ワインボキャブラ天国【第117回】「リュー・ディ(畑の小区画)」 英:named place 仏:lieu-dit
- 2022.03.06
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「リュー・ディ(畑の小区画)」
英:named place
仏:lieu-dit
目次
『リュー・ディ』とは何のこと?
今回のテーマは『Lieu-Dit (リュー・ディ)』。
上に書いたように要するにブドウ畑の「区画」で、名前が付いたものという意味で、最近非常に良く使われるようになった言葉ですね。ちなみにフランス語ではlieuは「場所」という意味、ditは「言う」という動詞の変化した形ですので、ちょっと意訳して「名前の付けられた場所」という意味合いになります。英語ではもうそのまま「Named Place」となりますね。
この「リュー・ディ=畑名」が表記されているワインがあるのは例えばフランスのブルゴーニュ地方、シャンパーニュ、アルザス、そして勿論世界各国の銘醸地と言われるエリア。その中でも一番良く知られていて分かりやすいのはブルゴーニュでしょうか。
例えばあの有名な『ロマネ・コンティ』はまさにこのリュー・ディ。
『ロマネ・コンティ』と名付けられた一つの小区画から収穫されたブドウだけで仕込まれたワインなので、その場所の名前を名乗っている=リュー・ディ、ということになります。
その他の表記法としては、『ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ 〇〇』のように村名⇒格付⇒畑名、という形で表記される場合もあります。
「区画名」=所有者名、ではありません
さて、ここで当然浮かんでくるのが、何故畑に細かく名前を付けて区別しているの?という疑問ですよね。
まず前提としまして、この「区画名」は「〇〇さんの畑」と言うように所有者を示すものではありません。通常一つの区画(非常に面積の小さい区画から大きい区画までいろいろあります)は、複数の生産者によって分割して所有されているからです。畑の畦(あぜ)を一つ挟んで隣の列は別の生産者が持っている…というのもごく当たり前のことです。
一方で、一つの区画をひとりの生産者が所有している場合もあります。その場合は「モノポール(単独所有)」と呼ばれます。例えば先程例に出した『ロマネ・コンティ』は、『ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ』が単独で所有するモノポールです。
リュー・ディ=区画まで細分化してキャラクター差を区別することこそが、ワインの面白さと奥深さ!
リュー・ディ=区画名までが細かく定められているのは、細い道1本隔てれば土の組成や日当たりなどが変化し、ワインのキャラクターにも差異が生まれるから。最上級のワインが生まれる限られた場所について緻密に定めていく姿勢、さすが伝統の銘醸地として信頼を気付き上げてきただけはあります。
ですがその一方で「有名区画で、放っておいても売れるんだから」ということで畑作業に手抜きをし、名前だけは特級・1級が冠されていても劣悪な品質のワインをリリースする心無い生産者もいます。
例えば上の画像はあるシャンパーニュの単一畑なのですが、美しく花が咲き緑の草が生き生きと茂る左側の区画に対し、右側は除草剤で「草1本も生えない、虫もいない」死んだような土壌になってしまっていました。この左右の区画、どちらが良いブドウが実かは一目瞭然ですよね。
(*ちなみに、左側の区画の所有者は『シャルトーニュ・タイエ』です。)
皆さんも、畑の名前が有名だからと言って、それだけで品質も担保されたものとは決して思わないでください。同じ村の同じ区画でも、ワインのクオリティには雲泥の差が発生しますから!
フィラディス取り扱いのブルゴーニュワインやシャンパーニュには、『リュー・ディ』表記がされているものの色々ありますので、興味を持たれたら是非畑名ごとでの飲み比べなどにチャレンジしてみて戴ければと思います。
区画毎のキャラクターの違い、生産者による違いが体感できると、ワイン法というものの存在意義が深く理解できるはずですよ!
それでは今回はこのへんにしておきましょう。
今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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