「ワインの添加物について、ちゃんと知りたい①「亜硫酸塩(前編)」
- 2019.11.19
- なるほどのあるワインコラム
- コート・デュ・ローヌ, テイスティング, フランス, レシピ, ワイナリー, 亜硫酸塩, 価格, 和食, 実験, 樽, 熟成, 生産者, 発酵, 白ワイン, 試飲, 輸入, 輸送, 香り
今回のコラムのテーマは、ワインを飲むのにあたって皆様にも是非知っておいて戴きたいこと。
酸化防止剤、「亜硫酸塩=SO2」について、前篇・後篇に分けて2回お話をさせて頂きます。
WINE CLUB 30では先日、
「亜硫酸塩添加の意味を正しく認識する」
「同じワインで亜硫酸塩を添加する量を変えたら、香りや味わいに影響があるのか」
という実験を行いました。
今回は泡・白・赤5種類のワインそれぞれに、亜硫酸塩の添加量を4段階に分けたサンプルを用意。
計20本のワインを段階的に試飲して、亜硫酸塩がワインの香味に与える影響を知る、という形です。
さて、今日の「前篇」ではまず、酸化防止剤=亜硫酸塩の役割について知って頂きたいと思います。
前提として2つ。特に②は考え違いをされている方も多いので、是非正しい知識を。。。
①亜硫酸塩は現代になって添加されるようになった食品添加物ではなく、
ワイン造り創世記の古代ローマ時代には樽の消毒などに使われていた、
伝統的な酸化防止剤であること。
②亜硫酸塩は、ブドウが発酵してワインになる過程の副産物としても自然に生成されること。
つまり、亜硫酸塩「無添加」ワインは存在しても、亜硫酸塩「含有量ゼロ」のワインは存在しません。
どんな無添加ワインにも、自然発生した亜硫酸が含まれている、ここだけは知っておいてください。
では、なぜ、亜硫酸塩を酸化防止剤としてワインに更に添加しなくてはならないのでしょうか。
一番の目的は、その名の通り「ワインの香味が酸化により劣化するのを防ぐ」ためです。
「酸化」の影響で一番分かりやすいのはリンゴです。
切った林檎を放置していると変色してしまう。
林檎に含まれるポリフェノールが空気に触れ、酸化酵素の影響で変色する、というプロセスです。
ワインはブドウと酵母だけで作られるお酒。
ブドウを収穫する時に果実が破裂してしまうと、そこからもう酸化は始まります。
ですから、このような破損したブドウがワインに酸化の影響を及ぼさないよう、
手摘みで丁寧に収穫し、選り分けるわけです。
最近は、亜硫酸塩を収穫の段階で一度添加するケースが増えています。
最も繊細な収穫したての果実が劣化しないよう、微量の亜硫酸塩で守るわけですね。
(そして、機械で一気に収穫し、選果を厳密に行わない大量生産のワインには、
醸造の工程で酸化防止剤を多く添加する必要があります。)
この後も、ワイン造りのプロセスにおいて酸化酵素の影響を受けやすい段階ごとに亜硫酸塩を添加、
ワインの状態を守っていきます。
例えば、ブドウ品種ごとに分けて仕込んだワインをブレンドする際や、
樽熟成の際(ここが最も繊細なプロセスかも知れません)、瓶詰めの際 などに、段階的に添加されていきます。
粉末や液状、錠剤など様々な形で添加がされます。
伝統的には、硫黄を燃やせば亜硫酸=SO2が発生するので、
硫黄を燃やして発生した気体のSO2を樽の中に入れて蓋をする、
といったシンプルなやり方が今も続けられています。
段階的に必要最低限の量を添加して行くことでワインを防御し、SO2は徐々に減少して行きます。
そして、亜硫酸塩のもう一つの役割は、「微生物の活動を防ぐ」ことです。
亜硫酸塩を加えることで細菌の増殖を防ぎ、
残留している酵母の活動を弱体化させることで再発酵を防止します。
甘口ワインや無ろ過ワインなどは糖分を多く含むが故に細菌の増殖リスクや酵母の再活性化リスクがあるので、
通常の白ワインよりも亜硫酸塩を多く添加します。
これはつまり、輸送過程などで熱にさらされた際、酵母が再活性化してワイン中の糖分を食べ、
再発酵してしまうリスクがある、ということです。
もし再発酵が起こると炭酸ガスが瓶内で発生し、通常の非発泡ワインの瓶ではそれに耐えられず、
瓶が破裂してしまうという非常に危険なケースもあります。
では、どうして「酸化防止剤無添加ワイン」等と言うモノが、
300-400円の国産低価格ワインで大量に造れるのでしょう?
常温の棚で売られ、家庭で常温保存される可能性も高いワインで、なんでそんなことが出来るのか?
その答えは実に簡単「熱処理している」からです。
輸入果汁を発酵させて日本で造られる「酸化防止座無添加ワイン」は、
ワイナリーで瓶詰めされる直前に50-60度程度まで熱して殺菌しています。
日本酒でいう「火入れ」を、古くからある日本国内のワイナリーは実施しているのです。
瓶詰め仕立てのワインは、お風呂よりも熱く熱されており、瓶に触ることも出来ないくらい。
果物を60度まで熱して、フレッシュな果実感や酸味が、ちゃんと残るのでしょうか・・・・?
亜硫酸塩と聞くと、どうしても強い防腐剤などをイメージしてしまいがちですが、
決してそんなものではありません。
酸化防止、抗菌作用のほかに、香りや味わいにも大きく影響を及ぼす役割を果たしていることが、
今回の比較テイスティング実験で明確に分かりました。
次回の後編では、亜硫酸塩がワインの香味バランスに与える影響、
そして人の体に与える影響についてレポートをします。今回はあまり楽しいお話ではなかったかもしれませんが、
ワインを飲む方には誤解せずに知っておいて戴きたい大切な内容だと思い、敢えて書くことにしました。
繰り返しになりますが、酸化防止剤は悪、無添加なら何でもいい、とは思わないでくださいね。
勿論、ワイン専門商社フィラディスの直販ショップ Firadis WINE CLUBでは最低限の添加を徹底している生産者しか取り扱っておりませんのでご安心を!
さて、最後にワインのおススメもさせて下さい!
「ドメーヌ・ド・ラ・バスティード コート・デュ・ローヌ」です。
このワイン、ビオロジック栽培で育てたブドウを徹底的に衛生管理して仕込み、
酸化防止剤の添加を出来るだけ抑えて造ったワインです。
南フランスの太陽に恵まれた果実のリッチでボリュームある味わいが、
ストレートに感じられるワイン。
おススメレシピとして肉じゃがを選んでいるくらいで、和食の出汁風味と本当にきれいに合うワインですよ。
年末年始、日本の味覚をしみじみとかみしめる時に、ぜひ。
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