ワインボキャブラ天国【第111回】「マロラクティック発酵」 英：malolactic fermentation 仏：fermentation malolactique

連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです！

取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに！！

ということで今回ご紹介する言葉は・・・

「マロラクティック発酵」
英：malolactic fermentation
仏：fermentation malolactique (発音は「フェルモンタシオン・マロラクティーク」）

「マロラクティック発酵」とは？

「マロラクティック発酵」とはどんな発酵かをざっくりと言いますと・・・ワイン中に含まれている有機酸のひとつで、シャキッとフレッシュな味わいの要素となっている「リンゴ酸＝Malic Acid マリック・アシッド」が、乳酸菌の作用によって「乳酸＝Lactic Acid ラクティック・アシッド」と炭酸ガスに変化する発酵のことです。
マリック・アシッドとラクティック・アシッドの頭の部分を取って合わせて「マロ・ラクティック発酵」と呼びます。

皆さんも何となく想像できるかと思いますが、シャキッとした味わいでやや強い酸味を感じさせるリンゴ酸を乳酸化することで口当たりのタッチが柔らか・まろやかさを獲得します。昔僕が教わっていたワインスクールでは「まろやかチック発酵」なんて言っていた年配のオジサン講師もいましたが（でも今の僕くらいの年だと思います）、僕は一応「そういうことを言っていた人がいる」という事実だけ共有しておこうかと思います。

「マロラクティック発酵」を起こすには

「リンゴ酸」がブドウ果汁由来で含まれているのと同様に、「乳酸」もワイン醸造の過程で増殖した乳酸菌が生み出していくものです。乳酸菌がリンゴ酸との反応によってエネルギーを獲得して増殖を繰り返していくのがマロラクティック発酵。つまり自然にも発生しうる反応なのですが、現在の醸造技術ではアルコール発酵が終わった段階で培養した乳酸菌（粉末状のものなど）を加えることで発酵を促しています。

「マロラクティック発酵」の効果と、どんなワインに対して行われるのか

マロラクティック発酵は、赤ワイン、白ワインそしてスパークリングワインの一部と多くのワインに適用される製造工程です。
リンゴ酸と乳酸の反応により酸度が低くなるためワインの味わいをまろやかに、穏やかにまとめることができます。また、乳酸に由来する香味も加えることが出来るため、ワインの複雑性を強化することにも繋がります。

ただ一方でマロラクティック発酵が適正・適度に行われないと、余計な雑味が生まれて味わいが損なわれたり、乳酸の影響でワインに濁りが発生してしまうなどもマイナス効果も。SO2（亜硫酸塩＝酸化防止剤）を加えると乳酸菌が不活性化するのでマロラクティック発酵の発動を止めることもできます。

ということで「マロラクティック発酵」についてのご紹介はこのへんで。
今回は「発酵」シリーズでもちょっとややこしい内容でしたかね・・・正直、面白くなかったかもしれません。ですが次もまだまだワインの製造工程の言葉が続くのです（eからfの項、なぜか多いんですよね。ご容赦ください！）。次回のテーマは「filtration=フィルター濾過」、もうちょっとだけお付き合いいただけると嬉しいです。

今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました！

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