ワインの欠陥 = 「蓼食う虫も好き好き」

ワインの欠陥 = 「蓼食う虫も好き好き」

 

 

ワインの欠陥は目新しいものではありませんが、それをめぐる議論は確かに変わりました。以前は欠点として認識されていた過剰な揮発酸(VA)、ブレタノマイセス(ブレット)、還元、マウス臭などは、今では消費者や専門家から受け入れられています。多くのワイン専門家と話をしてどの欠陥なら許容できるかを調べましたが、意見は実に様々でした。

 

欠陥に対する見方は様々

Jamie Goode博士が述べているように、ワインの最も一般的な欠陥は、「閾値を超えた」揮発性硫黄化合物やブレタノマイセス代謝物、揮発酸などです。「結局のところ、美学なのです。良いワインとは何か、悪いワインとは何かをどうやって決めるのでしょう?」Goodeは熟考します。Tribeca Wine MerchantsのセールスディレクターLauren McPhateは、欠陥は適度に優れていると信じており、「私は個人的にボルドーのわずかなブレット、またはブルネッロやローヌのある程度のVAは大好きですが、欠陥に対して特に敏感で否定的な人もいます。ほとんどのオーストラリア人はブレットを嫌っています。」と言います。McPhateは、VAやブレット、および酸化が果汁本来の性質を損なわない限り、ワインに深みを与える可能性があると見ています。

 

「ワインが全体的にうまく統合されていれば、少量のVA、還元、ブレットはOKです。支配的でなければ、いくらかの個性を与えてくれます。」とAmy Atwood Selectionsの創設者であるAmyは言います。Florez WinesのワインメーカーであるJames Jelksは、「欠陥」のボーダーラインをテロワール特定の妨げになるかどうかで判断します。「実際、ある欠陥によってスタイルが特徴づけられる有名なドメーヌもいます。ブルゴーニュ白の還元やバローロの微量なブレットを誰が気にしますか?」Jenny Lefcourtにとって、過剰なVAはワインを耐え難いものにしますが、豊かな果実味主体のワインに少量のVAが含まれていると、フレッシュ感が増す場合もあります。インポーターのZev Rovineは同意します。「VAは全てのワインに存在します。ストラクチャーを作る重要な部分であり、特に温暖エリアの赤では、高いVAがプラスに働くこともあります。」しかし、遵守すべきガイドラインや数値基準がないため、白黒決めるのは簡単ではありません。「VAが0.7で目立つ場合もあれば、1.1で目立たない場合もあります。高いVAであってもワインとの相性が良く、溶け込んでいれば目立たないのです。」

 

Good Luck Wine Shop のオーナーAdam Vourvoulisは、明らかな欠陥の1つとしてコルク汚れを挙げ、VA、マウス臭などは醸造プロセスの副産物ですがコルク汚れは外部から発生していると指摘します。「醸造の副産物である欠陥はすべて、ある時点で誰かによって行われた(または行われなかった)決定に由来するので、コルク汚れをそれらと同じ欠陥に分類するのは違います。」Rovineは、ワインの欠陥の概念はそれを作る人々から得られた何千年もの集合知から来ており、この言葉を尊重しないことは無礼だと言います。「欠陥という言葉はソムリエ由来ではなく、ワイン造りに由来し、、酵母、バクテリアの研究に由来しているのです。」ワインメーカー視点から見ると、多くの場合欠陥は汚れた環境や細菌感染、および発酵を適切に監視していないことが原因だとRovineは言います。

 

共通見解「欠陥は主観的」

インタビューを受けたほとんどの専門家は、「欠陥」の概念はかなり主観的であることに賛同します。Goode博士は、コルク汚れの場合どのレベルであっても受け入れられないと述べていますが、その他の欠陥は単に好みの問題だとしています。「ユーカリに由来するシネオールはどうでしょう?オーストラリアの赤に見られる成分ですが、しばしば閾値を超えています。」しかし実際にワインのミント感が好きな人もいます。それを欠陥ととるか、テロワールの反映ととるか、答えは主観によるのです。博士はまた、場合によっては多少の「欠陥」がプラスに働く可能性があると感じています。「欠陥を見つけるように訓練された人は、それを感知するとすぐさま「欠陥」と指摘するので、実際にそれが興味深いワインであっても口にするのを拒みます」と言い、この見方を変えるべきだと主張します。 

 

欠陥を気にせず、受け入れる

「正直なところ、私はもう欠陥については考えていませんし、気にしていません」と、Margin Wineのオーナー兼ワインメーカーMegan Bellは言います。Bellは彼女のワインの消費者も欠陥の存在を気にしないと断言します。彼女のワインの一部には多少のブレットが見られますが、実際にはそれを検査することはありません。そして何よりも、彼女はブレットを防ぐようなことはしていません。Bellは、ある一つのワインに見られるブレットは、その畑から来ていると信じています。なので、そのブレットはシンプルにテロワールの表れなのです。

 

私たち買い手側にとって、一回や二回といった短期的なレベルで欠陥を受け入れることは、生産者との堅実な関係を築くのに非常に重要です。「一本のボトルの後ろには、ワイン造りの仕事を愛する生産者がいることをしっかり認識することが大切です。」とAdamのパートナーであるKateは言い、例え失敗したヴィンテージの後であっても、買い手としては変わらずにその生産者のワインを買い続けるというサポート精神を謳います。Rovineは、この忠誠心を「造り手を買うこと」だと考えています。造り手を買うというのは、栽培技術、醸造方法、造り手の哲学といったすべてを買うことを意味します。欠陥のあるヴィンテージやキュヴェをサポートするだけでなく、ラインナップの全てを購入することも同義だとしています。彼は「最も安いものや、売りやすいものを買うだけでは、良い輸入パートナーとは言えません」と言います。Adamは「ワインメーカーになるにつれて、私は欠陥に寛容になりました」と言います。「例えば誰かが突然このワインにはネズミ臭があると言い、誰もそのヴィンテージのワインを買わなくなってしまったら、その造り手は生計を失うかもしれません。」と述べ、良識ある買い手はその背後にいる生産者を無視してワインを選ぶべきではない、とRovineに同意します。

 

好みの問題

今回の話の教訓は、すべて主観的であるということです。Jelksは「テイスティングの基準は人によって様々です。ある人にとって驚くほどハッとするようなワインは、他の人にとっては全く受け入れられないかもしれません。」と言います。欠陥がワインに悪影響を与える可能性があることを認めつつも、飲み手の許容度によっては美のしるしとして受け入れられる場合もあるとしています。ライターのTerry Theiseも小さな欠陥は一般的に受け入れられると同意します。また、ある人の「微量な」は別の人の「耐えられない」になりうると説明し、主観的な閾値の概念を繰り返します。最後にRovineの言葉で締めくくりましょう。「欠陥が欠陥であることを単に無視するのは難しいです。それを無視することも間違っていると思います。しかし、閾値というのは非常に主観的です。何か欠陥があったとして、それでもそのワインを好きになることは何ら問題ではないのです。」

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/11/the-shortcomings-of-technically-perfect-wine

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