Grattamacco(グラッタマッコ)

サッシカイアに次ぐ歴史を持つグラッタマッコは、ボルゲリに土着品種と有機栽培、そして株仕立てを導入した先駆者である。

 

歴史

グラッタマッコの創設者ピエルマリオ・メレッティ・カヴァッラーリは、伝説的なワインジャーナリストのルイジ・ヴェロネッリに触発され、ボルゲリでのワイン造りを決意した。1977年に購入した畑にはサンジョヴェーゼとトレッビアーノが植えられていたが、サッシカイアに影響を受けたピエルマリオはカベルネ・ソーヴィニヨンの植樹を始めた。その後、1986年にはトレッビアーノを引き抜き、地元の古木から選抜したヴェルメンティーノに植え替えた。(これが現ボルゲリにおける最古のヴェルメンティーノとなる。)

1980年代初期のグラッタマッコはサンジョヴェーゼが主体だったが、徐々にカベルネの比率が上がり、1990年代に入るとブレンドの半分を占めるようになった。また、同じ頃にメルローの植樹もスタートし、1995年からブレンドされるようになると、サンジョヴェーゼの割合は大幅に減少していった。しかし、どんなに国際品種の存在感が強くなろうとも(カベルネ65%、メルロー20%)、サンジョヴェーゼの存在が消えることはなかった。この15%の土着品種へのこだわりこそが、グラッタマッコのアイデンティティを形成している。

2002年、創業者ピエルマリオは他の事業に専念するためコレマッサーリ・グループのクラウディオ・ティパにワイナリーを売却した。翌2003年には現醸造長であるルカ・マローネが参画。畑の改革に着手した彼は、収穫回数の増加と選別の厳格化によってファーストワイン(ボルゲリ・スペリオーレ)の品質を向上させた。「私が来る前は、ファーストの生産量がセカンドの倍ありました。今では逆転しています」とルカは言う。

2004年には細長い低地の畑(2ha)を購入し、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランを株仕立て(アルベレッロ)で植樹した。2003年の猛暑後、乾燥・高温に強い株仕立ては垣根仕立ての代替として合理的な選択肢だったからだ。しかし、株仕立てはボルゲリの伝統ではなく、ましてや国際品種に採用するというのは実に異端であった。だが、この風変わりな行動が生んだ「ラルベレッロ」の成功は、ボルゲリDOCに影響を与え、最終的に2011年の規定改正で株仕立てを伝統方式として認めさせたのである。なお、このラルベレッロはデビュー当初からボルゲリ・スペリオーレとして扱われてきたが、ファーストワインとの差別化を図るために2021年からトスカーナIGTとしてリリースされるようになった。

 

畑

約30haの畑は、サッシカイアやオルネライアのあるボルゲリの街から南部のカスターニェート・カルドゥッチに向かう途中に位置する。ここはボルゲリで標高が高い(100-200m)エリアとして知られており、中でも標高200mにある森に囲まれたカサヴェッキアの畑(10ha)は、ファーストワインの心臓部といえる。土壌の種類は多岐にわたるが、主に砂質石英と白粘土にフライシュ(泥灰岩+砂岩)が混ざっている。高い標高がつくる冷涼な環境がブドウにフレッシュさと清涼感を与えるため、グラッタマッコのワイン(特にファースト)は、沿岸部にありがちな過剰なアルコール感を感じさせない。なお、海岸に向かう道路沿いにある低地の畑は主にセカンド用となっており、ファーストにブレンドされないカベルネ・フランやプティ・ヴェルドを含む全黒品種が使用される。

 

栽培

グラッタマッコは1997年という早い時期に他者に先駆けて有機栽培へ移行した。標高の高い畑は冷涼な風の恩恵を受けるため、沿岸部よりも湿害を受けにくいという利点を大きく活かしたのである。ところが、ピエルマリオは認証取得後すぐにはラベル表示をしなかった。彼によると「有機認証を掲げながら品質が劣るワインが多かった」からである。なお、現在は裏ラベルに記載が見られる。

 

醸造

セラーでは主に円錐台形の開放型木製発酵槽を使用して天然酵母による発酵を行う。醸造長のルカは700Lという比較的小さいサイズを好むが、その理由は発酵熱が逃げやすく、冷却装置を使わずに温度を安定させることができるからである。これによって、理想的な低温(18-22℃)でゆっくりと発酵を進めることができる。マセラシオンは手作業によるピジャージュを行う。「10年前は平均3~4週間だったが、現在はピエモンテジーナ(Piemontesina)を除けば平均2~3週間だ」とルカは語る。

ピエモンテジーナとは文字通りピエモンテで使用されるマセラシオンのテクニックのひとつである。発酵が終了すると通常はワインを排水して別容器に移すが、この手法では逆にワインを補充して発酵槽を満タンにし、果皮を沈めたまま浸漬期間を数カ月延長させる。満タンの容器内では酸素との接触が遮断されており、この状態で長く置くことでタンニンの重合が進み、質感が滑らかになる。さらに、一度果皮からワイン中に溶け出したタンニンのうち、粗くて攻撃的なものが再び果皮に吸着・保持されるという現象が起きる。この再吸収によって「トゲのある渋み」が物理的に取り除かれ、味わいが整う。2004年に初めて導入されたこの手法は、温暖年で長期マセレーションが可能だと確信できた場合にカベルネ・ソーヴィニヨンに用いられる。

熟成はバリックで18ヶ月行い、樽はタランソー社のみを使用する。「様々な実験をしたかったし、許可も得ていたが、タランソーが常に最高だった」とルカは言う。 新樽の使用率は最大1/3に抑えている。1990年代はもう少し比率が高かったが(30-50%)、2000年頃から年に応じて徐々に下げるようになった。ちなみに、グラッタマッコではワインが樽に入るタイミングが他よりも遅いという特徴もある。一般的に発酵後のワインはすぐ樽に移すケースが多いが、ここでは収穫の翌2月頃に樽に移す。理由は2つあり、1つ目は非常に合理的で、収穫が終わるのを待ってから必要な量と適切なオークの種類を見極めて注文することでミスマッチをなくせるから。もう一つは、冬の間はできるだけオークの影響なしでワインの純度を保ち、自然に澄み切らせたいという感情的な理由である。

 

味わい

グラッタマッコのワインは驚くほどに優雅で軽やかである。「リッチで華やか」「やや強めの樽感」といった一般的なボルゲリの味とは一線を画している。この理由の一つには、サッシカイアと同じぐらい畑の平均標高が高いことが挙げられるだろう。とりわけ標高が高く森林に囲まれたカサヴェッキアの畑が持つ冷涼な気候は、ブドウに鮮烈なフレッシュさをもたらしている。このフレッシュさは単純に酸が高いというだけでなく、ピリッとした塩辛さも含んでいる。「海に近く、この標高でサンジョヴェーゼを栽培すると、野性味あふれる風味が生まれ、塩分が非常に豊かになる。」とルカは言う。

そしてやはりグラッタマッコといえば、15%のサンジョヴェーゼである。この品種がブレンドされることで、ボルドー品種だけでは表現できない野性味、あるいはセイボリーな地中海ハーブやバルサミコのようなニュアンスが備わる。この側面が加わることで、完熟果実+オークという甘さ押しの味わいではなく、旨味を伴う奥深く複雑なスタイルになる。また、フィニッシュで感じられるメタリックな鉄っぽいミネラルもグラッタマッコを特徴づける味わいの1つといえるだろう。

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