【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【12月】
- 2025.12.01
- ワインのある景色
フランスの年末年始の過ごし方
年の瀬も近くなり、クリスマス、忘年会、新年会とイベント事が多くなる季節になりました。日本ではクリスマスは友人や恋人と、お正月は家族で過ごすイメージがありますが、フランスはその逆で、クリスマスは普段は離れて暮らしている家族や親戚が集まって自宅でディナーを共にするのが一般的です。生牡蠣やスモークサーモン、フォアグラやパテなどのオードブルから始まり、ローストチキンやローストビーフなどのメインを楽しんだ後はチーズ、デサートと続きます。家族でゆっくりと食事をしながら過ごす聖夜は1年のうちでとても大切なイベントに位置付けられています。
12月25日を過ぎると日本では一気にお正月モードに突入しますが、お正月という行事のないフランスでは年明けまでクリスマス飾りが街を彩り、大晦日には友人達と集まりカウントダウンパーティーを開いて賑やかに過ごすのが主流です。それぞれが好きなものを持ち寄って、食べて飲んで踊って年が明けるのを賑やかに待ち、24時を迎えた瞬間に「Bonne Année ! (ボナネ/あけましておめでとう)」と頬にチュッ!とビズをし合います。除夜の鐘と共に厳かな雰囲気の中で年を越す日本とは正反対の大晦日の景色です。
シャンパーニュがもたらす華やぎ
フランス同様、日本でもこの時期は自宅にお客様を招いたり招かれたりする機会が多くなる方もいらっしゃると思います。一緒に楽しむ人の顔を思い浮かべてワインを選ぶのは楽しいですが、好みがわからない時や「さて、何を飲もうかな?」「何を持参しようかな?」と悩むことはありませんか?そんな時、私はシャンパーニュを選ぶことにしています。銘柄はともかく、「シャンパーニュを持ってきたよ」と言うと「わぁ〜」「おぉ〜」という感嘆詩が必ずあがり、その場が盛り上がるからです。シャンパーニュの持つ華やかなイメージの成せる技です。
ご存知の通り、シャンパーニュはフランス・シャンパーニュ地方で瓶内2次発酵という製法で作られたスパークリングワインを指しています。その昔、歴代フランス国王の戴冠式がシャンパーニュ地方の首都ランスの大聖堂で執り行われており、その祝宴でシャンパーニュが振る舞われていたことに起因して、お祝い事にシャンパーニュが飲まれるようになったと言われています。
F1の表彰式や野球の優勝パーティーでシャンパーニュをかけ合うシャンパン・ファイト、新しい船が初めて着水する時にシャンパーニュのボトルを船体にぶつけてお祝いをする進水式など、晴れの舞台を華やかに彩るシャンパーニュ。ボトルの最後の1滴をグラスに注がれた人は1年以内に結婚するという言い伝えもフランスにはあります。
抜栓する音は祝砲の如く。キラキラと輝きながらひと筋の線を描いて立ち昇るきめ細かい泡と、口に含んだ時のクリーミーな味わいが気分を高揚させてくれます。かのナポレオンもシャンパーニュをこよなく愛していたとか。「シャンパーニュは勝った時には飲む資格があり、敗れた時には飲む必要がある」という名言を残しています。
日本のお正月にはお屠蘇と日本酒という素晴らしい祝い酒がありますが、シャンパーニュも万能選手で、山海の幸が詰まったおせち料理と幅広く合わせることができます。
1本ストックしておくと、我が家では必ず出番がやってくるシャンパーニュです。
新しい年が、皆様にとってシャンパーニュのようにキラキラと輝かしい年となりますことをお祈りしております。
2023年5月から、ブドウ畑と生産者の1年を追ったコラムの連載をしています。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)

・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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