【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【8月】
このコラムではブドウ畑と生産者の1年に寄り添いながら、ワインのある様々な景色をお伝えしていければと思っています。
目次
スパークリングワイン
8月。ギラギラと暑い太陽に照らされていると、どうしても白ワインや泡に手が伸びてしまいます。ワイン好きのあいだで言う「泡」とは、いわゆるスパークリングワインのこと。乾いた喉を潤してくれるシュワシュワッという喉越しがたまりません。
その代表的なのがシャンパーニュ。シャンパーニュ、シャンパン、シャンペンと日本では色々な呼ばれ方をしていますが、その名があまりにもメジャーすぎて、スパークリングワインとあらば全てをそう呼ぶ方も時々いらっしゃいますが、それは間違いです。フランス・シャンパーニュ地方で、瓶内二次発酵という製法で作られたものだけがシャンパーニュと名乗れます。
世界には色々なスパークリングワインがあり、例えばフランスのクレマン(Cremant)はシャンパーニュと同じ製法で作られていて、クレマン・ド・ブルゴーニュ、クレマン・ド・ロワール、クレマン・ド・ジュラなど「クレマン」の後に産地が続きます。その土地のブドウ品種を使用して作られているので味わいも様々。何より魅力的なのはそのコストパフォーマンスの高さです。スペインのカヴァ(Cava)、イタリアのスプマンテ(Spumante)、ドイツのゼクト(Sekt)も忘れてはなりません。消費が増えるこの季節、旅する気分で飲み比べてみるのも楽しいものです。
ご馳走サラダ
フランスでこの時季、白ワインやスパークリングと一緒によく食されるのがサラダ。それだけでメイン料理になるご馳走サラダです。サラダ&バケットは通年を通してカフェランチの定番メニューですが、食が進まなくなるこの季節は特に人気です。葉物野菜にきゅうり、トマト、いんげん、ブラックオリーブやゆで卵、ツナやアンチョビが入ったサラダ・ニソワーズ(ニース風サラダ)、ポーチドエッグや砂肝、ベーコン、クルトンなどが入ったリヨネーズ(リヨン風)、焼いたシェーブルチーズ(ヤギのチーズ)にナッツと蜂蜜を散らしたシェーブル・ショー。大きなお皿やボールに季節の野菜と様々な具材がたっぷりと盛られた色鮮やかなサラダは眼からも元気をもらえます。
8月のブドウ畑
さて、色付いたブドウが実る畑には生産者の姿が連日あります。ブドウの健康状態をチェックしながら、暑さで蒸れてしまいそうなところは風通しを良くし、傷んでいるものがあれば躊躇なく排除していきます。良いワインを生み出すには、健康なブドウを収穫することが何よりも大事。ひと房、ひと粒に目を配りながら、見逃すことのないように各畑をまわります。
気候変動の影響を受ける近年はブドウの成熟が早くて8月に収穫を開始しなくてはならない年があったり、突然の山火事に見舞われてしまう産地があったりと、気を抜くことの出来ない8月です。
ワイナリーでも収穫に向けての準備が始まります。タンクや除梗機、圧搾機、プレス機などの設備の洗浄と確認、収穫を担う人員の確保、遠くから収穫に来る人々のための宿泊施設の準備など、ワイナリーが1年でいちばん賑やかで忙しくなるシーズンに向けてのカウントダウンが始まります。さあ、来月はいよいよ収穫です。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
-
前の記事
【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【7月】 2024.07.01
-
次の記事
【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【9月】 2024.09.03