ワインボキャブラ天国【第127回】「パスリヤージュ」 英:raisining 仏:passerillage
- 2022.05.22
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「パスリヤージュ」
英:raisining 仏:passerillage (男性名詞 発音はそのまま「パスリヤージュ」)
目次
『パスリヤージュ』とは??
『パスリヤージュ』という言葉の由来はフランス語で「passer(=通過する、という意味)」ですので、ブドウをそのまま一定期間置いておく、という意味合いになります。
つまりブドウ樹に実った果実を収穫せずに放置しておくことで水分が失われるまで乾燥させることで果物が含む糖度を相対的に上昇させることです。ブドウは上の写真のように、樹に実ったまま干しブドウ状になっていき、その段階になって漸く収穫に至ります。長期間放置しておく必要があるため、この製法を行うには気候がある程度温暖且つ乾燥していることが必要になります。
干しブドウにして、どうするのか?
干しブドウになった果実も一定の水分=果汁を含んでいますので、それを搾り取ってワインを仕込むことは可能です。
一般的に100kgのブドウからは65~75L程のワインを仕込めるのに対し、パスリヤージュを実施した干しブドウからだと25L程しか造ることが出来ません。その分糖分・酸の凝縮度は非常に高いため、濃厚な極甘口且つ酸がしっかりバランを取っている上質なワインが仕上がります。
この「干し」の手法にはいろいろありまして、前述したように普通に樹に実ったまま乾燥させる場合もありますし、収穫したブドウを藁を敷いた上に広げて乾かす方法、日本の干し柿のようにぶら下げて乾燥させる手法もあります。
出典:Wikiwandというサイトから転載させて戴きました。
『パスリヤージュ』手法を使ったワインのあれこれ
先程の「藁干し」ワインの代表はフランスのジュラ地方、『ヴァン・ド・パイユ(藁ワイン)』ですね。
その他、北イタリア ヴェネト州を代表する銘酒『アマローネ』も陰干ししたブドウを使用して仕込むため、凝縮して濃厚な果実味、ビターチョコレートのような「苦甘い」テイストが特徴です。
その他、仏アルザス地方の「ヴァンダンジュ・タルディフ(遅摘み)」やドイツの「シュペートレーゼ(こちらも「遅摘み」)もパスリヤージュの一つと言えますね。
そして、甘口ワインとしてはもっとも有名なフランス ボルドー地方の「ソーテルヌ」。こちらの製法は通常「ボトリティス・シネレア菌(=貴腐菌)」というカビが付着し、果皮からの水分蒸発が促進されることでブドウを乾燥・凝縮させるものですが、この「貴腐菌」の発生が不足しているときなどはパスリヤージュによる果実を使用する場合もあります。
*「ソーテルヌ」の製法については以下にリンクを掲載したコラム『魅惑の甘口 デザートワイン』をご参照ください!
それでは今回はこのへんにしておきましょう。今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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