変わりゆく未来に直面するソノマの生産者たち

変わりゆく未来に直面するソノマの生産者たち

カリフォルニアの主要なワイン産地の一つであるソノマでは、長く、暑く、乾燥した夏が今年も続きそうです。


3月上旬、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのブドウ栽培家たちは、早ければ4月にも州から水利権を削減される可能性があると知らされました。

 

カリフォルニア州水資源管理委員会からのこの悪い知らせは、・カウンティ周辺の飲料水を配給する機関であるSonoma Waterが主催したイベントの中で明らかにされました。ソノマの生産者たちは、昨年8月にも水利権を削減させられましたが、これは生育期のかなり遅い時期の事でした。今年は川からの水がない状態で生育期の全体を過ごさなくてはいけない可能性が出てきました。

 

しかし、良いニュースもあります。1月と2月は非常に乾燥していましたが、昨年末の11月と12月にはかなりの雨が降ったのです。

 

「私は多くの農家と話をしましたが、12月に降った雨は彼らの貯水槽をいっぱいに満たしました。多くの農家が、今年は昨年よりも良い年になると感じているようです」
Sonoma County Farm Bureauのエグゼクティブ・ディレクターであるTawny Tesconiはこのように話します。

 

多くの農作物にとって干ばつは短期的な問題かもしれませんが、ワイン用ブドウにとってはそうとは言えません。この地域の2012年から2016年間までの5年間に渡る長期的な干ばつにより、土壌に塩分が徐々に蓄積されると、ブドウ房のサイズとブドウ樹の健康の両方に悪影響を及ぼします。そして、干ばつがある年は常に収穫量は減ってしまいます。しかし、ワインの品質に関しては影響をほぼ受けないか、場合によっては向上が見られることもあります。

 

ソノマ・カウンティでワイン用ブドウに次ぐ農産物である酪農業の場合はそうはいきません。Tesconiによると、干ばつにより牛が食べるための牧草が十分になかったため、酪農家は牛の数を減らし、実際に2つの酪農家が廃業に追い込まれたといいます。有機酪農で生産される牛乳はオーガニックミルクを名乗れますが、それには120日間の放牧が義務付けられています。干ばつの年は放牧のための牧草が足らないためオーガニックミルクの生産は不可能です。そのためソノマ・カウンティの酪農家は他の地域からもオーガニックミルクを購入していますが、そのミルクを何百キロもトラックで運ぶことによる環境負荷を考えるとなんと皮肉なことでしょうか。

 

今年は、ニジマスやサケの個体数を維持するための「フィッシュ・レスキュー」も必要になりそうです。アメリカ海洋大気圏局のDan Wilsonによると、ロシアン・リヴァーとその支流で雨季に生まれた銀サケが、昨年末の冬に記録的な数で川に戻ってきたといいます。しかし、現在の川の水位が低い状況は“最大の群れを失う可能性”を意味する、と懸念します。流水が少ないとサケの稚魚が海に辿り着けなくなる可能性が高まるからです。

 

通常、「フィッシュ・レスキュー」とは、魚が海へ出ていくのに十分な水量にするために川に放水することを意味します。Wilsonによると、アメリカの巨大ワイン企業であるJackson Family Winesは昨年、私有貯水池の水をフィッシュ・レスキューに使うことを当局に許可したといいます。ところが、今年は貯水池を所有する先に働きかけても、これに対する反応はあまり見られないと話します。

 

饗宴か飢饉か

もしまたこの地に大雨が降ったら、ブドウ栽培者は帯水層管理の最新の理論である“洪水管理法”を実際に目にすることになるかもしれません。Sonoma Waterの地下水管理ディレクター、Jay Jasperseによると、ブドウ畑などの畑に水を張り地中に浸透させるこの技術は、帯水層に再度水を供給することを可能にするかもしれない、と説明します。冬場の休眠中のブドウ畑であれば洪水の影響を受けません。

 

これが実現すれば、ソノマの長期的な水資源管理の一部となる可能性が高いでしょう。ソノマ・カウンティは、2019年には洪水が発生し、それ以来干ばつが続いているという、好不調の激しい降雨スケジュールが続きがちだからです。Jasperseによると、ソノマ・カウンティは、西部11州の中で最も高い頻度で洪水被害を受けているそうです。

 

「気候変動モデルは、私たちの地域で、干ばつと洪水の両方の深刻さが増すと予測しています」
そう話すJasperseですが、気象予測を利用して貯水池の放水を誘導してきたことで、5年続いた干ばつの初年度に比べ18%貯水を増やすことに成功したことも同時に指摘します。

 

さて、ここで朗報があります。Jasperseによると、Sonoma Walterは今年も干ばつが続くと予測していますが、ソノマ・カウンティはこれを乗り切れると信じているそうです。ただし、昨年6月のように、灌漑は夜間のみ許可され、水を多く使用するフロアクリーナーや高圧洗浄機の使用は禁止されるなどの規制が再度設けられる可能性があります。Santa Rosa Waterのディレクター、Jennifer Burkeによると、これらの制限のもと、この地の昨年7月から1月までの水の使用量は前年よりも22%減少しました。また、ソノマ・カウンティ最大の都市は、1990年から人口が2倍にまで増えたにも関わらず、32年前より14%も水の使用量が減っていることを誇りに思っていいと言います。

 

一方で、火災についても言及せねばなりません。カリフォルニア州水資源局のJeanine Jonesによると、近年はどの年も歴史的な基準で平均気温が上昇し続けており、現在3年続いている干ばつと相まって、2017年のTubbs Fireのような火災のリスクは今年の夏も高まる一方だといいます。2017年のTubb Fireでは22人が死亡し、多くのワイナリーが煙害との闘いに追われました。

 

ソノマ・カウンティ以外のアメリカ人は、乳製品はあまりにも身近すぎるためほぼ無関心で、ワイン用のブドウには多少関心を持っている程度かもしれません。しかし、この継続的な干ばつが果物や野菜に与える影響は、今後全米にまで広がっていくでしょう。そしてソノマよりも、「世界の食料庫」と呼ばれるほどに農業が盛んなサン・ホアキン・ヴァレーの方が干ばつの影響が大きいのは間違いありません。

 

とはいえ、かつてリンゴが最も有名な農作物だったソノマ・カウンティは、今では40種類の作物を栽培しており、それらはワインよりも大きな打撃を受けるだろうとTesconiは予想しています。彼女は最後にこのような懸念を投げかけました。「野菜の生産量と、野菜製品の多様性が心配です。将来的にその多様性が失われていってしまうかもしれません」

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/03/sonoma-growers-face-a-changeable-future

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