ワインのある景色―5月 (25)
- 2026.05.01
- ワインのある景色
地中海に面した小さな公国、モナコ
地中海に面した小さな公国、モナコ。毎年5月の終わり、人口3万人余りのこの小国に、煌びやかな週末を過ごすために世界中から人々が集まります。F1モナコグランプリの開催です。
F1という究極のスピード競技において、サーキットではなく市街地の幅の狭い公道を走るモナコグランプリは特別で、ヘアピンカーブ、短いストレート、そして急勾配の坂道を攻略するにはマシンの性能以上にドライバーの技量と集中力、そして度胸が問われます。私も車を走らせたことがありますが、ドライブするには景色が良くて最高のコースですが、時速200km以上で走行することを考えるとかなりの難関コース。「モナコで1勝するということは、他のレースで3勝するほどの価値がある」と言われているほど、ドライバーにとっても特別なレースなのです。
そしてもう1つ、モナコグランプリを特別なものにしているのはそのラグジュアリー感。レースを観戦するために停泊している豪華なクルーザーやヨット、立ち並ぶマンションやホテルのバルコニーでグラスを傾ける人々、街中に優雅に佇むカジノ・ド・モンテカルロが華やかさを演出します。開催中は様々なパーティーが開かれ、王族をはじめ、世界屈指の大富豪やハリウッド・セレブの姿も見られ、モータースポーツ界のアイコニック的なレースとなっています。
表彰台を彩るシャンパーニュ
レースの後、表彰台に立つドライバーが勝利の証として掲げるのは祝福の象徴でもあるシャンパーニュです。「ポーン」という音を響かせてコルクを抜き、ボトルを振りながらシャンパーニュを掛け合うお決まりのシーン。実はコレ、偶然の出来事から始まったそうで、その昔、勝者が手にしていたシャンパーニュのコルクが熱気で自然に飛んでしまい、中身が観客に降り注いでしまったことがきっかけとか。笑いと歓声が沸き起こり、祝福の場が一瞬にして盛りあがったこの出来事が波及して恒例になっていったとのこと。その1件がなければ、もしかしたら表彰台では乾杯するだけだったかもしれませんね。
この儀式を最初に彩ったのは、シャンパーニュの父ドン・ペリニヨンの名を自社の最高級アイテムに冠しているモエ・エ・シャンドン(Moet et Chandon)。長きにわたってF1公式シャンパーニュとして、多くの伝説と共に泡を振り撒いてきました。そして、2000年からは赤いリボンのG.H.マム(G.H. Mumm)が15年近く支え、その後、スパークリングワインのシャンドン(Chandon)、F1のマシンと同じカーボンファイバー製のボトルカバーが印象的だったシャンパーニュ・カーボン(Carbon)、イタリアのスパークリング、フェッラーリ・トレンティーノ(Ferrari Trentino)と変移し、今年2025年からは再びモエ・エ・シャンドンが栄光の瞬間を演出しています。
モナコの気品
そして、モナコの魅力を演出するのはスピードとシャンパーニュだけではありません。1956年、ハリウッドスターから当時のモナコ公レーニエ3世へ嫁いだ、今は亡きレジェンド、グレース・ケリー公妃の存在が大きく影響し、永遠のプリンセスとして世界中の人々の心に残り続けています。公妃の愛した宮殿、石畳、花々が溢れる街中、それらすべてが街に気品とぬくもりをもたらしています。
優雅な街中に轟くF1マシンのエンジン音、人々の歓声、乾杯するグラスの音とグラスの中で弾ける泡の音。他のサーキットにはないプレステージを誇っている5月のワインのある景色 in モナコです。
2023年5月から、「定期ワインコース」のお客様にお届けする冊子「エフスク」にコラムを連載しています。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)

・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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