可能性を感じています。

 

「今、若い投資家がコレクションを増やしていますが、彼らは必ずしも前の世代のトレンドに従っているわけではありません」とEdgerton は指摘します。「彼らはEyrie、Domaine Serene、 Bergström、Antica Terraなどのトップ・ワインを手にしています。また、経験の浅いコレクターでも、これらの生産者のエントリーボトルを試す事ができます」。

 

エントリーレベルのシャルドネが$75、最も高価なものでも$225という00 Winesの価格は良いが、多くのブルゴーニュワインが求める$1000以上の価格にはまだまだ及ばないというのがHermannの意見です。

 

「しかし、2020年にRare Wine社の創設者であるMannie Berkから電話があった時、それは私たちのブランドを大きく変える瞬間でした」とHermann は言います。「彼はトップ・コレクターにしか販売せず、世界最高のワインをテイスティングしている。彼の顧客のコレクターが私たちのワインを彼に送り、これを1パレット買いたいと言ってきたのです。私たちが彼のドアをノックしたのではなく、彼が私たちのドアをノックしたのです」。

 

さらに、ウィラメット・ヴァレーに投資している傑出した、非常に多くのコレクターをもつ生産者たち、Drouhin, Bollinger, the Jackson Family等の様子を一見すれば、ワイン収集の未来に関する本はすでに書かれているように思えます。

 

「オレゴンに投資しているブルゴーニュのトップ生産者の数は、この地域の将来を示している」とParkerは言います。「彼らは、ワインコレクターや投資家が注目しているこの地域に、資金、専門知識、知名度をもたらしています」。

 

投資の世界に確実な賭けはない。チューリップ、エンロン、クリプトを見よ。オレゴンはあなたの老後の資金源にはならないかもしれないが、少なくとも老後をより美味しくしてくれるでしょう。

 

 

引用元: Oregon: The Wine Collector’s New Darling
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