Ch. Latour(シャトー・ラトゥール)

5大シャトーで最も力強いと形容されるラトゥールは、強靭なストラクチャーと熟成ポテンシャルを持つ左岸カベルネのベンチマーク的な存在である。


歴史

ラトゥールの起源は14世紀にまで遡ることができるが、ワイナリーとして発展するのは17世紀後半からのセギュール家の時代である。この家系は18世紀の大半においてラトゥールとラフィットを所有し、さらに一時期ムートンとカロン・セギュールまでも手中に収めていた。その後もセギュール家の所有が続くが、子孫の人数増加に伴い所有権もその分だけ増えていったため、これを取りまとめる会社が設立された。セギュール家直系の子孫らによるこの会社は1962年までラトゥールを所有していた。しかしその後、ラトゥールの所有権の多くが売却され、イギリスのファイナンシャル・グループであるピアソン・グループが筆頭株主となった。その後もシェアを巡って売買が行われ、最終的に1993年フランスの億万長者であるフランソワ・ピノーのもとに落ち着いた。彼の会社(Grupe Artemis)の傘下にはラトゥールをはじめブルゴーニュのクロ・ド・タールとドメーヌ・デュージェニー、コンドリューのシャトー・グリエ、ナパ・バレーのアイズリー・ヴィンヤードといった著名ワイナリーが名を連ねている。

2012年、ラトゥールは伝統を重んじるボルドーのワインビジネスに一石を投じて業界を騒がせた。プリムールからの脱退を宣言し、シャトーが飲み頃と判断したタイミングでワインをリリースするという販売方針の大転換を行ったのである。1998年から長年ディレクターを務めるフレデリック・エンジェレールはその背景を、ワインの熟成が不十分であるにもかかわらず販売・消費されているという愛好家・業界関係者からの嘆きの声、そして未熟なワインを購入させるシステムが消費者に押し付けられていることへの違和感にあるとデカンター誌に語っている。飲み頃まで待ってからリリースするため他のシャトーとは現行ヴィンテージで大きな差があり、例えば現時点(2025年)ではラトゥールは2016年、セカンド(レ・フォール・ド・ラトゥール)は2019年、そしてサード(ポイヤック・ド・シャトー・ラトゥール)は2020年となっている。

しかしこのドラスティックな変化は実はラトゥールにとって目新しいものではない。というのも、ラトゥールの歴史を紐解くとセカンドのファースト・リリース時にも同様の手法が取られている。1966年のファースト・ヴィンテージのリリースは収穫から7年もたった後であった。このことからラトゥールは実際にワインが飲まれる時のことを考えており、他シャトーよりも「飲み頃」に対する一貫した強いこだわりを持っていることが伺える。

 

ポイヤックの最南端、サン・ジュリアンとの境界付近に畑を所有する。ブドウの植樹比率はカベルネ・ソーヴィニヨンが76%、メルローが22%、残りはカベルネ・フランとプティ・ヴェルドとなっている。92haの畑の内、シャトーを取り囲む47haがL’Enclosと呼ばれるラトゥールの心臓部となる。メドックを見渡すとジロンド川沿いに砂利質の畑を持つシャトーは数多く見られるが、なぜラトゥールのL’Enclosは特別なのだろうか。その裏には3つの理由がある。まず、ここの地形は海抜16mほどの丘陵となっており、上部エリアには他よりもサイズの大きい砂利が豊富にみられる。砂利に丘陵が作る傾斜の効果が相まって雨水に対して素晴らしい排水性を発揮する。次に、この砂利層に混ざるユニークな粘土の存在がある。ペトリュスでもおなじみのブルー・クレイと呼ばれるもので、膨張性が非常に強い特徴を持つ。このため雨が多く降っても膨張によって土壌下部に水が染み込んでいかず、根が過剰に水分を摂取することがないためブドウ粒の肥大化が避けられる。最後にジロンド川への近さが挙げられる。最も近い地点で川までわずか300mであるため、L’Enclosでは川の水による気温調節効果をうまく利用できる。例えば過去の冷涼年(1991年)や酷暑年(2003年)では極端な気温が緩和されており、また霜害が深刻だった近年(2017年、2021年)でも被害はごく僅かに抑えられた。こうした複数要素の組み合わせがこの畑を特別な存在にしているのである。

