Jura(ジュラ)

唯一無二の個性を持つヴァン・ジョーヌや

ヴァン・ナチュールを求めて

世界中のソムリエたちが日々争奪戦を繰り広げる

ブルゴーニュのボーヌから東に約100km、スイスとの国境近くに位置するジュラは、非常に規模の小さいエリアである。畑面積は2000haに満たず、これはフランス全体のブドウ畑のわずか0.5%前後である。かつては現在の10倍の規模を誇っていたが、1850年以降カビやフィロキセラの流行、南仏-パリ間の鉄道開通、2つの世界大戦などを通して畑の規模が大幅に減少した。しかし、2000年頃からジュラは感度の高いソムリエやワイン愛好家たちから熱い視線が注がれ、サヴァニャンやプールサール、トゥルソーといった地場品種から作られる個性的なワインに注目が集まった。

ブルゴーニュに近く、ピノ・ノワールやシャルドネも広く栽培されているが、誰もが知るメジャー産地ではないため上質なものでも比較的リーズナブルに楽しめるのも魅力である。またジュラはナチュラルワインの聖地としても名高く、巨匠Pierre Overnoy(ピエール・オヴェルノワ)の思想が多くの造り手をインスパイアしている。Emmanuel Houillon(エマニュエル・ウイヨン)、Philippe Bornard(フィリップ・ボールナール)、Ganevat(ガヌヴァ)、Domaine de la Tournelle(ラ・トゥルネル)やDomaine des Miroirs(ミロワール)などの小規模ながら一流のワインを作る職人気質のドメーヌが多く存在することも見逃せない。

唯一の欠点をあげるとすれば、こうしたワインに対する需要が非常に高く、多くが世界各地の名高いレストランにオンリストされるため、市場に出回る数が極めて少ないということである。

ジュラにはアペラシオンが5つあり、全域から生産可能なクレマン・ド・ジュラ以外では、大きい2エリア、小規模な2エリアに分けられる。規模と生産量で重要なのが白ワイン中心のコート・デ・ジュラと赤ワイン中心のアルボワである。白ワインに特化するレトワールはわずか73ha、ヴァン・ジョーヌに特化するシャトー・シャロンはなんと54haという雀の涙ほどの規模である。

テロワール

ジュラの気候はコート・ドールと大きく変わらないが、より内陸にあるため大陸性気候の影響が強く、冬は非常に寒くなる。また生育期中に雨が多く(1100m超/年)、初夏の雨は開花や結実を脅かし、畑での作業を困難にする。こうした湿った天気は、雑草や病害菌との戦いをより厳しいものにする。加えてここ十年程では雹による収量減もみられる。一方で、気候変動により夏はとりわけ暑くなり、ブドウはたっぷりと太陽の光を浴びることができる。

畑の多くはジュラ山の麓にある標高250-400mの西向き斜面に広がる。ジュラの名前は地質年代のジュラ紀からきており、土壌は主に粘土とマール、一部で石灰岩が見られる。多くのブドウがグイヨ仕立てで、霜害を防ぐために地面からはある程度の高さがある。キャノピーを垂直に管理することで空気の通りを良くし、病害発生のリスクを低減させる。しかし、こうした対策をするも平均収量は他エリアと比べると非常に低く、これは霜、雹、生育期初期の多雨によるカビの蔓延、生育期後半の過度な気温の上昇とそれに伴う干ばつなど様々な気候災害が組み合わさるためである。例えば2017年の赤ワインをみると収量はわずか23hl/haのみで、これは最大収量の半分以下であった。

味わいの特徴

ジュラのアイコンとなるのはサヴァニャンで、通常スタイルの白ワインと酸化的なスタイルの2種類を作る。通常スタイルのワインでは高い酸とミディアムボディを持ち、レモンやアップルなどの控えめな果実味が特徴となる。多くのワインがこのスタイルである一方、個性の塊とも言えるのがヴァン・ジョーヌに代表される酸化的なスタイルである。

