新発想マリアージュに出逢えるお店　第二回　アリラン飯店の薩摩牛焼肉

新発想マリアージュに出逢えるお店　

ワイン専門商社フィラディスの営業部門、中小路と申します。

コロナ禍で外食をする機会は減ってしまいましたが、やはり自宅では味わえない魅力が飲食店にはたくさんあると思います。プロのお料理、サービス、素敵な店内の雰囲気など、しっかりと外食ができる状況になれば、すぐにでも堪能したいものですね。

私は日々飲食店様や酒販店様にワインの販売をするだけでなく、ワインに関連するあらゆる面でサポートをしております。中でも重要なのがマリアージュについてです。そのお店ならではのお料理にどんなワインを合わせると最も美味しく感じ、お客様に最も喜んで頂けるのか。特に難しく同時にやりがいを感じるのが、ソムリエさんがいらっしゃらないことの多い和食、焼肉、焼鳥、中華などのお店です。料理長や大将と一緒に試食、試飲をしながらじっくりと選んでいます。

美味しいワインを飲みたいけど、洋食以外のお店に行きたい、かつ素敵なマリアージュを楽しみたい！

そんなグルメな方に少しでもお役に立てる様に今後、シリーズとして私が出会った素敵なお店とお料理のマリアージュをご紹介させて頂きます。

＊もちろんご自宅でワインを楽しむ際にもきっと参考になる情報ですので、自身でのマリアージュにもぜひ役立てていただければと思います。

薩摩牛の焼肉とワインのマリアージュ：アリラン飯店にて

昭和54年創業の横浜の老舗の焼肉の名店です。井土ケ谷駅より歩いて10分ほど、野球選手や有名人もこぞって訪れるそうです。こちらでは、A4ランク以上の牛だけが認められる、鹿児島の黒毛和牛・薩摩牛を提供しています。

店主が情熱を持って、その五感で見極めた自慢の牛肉はどんな焼き方、食べ方でも美味しいのですが、さらに美味しく味わえるよう焼肉店ならではの丁寧な仕事と工夫を加えてあります。また塩には100％自然の岩塩、卵もこだわりの地鶏の卵を使うなど食材へのこだわり、部位ごとに最高の味を引き出す食べさせ方へのこだわりが人気の秘訣です。

ワインを合わせるポイント：肉の旨味を引き出し、焼肉屋さんならではの仕込みをさらに引き立たせるワインを

脂は切ってスッキリさせるべき？

「赤身の方が好き」「脂がキツイのは食べづらい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか？私もそうです。ですが、脂にも様々な種類や質があります。

薩摩牛に含まれる脂肪のうち、約50％は不飽和脂肪酸のオレイン酸です。オリーブオイルなどに多く含まれていて、健康面、味わいともに質の良い脂です。このオレイン酸の融点が口の中の温度より低い14℃と言われており、焼肉を食べた時にくちどけがまろやかになり、香りを立たせ、コクをもたらします。

あくまでも脂のバランスにもよるのですが、アリラン飯店の牛肉は繊細な脂と旨味のバランスがよく、酸味の強すぎるワインでスッキリさせてしまうのはもったいないと思います。まろやかさやコクを引き立たせる適度な甘味や渋みをもったワインを合わせた方が美味しく、そして驚くべきことにスッキリと食べられました。

下味の塩、スパイスをさらに美味しく！

一口に焼肉と言っても、牛の種類も異なれば、当然お肉につける下味も異なり、まさにお店ならでは特徴がでるポイントの１つではないでしょうか。肉の旨味を引き出し、食欲をそそる香りを引き立てる役割があります。

アリラン飯店では100%天然の岩塩やこだわりの胡椒を使用しています。ワインにはほかのお酒にはない、フルーツやスパイスの香りがあります。アリラン飯店の下味をさらに引き出すには、黒コショウはもちろん、熟成由来の大地の香りや白コショウなどの香りを持ったワインが活躍してくれました。

タレとの相性は見逃せません！

タレもお店のこだわりが如実に表れるポイントです。アリラン飯店の企業秘密につき、詳細はお話できませんが辛め、甘めのタレがあり、しっかりと旨味、コクがありながら、さっぱりとお肉を食べられる秘伝のタレです。ヤンニンジャンを添えても非常に美味しくなります。

一般的に焼肉のタレには醤油が多く含まれており、旨味の一種であるグルタミン酸が豊富です。肉自体にも旨味の一種であるイノシン酸が多く含まれており、それだけでも旨味の相乗効果が生まれます。この旨味をさらに生かしてくれるアミノ酸が豊富なワインで、アリラン飯店のタレに合うだけの口当たりの柔らかさがあるワインが合いやすかったです。

お店によって違うカットをもっと生かすために

肉のカットを考える事は少ないかもしれません。しかし、実はカットする人の技量によって大きく差がでて、口当たり、食べ応えの異なります。アリラン飯店のカットは1~1.5口で食べられる大きさで20~30回と理想の咀嚼回数で食べられます。厚切りのステーキであれば、咀嚼欲を刺激するタンニン、渋みの豊富なワインの方合いますが、アリラン飯店の焼肉は強すぎず、程よいタンニン、渋みを持つワインがキレイなマリアージュを見せてくれました。

