ワインのある景色―3月 (23)
- 2026.03.01
- ワインのある景色
モルドバ共和国
先日、モルドバ大使館主催のワインイベントのお手伝いをさせて頂きました。数年前まではその国名も位置も漠然としか知らなかったモルドバ共和国。ウクライナとルーマニアに挟まれた小国ですが、ワイン生産の歴史は5000年前にも遡り、ヨーロッパ最古のワイン産地の一つともいわれています。仕事の合間にテイスティングもしましたが、驚いたのはその土着品種の多さで、知らないブドウ品種がたくさん。黒海に近い温暖な気候と肥沃で多様な土壌がブドウ栽培に適し、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどの国際品種はもちろんのこと、様々な品種のワインが造られており、国を代表する産業となっています。地下セラーの全長が世界一としてギネスブックに登録されているワイナリーもあるそうで、地下85メートルにあるそのセラーの全長は200キロメートル以上にも及ぶとのこと!例えれば、東京から静岡の先までもの距離になリますので、その規模の大きさに驚かされます。
伺った話によると、旧ソ連時代、モルドバはソ連最大のワイン産地で、多くのワインが国内で消費されていたとのこと。ソ連崩壊後に独立したモルドバではワイン産業がますます発展したものの、政治的な緊張が影響し、市場は国内とロシアにとどまることなく、EU、アメリカ、アジアへと国際市場に現在進行形で広がりつつあります。まだまだ日本では認知度は低いですが、その味わい、品質の高さ、コストパフォーマンスの良さは注目すべきものがあると思いました。
もう一つ驚いたのは、モルドバでは家庭消費用のワインの生産が認められていて、多くの家庭がブドウ畑を持ち、自ら収穫したブドウで自家製ワインを造っているということです。先祖代々受け継がれてきたレシピで造られる自家製ワインは、日々の食事にはもちろんのこと、友人をもてなす時やお祝い事には欠かせないもので、自慢のワインを持ち寄って集まることも多いそうです。モルドバの人々の生活に根ざし、地域社会の絆を強めるための重要な役割も果たしている自家製ワインは、モルドバの文化ともいえるのかもしれません。
ワインのある景色、東欧から
だいぶ昔の話ですが、友人の営む酒販店を訪れた際に「飲んだことのないワインが欲しい」とリクエストをしたら、ブルガリアのワインをお勧めされたことがありました。ブルガリアといえばヨーグルトのイメージしかなかったので、ワインが造られていることに驚いたことと、そのワインがとても飲みやすかったことを覚えています。ワインの世界において、伝統的なワイン生産国といえばフランスやイタリア、スペインが主流ですが、モルドバをはじめ、ブルガリアやルーマニア、そしてモルドバと並ぶ世界最古のワイン生産国ジョージアなど東欧諸国のワインも近年存在感を高めてきて、新たな発見を求める人々の興味心をくすぐっています。
東欧出身の力士が自国の郷土料理とワインを紹介している番組を見たことがあります。鬼の形相で取り組んでいる場所中とは別人のような笑みたっぷりの穏やかな語り。聞いたことのないお料理と飲んだことのないワインにとても心惹かれ、東欧の人々にとってのワインというものを知り、またひとつ、「ワインのある景色」に触れたような気持ちになりました。
2023年5月から、「定期ワインコース」のお客様にお届けする冊子「エフスク」にコラムを連載しています。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)

・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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