ヴァン・ジョーヌは、サヴァニャンを発酵で完全にドライに仕上げ、その後樽に入れる際にあえてヘッドスペースを残して熟成させる。樽内を満タンにしない状態に保つことで酵母がワインの表面上に薄い膜を作る。フィノシェリーで見られるフロールと似ているが、それよりも低いアルコール度数で成長でき、膜が薄い程良いとされている。酵母が作るこの膜の成長を担うのが樽を保管するセラーの環境で、通気がよく温度変化がある場所が好まれる。これは酵母も生物で生きているためである。この膜の元で最低60ヶ月という非常に長い期間熟成させるが、この間のラッキングやトップアップ(継ぎ足し)は禁止されている。

こうして出来上がるヴァン・ジョーヌは非常に力強いアロマを持ち、サワードウやウォルナッツ、ジンジャーにカレーのスパイスなどの複雑なフレーバーが特徴となる。味わいは完全にドライで高い酸とアルコール度数を持つが、ボディは重すぎない。熟成ポテンシャルが極めて高く数十年の瓶熟に耐える。Ganevat(ガヌヴァ)やJacques Puffeney(ジャック・ピュフネイ)、Macle(マックル)らのヴァン・ジョーヌは一度飲んだら忘れられない体験ができるだろう。

最上のヴァン・ジョーヌは、急斜面とグレイマール土壌を持つシャトー・シャロンから生まれる。わずか54haの限られたエリアでのみ生産され、かつ収量も通常のヴァン・ジョーヌの半分(30hl/ha)となるため希少価値が極めて高い。ジュラは自然派の生産者が多いため、ブルゴーニュのようにテロワールが細かく語られることが少ないが、シャトー・シャロンはジュラの頂点に立つグラン・クリュである。

熟成75ヶ月の
Vin Jaune L’Etoile /
Philippe Vandelle

他方、最低60ヶ月という長い熟成はヴァン・ジョーヌ特有のもので、フロールを使用したライトな酸化的スタイルではもう少し短い期間(2-3年)寝かせるというパターンが多い。サヴァニャン単一ではなくシャルドネをブレンドする場合もあれば、シャルドネのみを膜のもとで熟成させる場合もある。これらのワインはアロマやフレーバーでヴァン・ジョーヌとの類似性を見せるが、各要素の力強さは控えめで、アルコールもそこまで高くならない。

赤ワインではピノ・ノワールの他に二種類の地場品種が重要である。1つ目のプールサールは、果皮が薄く病気にかかりやすい品種。ワインは控えめなレッドカラントやクランベリーなどの赤系果実のアロマを持ち、高い酸と控えめなタンニンが特徴。アルコールもそこまで上がらず、ライトよりのボディとなる。以前までは最も植樹の多い黒ブドウ品種であったが、温暖化の影響を大きく受けその数は減少傾向にある。生産者たちの多くが口を揃えてプールサールはもう暑くてうまく育たないと嘆き、トゥルソーに植え替えざるを得なくなっている。

トゥルソーは果皮が厚く、病害に強い品種だが、完熟させるためには豊富な日照が必要となる。蓄熱効果の高い砂利土壌や気温の高い斜面下部、あるいは太陽に開けた標高の高い急斜面などの畑が理想となる。ワインはレッドチェリーなどの控えめな赤系果実のアロマを持ち、優しいタンニンと高い酸、ライトよりなボディの味わいとなる。

多くの赤ワインは5-10日の短期間のマセラシオンをし、発酵温度は30℃かそれ以下に抑える。プールサールではカルボニックの手法が用いられることもあり、よりフルーティーな仕上がりとなる。一方、トゥルソーやピノ・ノワールではマセラシオンの期間がもう少し長く取られることもあり、よりフレーバーの凝縮したタンニンの強い、ストラクチャーのあるワインに仕上がる。基本的に赤ワインの樽熟成は一年以下であることが多い。白にも当てはまるが様々なサイズの樽が使われるものの多くが古樽で新樽は非常に少ない。このおかげでジュラのワインは果実味がしっかり保たれており、かつリーズナブルな価格となる。

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