【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【10月】
このコラムではブドウ畑と生産者の1年に寄り添いながら、ワインのある様々な景色をお伝えしていければと思っています。
静寂に包まれるブドウ畑
10月。1ヶ月前は収穫であんなに賑やかだったブドウ畑は、畑巡りをする観光客を時折見かけるくらいで静寂に包まれています。元気よく青々と繁っていたブドウの葉は見渡す限り黄葉し、その陰に隠れている忘れた頃に色付いたブドウを鳥達が美味しそうについばんでいます。なだらかな丘陵地帯に広がるブルゴーニュの畑が、この地の県名でもある「Côte d’ Or コート・ドール(=黄金丘陵)」となる季節がやってきました。
東向きに広がる畑を朝日が照らし始めると、丘陵全体が黄金色に輝き、世界最高峰のワインを数々生み出すこの地の神々しさに感動します。2000年の歴史があると言われているブルゴーニュワイン。長い歴史の中で畑の所有者が変わったり生産者が代替わりしても、その景色は昔も今も変わらず、そしてこの先も変わることなく多くの人々を魅了し続けていくことでしょう。
この美しい景色がみられる間、畑仕事はしばらくお休み。そしてセラーでも先月収穫したブドウの発酵が終わり、熟成という眠りにつき始めると、生産者達の肩の荷も軽くなり、ホッとひと息つける日々が訪れます。あとはブドウの持つパワーを信じて見守るばかり。
果たして2023年はどんなワインが生まれてくるのでしょうか?楽しみでなりません。
収穫祭
ワインの仕込みが一段落し、マルシェに秋の味覚のキノコが豊富に並びはじめる頃、フランス全土で収穫祭や食に関するイベントの開催が増えてきます。美味しい情報、美味しい体験が盛り沢山のイベントは大人気。多くの観光客で賑わうパリでもブドウの収穫祭が開催されます。パリにもブドウ畑があるのですよ。
パリにいくつかあるブドウ畑の中で最も有名なのは18区、その昔、ゴッホやルノワールなど多くの芸術家たちがアトリエを構えていたモンマルトルの丘にあります。パリを一望できるサクレ・クール寺院の裏手にあり、パリ市が管理しているその畑は面積にして1,556m2、その名も「Le Clos Montmartre ル・クロ・モンマルトル」という畑です。ガメイ(ボジョレー・ヌーヴォに使用されている品種)を主に、ピノ・ノワールやそのほか数種類のブドウが植えられていて、年間約1,000本のワインが生産されています。決して気取ったワインではなく、気軽に飲める軽やかな味わいのパリ産ワインです。
この畑の収穫を祝って、毎年10月にモンマルトルで収穫祭が開催されます。数日間にわたるこのお祭りにはフランス全土から多くの出店者が集まり、各地のワインや特産品を販売する屋台が並び大賑わい。もちろん、希少なクロ・モンマルトルのワインの試飲、販売もあり、ワインの売上はパリ市の収入となり、様々な社会活動に使われます。そして、お祭りのメインイベントは週末に行われるパレード。様々な団体が様々な伝統衣装に身を包み、約3時間かけて会場周辺を練り歩きます。とても食べ応え、見応えのあるイベント。そして、期間限定の貴重なパリでの体験になること間違いなしです。もし、10月のパリに行く機会があれば是非チェックしてみて下さい。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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