Ch. Ausone(シャトー・オーゾンヌ)

サンテミリオンで最も有名なワイナリーの一つでありながら、生産規模と宣伝活動の消極性から「最も知られざるワイン」という立ち位置のユニークなシャトー。


歴史

13世紀以来所有者がほとんど変わっていないオーゾンヌは、1950年代にシュヴァル・ブランと共にサンテミリオンの格付けの頂点(プルミエ・・クラッセA)に位置づけられた。

1974年、当時のオーナーが子供を残さずに死去すると、オーゾンヌの所有権は残された妻エレットとオーナーの親族セシルに移ったが、ここから両者の関係には暗雲が立ち込めるようになる。エレットはオーゾンヌの醸造責任者に最年少とも言えるほどに若いパスカル・デルベックを任命したが、セシルの嫁いだヴォーティエ家がこれを認めずエレットの独断で人選を行うべきではないと主張した。両者の意見は度々食い違い、対立が激しくなったため、地方裁判所はエレットとセシルの孫アラン・ヴォーティエをシャトーの共同経営者に任命し、オーゾンヌに平穏をもたらそうとした。ところが、アランとエレットは収穫の開始時期すら合意できず、ワイナリーへの投資やワインのスタイルを巡って何度も言い争いを繰り返した。そうした中、1995年にエレットはオーゾンヌの持ち株50%をラトゥールのオーナー・フランソワ・ピノーに売るべく動いていた。彼女はすでにピノーが提示したオファー額にも合意をしていた。

しかし、フランスの法律上、エレットの持ち株を買い取る優先権を持つのは共同経営者のアランであった。オーゾンヌを手中に収めたいピノーはアランにも同額のオファーを提示するも、アランはこれを断り、ピノーと同じオファー額でエレットから持ち株を買い取った。これによってアランがオーゾンヌの単独オーナーとなり、長きに渡って続いた両者の対立に終止符が打たれた。それ以降、アランは自由に望み通りの品質改革に着手し、醸造コンサルタントのミシェル・ロランを任命した。その後、2005年からはアランの娘ポーリーヌがシャトーに参画するようになった。

2021年、オーゾンヌはワイン業界に激震を与えた。サンテミリオン格付けからの脱退宣言を出したのである。同じくしてシュヴァル・ブランも同様の脱退宣言を行ったことから、サンテミリオンの頂点に立つ2大シャトーの格付け離脱ニュースは、業界と関係者らを大いに驚かせることとなった。ポーリーヌは脱退理由を「マーケティングやワインツーリズムは素晴らしいものだが、偉大なワインの真価はテロワール、ブドウ栽培、そして時間によって測られるべきである」と語り、マーケティングに比率を割く新たな格付けの評価体制を不安視する。格付けが行う官能検査に関しても、「15年分の垂直テイスティングではワインの熟成能力を適切に判断するには短すぎる」とデカンター誌に語っている。

 

オーゾンヌの畑はサンテミリオンの有名な「石灰岩のプラトー(台地)」の縁に位置しており、その規模はわずか7haと非常に小さい。シャトーの南東側はプラトーの断崖の斜面に広がっており、土壌は石灰岩と粘土が主体で下部に行くほど砂の割合が増える。斜面が南東を向ためブドウは北風から守られ、急な傾斜が冷気の停滞を防いで霜害リスクも下げてくれる。7haのうちの大部分がこの南東側の斜面に位置する一方、シャトーの北側にあるプラトーの頂部にも畑がある。通常サンテミリオンのシャトーはプラトーか斜面どちらか一方にしか畑を持たないため、オーゾンヌのように異なる2つのテロワールを持つシャトーは珍しい(パヴィーは例外)。また、一般的にサンテミリオンといえば多くのシャトーがメルローを主体に栽培しているが、オーゾンヌでは畑の約半数をカベルネ・フランが占めている。ブドウの平均樹齢は50年と高く、最古の区画はなんと1906年にまで遡る。この樹齢の高さもオーゾンヌの特徴の一つとなっている。

 

醸造

アランが単独オーナーとなりミシェル・ロランが醸造コンサルタントに任命された1993年以降、温度管理機能付きの木製発酵槽が導入され、樽内でのマロラクティック発酵が行われるようになった。当時は発酵後のマセラシオンや樽熟成は比較的長めで、新樽も100%使用されていた。しかし時代とともに醸造スタイルにも変化が見られ、2010年代中盤頃からは抽出をより軽やかに行うようになり、撹拌というよりもティーバッグのような穏やかな浸漬にシフトした。現在の醸造プロセスは、ブドウを数日間低温浸漬した後、徐々に温度を上げて大型木製タンクで天然酵母による発酵を行う。アルコール発酵が落ち着くまで1日2回のデレスタージュを行い、発酵後は果帽に手を加えず穏やかな浸漬を保つ。プレス後にワインを移して樽内でマロを行い、熟成はほぼ新樽(主にタランソーとデントス)で20ヶ月行う。

 

味わい

オーゾンヌの味わいを語る上ではカベルネ・フランの存在が欠かせないが、近年そのブレンド比率は以前よりも高まってきている。これがワインにスミレやラベンダーのフローラルさと、ミントのような清涼感を与え、全体のトーンが一段明るくなった。一方で、メルローの完熟プラムの甘さとシルキーな質感は安定した土台を作り、リコリスやスイートスパイスが複雑さを添える。そしてフィニッシュにかけて現れる石灰岩由来のキレのある酸と塩味のミネラルは口内を見事に引き締めてくれる。豊潤な果実味とアルコールが作る官能的な味わいに、この切り込むようなフィニッシュが加わることで、オーゾンヌには「重たさのない力強さ」ともいうべき絶妙なバランスが宿る。

 

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