【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【8月】
- 2025.08.01
- ワインのある景色

ワインと映画
毎年8月の終わりにイタリアのヴェネツィアで開催される国際映画祭。カンヌ、ベルリンでの映画祭と並ぶ世界3大国際映画祭の1つで、華やかに着飾ったセレブたちがレッドカーペットを歩く姿はテレビやネットでも取り上げられ、大きな話題になります。上映されるのは様々な国で作られた様々なジャンルの映画。映画祭で賞を受賞した作品は「観てみようかな」と、私の映画選びの指標になります。
もう1つどうしても気になってしまうのは、食事やワインが出てくる作品。古くは007シリーズに始まり、作品に出てくるお料理やワインにはとても興味をそそられ、それを話題に話が弾むことはワイン好きには良くあること。最近では、昨年のカンヌ映画祭で最優秀監督賞を受賞した作品「ポトフ 美食家と料理人」。19世紀末のフランスの田舎を舞台に女性料理人と美食家の恋愛を描いた作品ですが、最初から最後まで美味しそうな料理、こだわりのある料理がワインと共に画面に溢れ、エンドロールが流れるころにはお腹がいっぱいになったような、でもすぐにでも食事に出かけたいような不思議な感覚になりました。ミシュラン三ツ星シェフとして名高いピエール・ガニェールが料理監修をし、シェフ本人が少しだけ出演していることも話題の1つに。
ワイン好きの間ではもはや定番中の定番ともいわれている映画「サイドウェイ」は、結婚を1週間後に控えた男性が、独身最後の記念に友人と共にカリフォルニアのワイン産地を訪れ、旅の途中で出会うあれやこれやを通して自分を見つめ直すロマンスコメディ。カリフォルニアの美しい風景と実際に存在するワイナリーやレストランが数々登場して、もはやワインも主役と言っても良いほどで、カリフォルニアを訪れたくなる作品です。「ブルゴーニュで会いましょう」も美しいブルゴーニュの景色に惹かれる作品ですが、ストーリーはファミリー経営のワイナリーにはあるあるの経営再建と家族のお話。この作品は世界一とも言われる銘醸地のワイナリーが、実はいかに自然と共に生きる実直で素朴な人々であるかが描かれていて、ブルゴーニュの生産者のリアルを知ることのできる作品だと思います。
あと、私の中で忘れてはならないのが「バベットの晩餐会」。貧しい漁村を舞台にしたデンマークの作品で、今は亡き厳格な牧師のもとに生まれた未婚の老姉妹と、パリからやってきて老姉妹に雇われた家政婦バベットのお話。あることがきっかけでバベットは村の人々を招き、亡き牧師の生誕100周年晩餐会を開催して食事とワインを振る舞います。その食事が素晴らしく豪華で、名だたるワインも出てきます。豪華な食事などとは無縁な村人達との晩餐会はちょっとコミカルで、でも観終わった後にとても心が温まる作品です。
番外編は「レミーのおいしいレストラン」。シェフになることを夢見る料理が苦手なレストランの見習いレミーが、グルメなネズミと出会って夢を実現させていくお話。ピクサーのアニメ作品ですが、侮るなかれ、描かれているお料理がリアルで本当に美味しそう。銘醸ワインも出てきて、大人もしっかりと楽しめる作品です。
まだまだご紹介したい作品がたくさんあって困りますが、自宅に居ながらにして映画を楽しめる昨今、まだ観ていない作品がありましたらぜひ、ワイングラスを片手にご覧になってみて下さい。
2023年5月から、ブドウ畑と生産者の1年を追ったコラムの連載を開始してちょうど1年が経ちました。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。

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