【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【3月】
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3月。寒かった冬に終わりを告げ、日付を重ねるごとに少しずつ春の訪れを感じ始める頃、眠りについていたブドウ木達もいよいよ目覚め始めます。ブドウ木の目覚めは一目瞭然。涙を流し始めるのです。
3月も後半となり地中の温度が高くなってくると、ブドウ木達は地中の水分を吸収し始め、樹液を循環させ始めます。そして冬の間に剪定した枝先からポトリポトリと涙のように樹液を落とし始め、シーズンの始まりを告げるのです。この樹液は「Pleurs プルール(ブドウの涙)」と呼ばれ、寒々とした畑でじっと耐えてきたブドウ木が涙を流す姿に感動を覚えますが、ヴィニュロン達にとっては「さぁ、始まったぞ!」と気合の入る出来事であり、畑仕事が忙しくなっていく合図でもあるのです。
ブルゴーニュやボルドーをはじめ、ブドウが垣根のように仕立てられている畑では木々に沿って張られたワイヤーに、樹液がまわって柔軟性を帯びた枝をバランスよく誘引していく作業が始まります。冬の寒さからブドウ木を守るために根元に土を集めたところでは、元に戻す作業も行わなければなりません。
さあ、いよいよ新しいシーズンの始まり!ブドウが芽吹き始める日まであと僅かです。
イースター(復活祭)
この時期、街中でも春の訪れを感じさせてくれるものがあります。それは、ショーウインドウを飾る数々の卵です。
イースターを前に、お菓子屋さんやパン屋さん、スーパーやデパートに色とりどりにデコレーションされた卵や、ひよこ、ウサギ、羊といった動物たちのディスプレイで彩られます。そして、それらをかたどった可愛らしいチョコレートがあちらこちらで販売され始めると、人々は春の訪れを実感します。
イエス・キリストの復活を祝うイースター(復活祭)は「春分の日以降の最初の満月から一番目の日曜日」と決められていて、キリスト教圏ではクリスマスと同じくらい、いえ、それ以上に大切な日とされており、イースターの翌日を祝日としている国も多く、フランスでも「Lundi de Pâques(復活祭の月曜日)」(イースターはフランスではパックといいます)という祝日です。子どもや学生達はこの日を挟んで2週間のイースター休暇に入り、当日は家族や親戚たちが集まって賑やかに食卓を囲みます。
イースターの料理といえば、まずは卵料理。茹でた卵にマヨネーズというシンプルな「ウッフ・マヨネーズ」、ゆで卵を刻んで散らしたミモザサラダやキッシュは定番中の定番。卵料理で無病息災を祈ります。メインには復活の象徴とされるラム肉を使ったお料理を頂きます。ニンニクやハーブで味付けして表面をカリッと焼き上げたローストラムや、野菜とトマトでお肉が柔らかくなるまで煮込んだナヴァランなどが代表的。ワインがすすむのは言うまでもありません。2024年のイースターは3月31日。イースターの食卓をちょっと真似してみるのも楽しいかもしれませんね。
冬時間から夏時間へ
ヨーロッパでは3月に冬時間から夏時間に変わります。3月の最終日曜日の午前1時に時間を1時間進ませるのですが、これをつい忘れてしまうこともあり、映画の上映時間に間に合わなかったり、乗るつもりだった電車に乗り遅れたりして「あっ、今日から夏時間だった!」と気付くこともよくあります。でも、生まれた時からその習慣の中で暮らしているヨーロッパの人々も意外と忘れる人がいて、「あ~、分かる!」と共感してくれる人も多いのですよ。フランスは10月の終わりまで、日本との時差が7時間となります。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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