Sassicaia / Tenuta San Guido(サッシカイア / テヌータ・サン・グイド)
スーパータスカンの火付け役であるテヌータ・サン・グイドは、イタリア初のパーカーポイント100点を叩き出したモンスターワイン・サッシカイアの生みの親である。
目次
歴史
もともとピエモンテのブドウ栽培者であったマリオ・インチーザ・デッラ・ロッケッタは、1943年にアンティノリ家の一員である妻が相続したボルゲリの領地に移住した。大のボルドー好きであったマリオは、ボルゲリでも同じように高品質なワインが造れると信じていた。なぜなら、この地は海洋性気候で砂利質土壌を持っていたからである。そこでマリオは知人からカベルネ・ソーヴィニヨンの挿し木を入手し、1944年に海の影響から守られた裏山に植樹した。当時この品種によるワイン造りは、トスカーナでは異例であった。この地では伝統的にサンジョヴェーゼによるワインが主流だったからだ。このため最初のワインは地元市場や批評家の評価を得られず、マリオは自家消費用に留めることを決めた。
しかし1960年代になると、マリオの息子ニコロと甥のピエロ・アンティノリに説得されて、ワインの販売に再び挑戦することになった。アンティノリの醸造家であったジャコモ・タキスによる支援を受けてファーストヴィンテージ(1968年)が1971年にリリースされた。
サッシカイアが世界的な評判を確立した背景には2つの転機があった。1つは、1978年にデカンター誌が主催したボルドーブレンドのブラインドテイスティングである。全11カ国から集まった著名な33種のワインを破って1972年のサッシカイアが優勝したのである。もう1つは、ロバート・パーカーが1985年のサッシカイアにイタリア史上初となる100点を与えたことである。パーカーはこの際「間違いなく私がこれまで味わった中で、産地を問わず最高のワインの一つだ」というコメントを残した。
サッシカイアの偉業はこうしたコンペやスコアだけにとどまらない。サッシカイアは、それまでのイタリアの常識を根本的に変えてしまったのである。サンジョヴェーゼが支配するトスカーナにおいて、非伝統品種によるボルドースタイルのワインが世界を驚かせたという「非常識」な事実は、「スーパー・タスカン」という名の新しい潮流を生みだした。こうして1970年代初頭にはアンティノリのソライアとティニャネッロが、1980年代にはオルネライアとマッセートが誕生した。
サッシカイアの偉業はまだ終わらない。1994年にはボルゲリDOCのサブゾーンとして「ボルゲリ・サッシカイア」が認定されたのである。しばらくはサブゾーンという扱いであったが、2014年1月に改めて独立したDOCとして認定された。かつてIGTに分類されていたワインにとって「独自のDOC」は驚異的な達成であり、これによってサッシカイアは「イタリア唯一の単独生産者による単一畑DOC」を手にした。
現在は創業者マリオの息子ニコロの娘プリシッラがワイナリーの指揮を取っている。
畑
97haのブドウ畑を所有する。サッシカイアを作るカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの大半は歴史的な3つの区画-カスティリオンチェッロ、ドッチーノ、クエルチョーネ-から収穫される。これらの区画はすべてワイナリー東部にそびえる裏山に位置しており、標高の高さから夜間は涼しい気温に恵まれている。それぞれの畑は多様な向きを持っており、これがサッシカイアの「力強さの中に宿るエレガンス」を生む。最も高い標高400mのカスティリオンチェッロ(東向き)と、すぐそばのドッチーノ(北向き)は、気温上昇の影響を特に受けにくく特に暑い年でフレッシュさが際立つ。一方、やや標高の下がったクエルチョーネは南-西向きの斜面を持つ。この標高差と畑の向きの組み合わせがサッシカイアに優雅さとフレッシュさを与えている。
土壌は石灰岩と粘土を多く含み、イタリア語で「サッシ(sassi)」と呼ばれる岩が点在している。この岩こそが「サッシカイア」の名の由来である。
栽培
気候変動においてもサッシカイアではアルコールが14%を超えることはほぼない。その秘密は畑にある。自らを「ボルゲリで最も収穫の早い生産者の一人」と表現するプリンシッラは、収穫期に40~100人の収穫人員を確保する。この人員によって、特にブドウが一斉に熟す暑いヴィンテージにおいても短期集中型での収穫が可能となり、確実な品質管理が行える。また、気温の低いうちにブドウを摘むために収穫開始時間を午前7時から午前5時に早め、収穫後のブドウを冷蔵室に入れてブドウの温度を低く保つことを徹底している。「特に天候が変化する時期は、何事も偶然に任せられない。暑い年はより厳格な管理が効果を発揮する。」と醸造責任者のカルロ・パオリはWA誌に語っている。
醸造
サッシカイアの製造工程はシンプルで、1980年代初頭にステンレス製タンクの使用を開始して以来、ほぼ変わらぬ手法が継承されている。発酵温度は年によって異なり、26-27℃とやや低めに設定することもあれば、30-31℃まで上げる場合もある。マセラシオンは通常2-3週間程で、温暖な年は短縮傾向にあり、抽出はルモンタージュとデレスタージュを行う。マロラクティック発酵はステンレスタンク内で完遂させる。熟成期間は19-25ヶ月で新樽率は1/3〜2/3程となっている。生産開始当初は、スラヴォニア産オーク樽で熟成されていたが、現在は主にアリエとトロンセ産のフレンチバリック(主にタランソーとセガン・モロー)が使用される。樽材は酸素透過性を抑える細目材、軽めのトースト、長期のシーズニング(22~36ヶ月間)を経たものが選ばれる。樽熟成を終えたワインは、タンクに移されて最終ブレンド後に瓶詰めされる。
味わい
Vinous誌のアントニオ・ガローニは、サッシカイアの味わいを「ボルゲリの最高級ワインの中で最も洗練されたもの」と称賛した。一般的にもサッシカイアは「3大アイア」や「3大ボルゲリ」といったカルト系スーパータスカンの中で、常に「最も抑制の効いた存在」だと言われる。しかし、このくくりはやや大雑把ではないだろうか。なぜなら、ソライア(キアンティ産)とグラッタマッコにはサンジョヴェーゼがブレンドされており、サッシカイアとは前提条件が揃っていないからである。カベルネ・ソーヴィニョンとサンジョヴェーゼではタンニンの質感に大きな差があるため、どうしても味筋が異なってしまう。では、ボルゲリ産ボルドー品種のみのオルネライアと比べるとどうか。両者の2018VTを比較したジャンシス・ロビンソンは「サッシカイアはポイヤックの骨格を持ち、オルネライアはナパ・ヴァレーのカベルネと多くの特徴を共有している」と表現した。実際、ワイナリーの現指揮官であるプリンシッラも、デカンター誌で「ラフィットが最も近いかもしれない」とコメントしている。アルコール度数が14%を超えることはめったになく、味わいの中心には常に見事な酸が一本通っているサッシカイアは、重厚感がありながらも落ち着きがあり、優雅さを感じさせてくれる。この均整の取れた味わいが、ポイヤックにおけるラフィットの洗練された雰囲気に通ずるのだろう。一方、アルコール度数と新樽率がより高い傾向にあるオルネライアは、果実味もパワフルで豪華絢爛なスタイルであるため、強引にポイヤックに当てはめればムートンに近いといえるだろう。
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