Rueda

スペインの首都マドリードの北西に位置するルエダは、ドゥエロ川に沿って約150kmに渡って広がる。近隣のトロやリベラ・デル・ドュエロと異なり、ルエダの生産はほとんどがフレッシュで軽やかな白ワインとなっている。

歴史を見ると50年ほど前までは土着品種ベルデホを使って酸化的なシェリーのようなワインを作っていたが、このスタイルは時代が進むにつれて廃れていった。その後1970年初頭に、リオハのマルケス・デ・リスカル(Marques de Riscal)がベルデホのポテンシャルに興味を持った。この品種を嫌気的なアプローチで、温度管理機能付きのステンレスタンクで発酵させることで、消費者の求めるフレッシュでフルーティーなワインが作れると考えたのである。彼らが行ったルエダへの投資は産地変革のカンフル剤となり、多くの生産者がこれに続いてフレッシュでフルーティーなワインを生産するようになった。

畑の規模は過去20 年で驚くほどの成長を遂げており、2000年から2019年までの生産量は約4倍に伸びている。リリース直後から楽しめるクリーンでクリスピー、フレッシュでフルーティーなスタイルのワインは、リーズナブルな価格と相まって国内だけでなくグローバルな市場でも人気に火がついたのである。一方で、このスタイルのワインは他国、他産地、他品種との競合が激しいため、ルエダの生産者は差別化ができるよう品質向上やスタイルの確立に本腰を入れている。

こうした背景を踏まえてのことか、2020年にルエダのワイン法が大きく変更した。一部例を挙げると、新しい認定品種にシャルドネとヴィオニエが加わり、マカベオが認定品種から外された。また新カテゴリ”Gran Vino de Rueda”も設立された。これは樹齢30年以上のブドウ、最大収量6,500kg/haといった栽培面での条件をつけ、より高品質なワインを生み出す仕組みである。

テロワール

ルエダの気候はトロやリベラ・デル・ドュエロに似ており、大陸性気候で暑く乾燥した夏と寒い冬を持ち、雨は少ない。畑は標高700-800mの高台にあるため、夜間は冷えブドウにはしっかりと酸が残る。この地の土壌の母岩は石灰岩で、下層土には砂や粘土の層が見られ、表土には石が多く見られる(一部で砂質もある)。このため水はけがよく、土には栄養素が乏しいためブドウの樹勢を抑えてくれる。ほとんど全ての畑が川の両岸であったり、支流であったり、何らかの形でドュエロ川に接している。最上の畑はドュエロ川に最も近いエリアで、ここではより多くの石灰岩が土壌に含まれている。また、一部の畑には非常に高樹齢の株仕立てのブドウが存在し、砂質土壌でフィロキセラ禍を生き延びたものもいる。こうしたブドウは全体の約10%程度だが、品質が非常に高いため引き抜かれずに生き残っている。

味わいの特徴

産地のアイコンとなるのは畑の約90%を占めるベルデホである。比較的渇水に強い品種なので降水量が少ないルエダの気候にマッチする。ワインはやや高めの酸に、中程度のアルコールを持ち、りんご、洋梨、ピーチのフレーバーにフェンネルなどのハーブのニュアンスを伴う。余韻にかけてわずかな苦味が残るのも特徴である。次に重要な品種はソーヴィニヨン・ブランで、ベルデホとブレンドされるか、あるいは単一で仕込まれる。

カジュアルなワインのほとんどは嫌気的なアプローチで作られ、ステンレスタンクでの低温発酵の後、すぐに瓶詰めして早飲み用としてリリースされる。スペインのほとんどの白ワイン同様、発酵の安定性と果実味をしっかり保つため基本的には培養酵母が使用される。中価格帯のものは数ヶ月〜一年ほど澱と熟成させる。バトナージュが行われる場合もあり、テクスチャーによりなめらかさと厚みが出る。生産者たちのラインナップで最も上級なワイン(とはいえ中価格帯に収まっている)は、発酵や熟成にオークを使用しており、ボディの厚みや質感を向上させ、トーストやスモークなどの複雑なアロマやフレーバーが味わえる。ほぼ全てのスタイルで酸を保つためにMLFは回避され、フレッシュな酸がしっかり活きているのがルエダの特徴と言える。重要な生産者はオシアン(Ossian)やボテガ・ベロンドラーデ・イ・リュルトン(Bodega Belondrade y Lurton)など。