イタリアで巻き起こるモンテプルチアーノ戦争

イタリアで巻き起こるモンテプルチアーノ戦争

モンテプルチアーノがモンテプルチアーノでなくなるのはどのような時でしょうか?
その答えは、どうやらアブルッツォ州産ではない時のようです。


イタリアでモンテプルチアーノにまつわる戦争が勃発しました。

 

最近、イタリア農業省は” (Cordisco)”というシノニムを国立ブドウ品種登録簿に再登録する要請を受け入れました。この法令は、「アブルッツォ州内で生産されるワインにのみ“”という呼称を使用できる」というアブルッツォワイン協会の主張を支持するものであるようです。

 

これは、歴史的にモンテプルチアーノが栽培され、現在も約2,200haの畑があるマルケ州のような地域でも使用が禁止されることを意味します。アブルッツォ州当局によれば、コルディスコというシノニムをワインのラベルやワイナリーの広告、マーケティング資料にも使用することは、アブルッツォの象徴的なものに言及することなく、他の州の生産者が「このブドウから作られたワインを正確に示すこと」を可能にする、と言います。

 

ですが、この決定は全ての人に喜ばれているわけではありません。イタリアやイタリア外の消費者は“コルディスコ”という用語に馴染みがなく、その起源は中世まで遡りますが、今では一般的に使用されることもありません。

 

Velenosiなどのマルケ州の生産者が指摘するように、モンテプルチアーノとサンジョヴェーゼが異なるブドウ品種であると判明したのは1853年のブドウ品種学の研究によるものでした。その年になって初めてこれらのブドウは別物だとみなされたのです。それ以来、“プリマティッチオ (Primaticcio)”はサンジョヴェーゼ(トスカーナ原産のブドウは“プリマ”、つまり早く熟した)を指し、“コルディスコ”はモンテプルチアーノを指すようになりました。

 

他地域の隣人にとっては厳しいものですが、アブルッツォワイン協会の会長であるAlessandro Nicodemiはこの結果に満足しています。「このシノニムを適用することで、ラベル表示やワイン広告におけるPDO (ECの地理的表示制度)の不正使用や侵害を避けながら、最終消費者を混乱させているラベル表記の新しい法令と正しい情報の原則に従うことができるようになるでしょう」

 

攻撃的な立場

モンテプルチアーノのシノニムとしての“コルディスコ”という用語は、かつてイタリア国立ブドウ品種登録簿に存在していましたが、1980年代末に紙の登録簿からデジタル版に移行する際に消滅しました。カラブリアとシチリアにおけるカラブレーゼ (Calabrese)とそのシノニムであるネロ・ダーヴォラ (Nero d’Avola)の場合と同様、コルディスコはモンテプルチアーノをベースとするワインの呼称に再び使用されようとしています。そして、シノニムであったネロ・ダーヴォラの方が今ではブドウの“適切”な名前であるカラブレーゼよりも知られています。

 

「我々は法令の詳細を掘り下げているところです」とマルケワイン研究所(IMT)のディレクターであるMichele Bernettiは言います。「この法令には少し驚かされました。イタリアのブドウ品種には何百ものシノニムが登録されていますが、それらを使用するかどうかは生産者の裁量に任されているからです。私たちは、新しい”Testo Unico” (地方自治法典)は、消費者に真実と明確な情報を与える必要があり、その中にワインの原料であるブドウの名前も含まれていると確信しています。」

 

Michele Bernettiはさらにこう続けます。
「コルディスコというシノニムは何百年も前に使われている古いものであり、今回の法令は消費者にとって有益な解決策だとは考えていません。アブルッツォワイン協会が使用している口調は、攻撃的で、他の地域の同業者に対して不適切であり、さらに誤解を招きかねません。誰も知らないコルディスコのような代名詞で自分たちの国を救おうとしている人達の勝利至上主義的な口調を思うと、笑いがこみ上げます。」

 

確かなことは、アブルッツォの生産者でさえ、チェラスオーロ・ダブルッツォ※のような、モンテプルチアーノ種をベースとする別のDOCワインにこのシノニムを使った事がないという事です。
(※注釈:チェラスオーロ・ダブルッツォはモンテプルチアーノで造られるロゼワインのDOC。2010年に設立されたばかりで、以前はモンテプルチアーノ・ダブルッツォDOCに属していた)

 

ですが、今回の農務省の法令はAlessandro Nicodemiが率いるアブルッツォワイン協会にとって初の成功です。そして彼は現在、同地域の異なるワイン生産グループの統合にも取り組んでいます。ここ数週間で、アブルッツォ内でモンテプルチアーノ種から生産される唯一のDOCG、・モンテプルチアーノ・ダブルッツォについて、その生産・プロモーションを担当するコッリーネ・テラマーネ協会もアブルッツォワイン協会に編入されました。

 

「我々はこれが正しい方向だと強く信じています」
コッリーネ・テラマーネの元リーダー、Enrico Cerulli Irelliはこのように話します。
「そして、この選択は先見の明があったと将来的に証明されるでしょう。過去2年間で50%増の60万本以上のボトルが生産され、172haのブドウ畑がある私たちのモンテプルチアーノ・ダブルッツォは、アドリア海とグラン・サッソ(山)、モンティ・デッラ・ラーガ(山脈)の壮大な山々に挟まれたユニークなテロワールを表現する存在となっています。アブルッツォワイン協会への加盟は、この地域の生産者の団結とビジョンの共有を証明するものです」

 

この比較的ニッチな生産が、遥かに有名で、平均的には収益が少ないモンテプルチアーノ・ダブルッツォの生産に加わる事となります。年間1億本以上生産されるモンテプルチアーノ・ダブルッツォは、イタリアのスーパーマーケットで販売されている最も人気のあるワインの1つであり、海外で最も認知されているイタリアのアペラシオンの1つでもあります。

 

少なくとも、この戦争が始まる前はそうでした。

 

 

引用元: Montepulciano War Erupts in Italy
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