なお、ファーストワインは常にL’Enclosのブドウ(平均樹齢60年)が使用されるが、L’Enclosのブドウが全てファーストに行くというわけではない。また、セカンドは以前のような「ファーストの格下げ感」はなくなってきており、現在はセカンド専用の区画(内陸のPetit BatailleyやPinada)が設けられている。

 

栽培

フランソワ・ピノーの買収によってモダンな歴史がスタートしたラトゥールでは潤沢な資本をもとに様々な改革が行われてきたが、なかでも大きな変化となったのは畑のオーガニック化である。ベト病に弱い海洋性気候のボルドーにおいて広大な畑を持つ一級シャトーにとって有機栽培は前途多難であり、一大決心であったことは想像に難くない。こうした中で2007年にオーガニック栽培を試験的にスタートし、その約10年後の2018年には認証を取得し、現在L’Enclosではビオディナミが導入されているというから驚きである。また馬による耕作も取り入れており、トラクターを使わないことで土壌への圧迫ダメージを最小限に抑えている。

 

醸造

セラーに到着したブドウは厳しい選果の後、除梗して軽く破砕される。68あるステンレスの発酵槽は11~166hlと幅広いサイズが取り揃えられており、区画や品種、樹齢によって細かく管理される。現在ラトゥールでは自社畑から採取した酵母株のみを使用して発酵を行っている。約3週間に及ぶマセラシオンを経てプレスし、マロラクティック発酵へと進む。発酵槽毎に分析と試飲が行われファースト、セカンド、サードの選別が行われ、弾かれた残りのロットは全てバルクで販売する。ブレンド後は樽に移して約18ヶ月の熟成を行う。最初の6ヶ月はガラス栓をして初年度用のセラーで熟成が行われ、続く12ヶ月はわずかに湿度の高い2年目用のセラーで熟成させる。ここではゴム栓が使用されるが、これは木材が膨張しても気密性を保てるからである。熟成中は3ヶ月毎にラッキングを行う。

なお、発酵ルーム、初年度セラー、2年目セラーは全て上下に配置されているため、各フロアの移動でワインに負担のかかるポンプ作業が不要となる。このグラヴィティ・フローシステムによって醸造・熟成中のワインへのダメージは最小限に抑えられている。

 

味わい

ラトゥールはしばしば5大シャトーで最も力強く、威厳に満ちたスタイルだと言われ、故マイケル・ブロードベントMWはかつてラトゥールを「口いっぱいに頬張るワイン、とても大きくて噛み応えがある」と表現した。ムートンのような陽的な要素(派手さ・リッチさ)はなく、どちらかというとダークで陰的な力強さに溢れるラトゥールは、堅牢なタンニンが作るいかり肩的なストラクチャーを持っているが、実際に5大シャトーの中で最もカベルネのブレンド比率が高く、直近5年(20-24年)の平均は94%となっていることからもその芯の強さが伺える。若いLatourは無骨(あるいは粗野)とも言えるほどで、飲み手に心を開くことはほとんどないが、だからこそ飲み手としてはプリムールを撤退し、セラーで寝かせてから販売するというシャトーのポリシーに心から賛同できる。

ラトゥールは同村ポイヤックの1級シャトーよりもむしろ隣接するスーパーセカンドのレオヴィル・ラス・カーズとの方がテロワール的な類似点を多く持つが、ラス・カーズよりも粘土の多いラトゥールでは、ボディがより豊かで中盤の広がりが大きく感じられる。まさに「口いっぱいに頬張る」という表現がピッタリと当てはまる。液体の濃度が非常に高く、凝縮した果実味とエキス感が強いタンニンとバランスを取ることで不思議と重苦しさを感じさせないのもラトゥールの魅力の一つである。

 

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