Saint Julien(サン・ジュリアン)

はずれが少なく、ボルドー入門編におすすめ

良いシャトーを選ぶ秘訣は『河沿い』

上品でバランスの良い味わい、料理を引き立てる大和撫子

■特徴 

メドックの中では作付面積900haと最もこぢんまりしているのがサン・ジュリアン。

1級格付けシャトーが存在しないため他のメドックの村々と比較するとやや過小評価されている。

しかし1級ではないながらも格付けシャトーは11あり、そのうちの5つが2級。

ブドウ畑の80%を格付けシャトーが占めており、全体的なレベルの高さと安定した品質が魅力。

畑の高低差が少なく土壌はほぼ均質なため、ワインのスタイルにも共通するものがありボルドーの入門編としてもおすすめ。

土壌は全体的に砂利質でカベルネ・ソーヴィニヨンに適している。

優良とされるシャトーのほとんどは緩やかに流れる河沿いに面していて、水はけも良く全般的に成熟に恵まれた土地。

北側はやや粘土が多いため厚みのある比較的重たい、ポイヤックに似た特徴のワインができる。

対して南側はより砂利が多く、緻密でしなやかなワインができる。

3兄弟とも呼ばれる2級格付けのレオヴィル3シャトーもこの河沿いにある。

その歴史はメドックの中でも特に古い。

元は巨大な1つのシャトーだったものが相続の関係で分割され設備を建て増したので、本家であるラスカーズ以外は醸造設備と樽の貯蔵施設が微妙に遠く、ひそかにスタッフから不満の声が上がっているらしい。

プライドが高く他と一線を引きたがる為にラベルに「シャトー」の記載すらないパワフルで剛直なラスカーズ、長い家族経営で培われた伝統と暖かみ、調和とバランスがモットーの二男バルトン、天才コンサルタントと最新技術を取り入れて親しみやすい果実たっぷりボリューミーな三男ポワフェレ。

目と鼻の先にあるワイナリーだがそれぞれ個性が明確なので、ぜひ飲み比べをしてみてほしい。

サン・ジュリアンにはもう1つの兄弟が存在する。レオヴィル・バルトンとランゴア・バルトンだ。

この2つのシャトーは同じ人が、同じ醸造所内で、同じ方法で造り、品種の栽培比も同じというユニークな関係にある。

違いは唯一テロワールだけで、レオヴィルの方は南向き斜面、ランゴアはレオヴィルより北にあり北向きの斜面。

なのでレオヴィルの方が豊満で流れるようなスタイルに対し、ランゴアはトーンが高くややタンニンの粗さが目立つ。

この差が格付けにも表れているのだが、多様な土壌を持つボルドーでこれだけ比較しやすいワインは他にない。

 

トップスターは不在だが、安定した品質のセカンドたちがレベルを保つサン・ジュリアン。

他のメドック村名アペラシオンと比べて決して華があるわけではないが、慎ましやかで気品のあるスタイルはまるで大和撫子。

ワイナリーによっては比較的若いうちからでも楽しむことが出来るので、売り場で「サン・ジュリアン」の文字を見かけたらまずは手に取ってみてほしい。

格付けシャトー

【二級】

Ch Ducru-Beaucaillou [ シャトー・デュクリュ・ボーカイユ ]

Ch Gruaud-Larose [ シャトー・グリュオ・ラローズ ]

Ch Léoville-Las Cases [ シャトー・レオヴィル・ラスカーズ ]

Ch Léoville-Barton [ シャトー・レオヴィル・バルトン ]

Ch Léoville-Poyferré  [ シャトー・レオヴィル・ポワフェレ ]

【三級】

Ch Lagrange [ シャトー・ラグランジュ]

Ch Langoa-Barton [ シャトー・ランゴア・バルトン]

【四級】

Ch Beychevelle [ シャトー・ベイシュベル]

Ch Branaire-Ducru [ シャトー・ブラネール・デュクリュ]

Ch Saint-Pierre [ シャトー・サン・ピエール]

Ch Talbot [ シャトー・タルボ ]

■データ(出典:ボルドー委員会)

栽培面積 910ha
土壌 砂利中心
生産量 620万btl
シャトー数 19
格付けシャトー数 11
栽培品種 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、、プティ・ヴェルド カルメネール、
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