Vinho Verde（ヴィーニョ・ヴェルデ）

ヴィーニョ・ヴェルデはポルトガル北西部(ミーニョ地方)に位置するDOCワイン産地である。畑は16,000haを超え、西は大西洋に面し、北はスペイン・ガリシア地方との国境、東は国立公園の山々が並び、南はドウロ川を少し超えたところまで広がっている。ヴィーニョ・ヴェルデで作られるワインは極めてフレッシュで軽やかなため、Verde（グリーン）のあだ名を持つ。白、赤、ロゼの三種類がDOCによって認定されているが、無論最も人気があるのはフレッシュな白ワインである。
ヴィーニョ・ヴェルデはブドウ栽培の歴史が長く、初めてこの地からワインが輸出されたのは12世紀頃とされている。ヴィーニョ・ヴェルデ地方にエリア区分の境界が引かれたのが1908年、DOCとして正式にワイン産地と認定されたのが1984年となっている。
ブドウは数多くの栽培家によって育てられているが、各々の畑の平均所有サイズは極めて小さい。ほとんどの栽培家はブドウを協同組合か大規模なネゴシアンに売っており、自社で瓶詰めしているのはわずか400あまりの生産者のみである。重要な生産者はアンセルモ・メンデス(Anselmo Mendes)やソアリェイロ(Quinta de Soalheiro)など。

■テロワール

大西洋沿岸に位置するヴィーニョ・ヴェルデは、温和な海洋性気候が見られ、複数の川が作る渓谷には海風がうまく流れ込んでくる。東(内陸)に行くにつれて地形が高くなっていくため、土壌はより痩せていき、気候は大陸性へと変わっていく。ほとんどの畑は、花崗岩を母岩に持ち、その上には表土の浅い砂質土壌が広がる。肥沃度が低く、排水性に優れる。
海沿いだけあって雨は多く、年間降雨量は約1,500mmに達するため、腐敗やカビの被害が多い。このため伝統的にはブドウを木の上に這わせるペルゴラ仕立てを取り入れ、空気循環を良くしていた。一部の小規模生産者では今でもなおこの仕立てを導入しているが、現在は一般的なワイヤーに這わせるグイヨなどが多く見られる。いずれにしても通常よりも地面から高い位置でブドウは仕立てられ、空気循環を良くし病害のリスクを減らす努力がなされている。また、水分供給(雨)が豊富なエリアであることから、しっかりとコントロールしないとブドウは果実の成熟よりも葉を生い茂らせることに集中してしまう。このため、夏季には除葉やグリーンハーヴェストなどのキャノピーマネジメントを行ない、樹勢をコントロールすることで果実の完熟を促している。

■味わいの特徴

ヴィーニョ・ヴェルデは白ワインがメインの産地で、約70%に白ブドウが植えられている。最も多いのはロウレイロで、全域で見られるが沿岸エリアでよく見られる。晩熟でも早熟でもない中間的なブドウで、やや高めの酸にシトラス、洋梨、フローラルにハーブのアロマを持つ。2番目がアルバリーニョで、シトラス、ピーチにトロピカルなフレーバーが見られる場合もある。ミディアム＋のボディに高い酸を持つ。伝統的にアルバリーニョは、ほとんどが北部の内陸産地モンサオ(Moncao)やメルガソ(Melgaco)で栽培されていた。このエリアは最も上質なワインを生むと名高く、とりわけフレーバーの表現力で傑出しており、収量が低いためよりフルボディなワインとなる。現在アルバリーニョは以前よりもポピュラーな品種になってきたため、その他のエリアにも植樹が拡大している。3番目の品種はアリントで、ロウレイロやアルバリーニョと比べるとニュートラルな特徴がある。わずかにシトラスやりんごのニュアンスがあり、酸は高い。他にもアヴェッソ、アザルやトレイシャドゥーラなどの品種がある。
大量生産向けのカジュアルなヴィーニョ・ヴェルデは、エリア全体からブドウが集められ品種もブレンドされるケースが多い。こうしたワインのほとんどはステンレスタンクで低温発酵される。多くのヴィーニョ・ヴェルデは発酵が終わるとすぐにリリースされ、ボトリングの際にはしばしば二酸化炭素が加えられ、これがワインにちょっとした微発泡感を与える。ワインは通常低アルコール、高い酸を持ち、品種によってリンゴ、シトラスあるいはピーチなど様々なフレーバーを持つ。こうしたワインは多くが協同組合か大規模なネゴシアンによって作られる。
一方、より高価なワインは小規模なワイナリーから作られ、モノセパージュで単一のサブリージョンにこだわって作られる傾向が強い。ごく一部の生産者では天然酵母を使い、古樽で発酵あるいは熟成を行い、ワインを澱と数ヶ月寝かせることで複雑性とテクスチャーを向上させる。こうしたワインの中には小売価格八千円前後のプレミアムなものや、四千円前後の本格的なものまで様々あり、品質は総じて高い。