ぜひ試してほしい！このお料理とこのワインのマリアージュ！

お料理とワインのタイプごとに様々な合わせ方があるのでご紹介いたします！

白ワイン：☆牛タン×フラスカーティ・レ・ルッビエ/カザーレ・ヴァレッキエーザ　

アリラン飯店の看板メニューの一つ、牛タン。程よく肉厚でジューシーなのですが、なによりも感動するのが下味の絶妙さです。焼く前から複雑に香りが立ち上り、焼いた後は香ばしさも加わり、口に入れる事を我慢できないほどの香りになります。口に含んでからも、心地よい香りと刺激が牛タンの旨味をさらに引き立てます。そんな牛タンとベストマリアージュを見せてくれたのが４つの異なる品種を混植混醸で作るこのワインです。キレイな柑橘果実やほのかにハーブ、白コショウの香りを添えてくれます。さらにジューシーで上品な脂に同調してくれるだけの柔らかいテクスチャー、程よい甘味と苦味を持っています。

柑橘類や洋ナシの瑞々しい香り。マルヴァジア・デル・ラツィオの華やかさ、マルヴァジア・ディ・カンディアのボディ、トレッビアーノ・トスカーノの繊細さと爽やかな酸、そしてグレコのストラクチャーが継ぎ目なく溶け込む混植・混醸ならではの味わいは、どんな料理にも寄り添う懐の深さとフレッシュさに満ちている。

赤ワイン：ロース×ロッソ・ディ・トスカーナ/レッチャイア

レバやハラミも人気メニューですが、繊細で味わい深いロースを紹介します。塩で食べても繊細な旨味が感じられ、いくらでも食べられそうな味です。カルビに比べると脂が少ない分、甘味やコクよりも旨味をいかに引き出せるかがポイントになってきます。

ここに添えて輝くのは甘く濃いワインではなく、熟成由来の繊細な口当たりと旨味を引き立てることのできる黒コショウや大地の香りをもったこのワインでした。ワイン自身にも旨味がしっかりとあり、ロースの持つ旨味を増長させる事ができました。

 [ワインの味わいコメント]

モンタルチーノのサンジョヴェーゼ・グロッソに、南トスカーナのマレンマで注目の産地モンテクッコのカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロのブドウをブレンド。赤く熟した果実やスパイスの香り。細かなタンニンがよく溶け込んだ滑らかで丸みのある果実。ブドウのエキスがしっかりとのった味わいにはトスカーナ特有の陰影が感じられる。

赤ワイン：☆カルビ×コート・デュ・ローヌ/ドメーヌ・ド・ラ・バスティード　

甘味、コクたっぷりのカルビ。ですが、アリラン飯店のカルビは脂が非常に繊細で、下味や焼いた時のメイラード反応による香ばしい香りも相まって非常に複雑な味わいです。タレにも柔らかい甘味、旨味がしっかりとあるので合わせるワインには当然、柔らかさ、程よい甘さが求めらますが、それでいて渋すぎず、黒コショウや甘酸っぱいベリーソースを添えてくれるような要素も求められました。

このコート・デュ・ローヌは55%のグルナッシュ由来の柔らかさ、甘さ、甘酸っぱいベリーソースのニュアンス、25%のシラー由来の黒コショウの香り、20%のカリニャン由来の程よい渋みや酸があるだけでなく、ヴィザン村ならではの旨味がしっかりとあります。これ以上ないのではと思うほどの同調をしてくれました。

 [ワインの味わいコメント]

コート・デュ・ローヌの畑であるシューズ・ラ・ルースのワインに格上アペラシオンであるコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュのヴィザンのワインをブレンドすることで生まれたワンランク上のリッチなコート・デュ・ローヌ。フレッシュな赤い果実、洋酒漬けのチェリー、チョコレート等の豊かな香り。柔らかな口当たりに続く果実はフルーティな甘さに溢れ、豊富で細かなタンニンがふくよかな味わいをしっかりと支えている。

上記は数あるメニュー、ワインの中から抜粋したマリアージュの一部です。美味しいお肉を美味しいワインで心ゆくまで堪能したいと思った方はぜひアリラン飯店へご連絡ください！

お店紹介

店名：アリラン飯店　井土ヶ谷本店

住所：〒 232-0053　神奈川県横浜市南区井土ケ谷下町18-4

アクセス：京浜急行電鉄本線 井土ヶ谷駅より鎌倉街道に向かい徒歩10分
横浜市営地下鉄　蒔田駅から496m

電話番号：045-715-4103

横浜駅にもアリラン飯店　浅間町店（045-311-2919）、アリラン飯店　岡野町交差点側店(045-620-4929)があり

異なるメニュー、ワイン、そのマリアージュを楽しめますのでぜひ！

ライター紹介

中小路　啓太（なかこうじ　けいた）

フィラディス　営業部所属。J.S.A.認定ソムリエ。
飲食店の方のお役に立てる様、ワインに関して幅広くサポート、ご提案を日々行う。
鶏や魚の捌き、焼鳥の串うちなど飲食店の方がされている料理の仕事を素人なりに自分でもやってみるのが趣味。それに合うワインを考えるのも趣味。旅行先で美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲むのは趣味ではなく生きがい。