収穫の早さだけでヴィンテージを決めつけてはいけません
早い収穫のスタートは必ずしも暑いヴィンテージを意味するわけではありません。
ヴィンテージの話になると、私たちはすぐに結論に飛びつき、過程を鑑みずに判断してしまいがちです。
2020年のブルゴーニュ
Domaine d’Angervilleは、2003年に収穫を始めた8月25日に今年の収穫を終えました。
Comte Liger Belairは8月30日に、Domaine de Montilleは8月31日に収穫を終えました。
Fontaine Gagnardでは、8月20日に収穫が始まりましたが、これは2003年よりも11日も早いタイミングでした。
Pierre Moreyでは、ドメーヌとメゾンの全てのブドウが8月中にセラーに運び込まれたのは今年が初めてでした。
ブルゴーニュ全体における最初の収穫は8月12日でしたが、クレマン用のブドウと同じタイミングでマコンのFichetの収穫も始まりました。
かつてブルゴーニュでは開花から収穫まで100日を数え、人々はこれに基づいて休暇の計画を立ててきました。
しかし、Denis Bacheletによると、これは80年代のものだったことが明らかになってきています。
La Chablisienneによると、今年のブドウがセラーに運び込まれたのは開花中期から90日後の8月24日でした。
こうした早い収穫の鍵は、前年の冬にあります。霜のほとんどない暖かい冬で、ブドウ木には水分が蓄えられ、3月中旬までに萌芽しそうな状態でした。
この100日間の短縮は他にいくつかの理由が考えられます。
栽培者のブドウに対する理解と成熟度(糖度、酸度、pHなど)の分析能力が向上したことによって収穫日の決定力が著しく向上したことや、天気予報の精度が上がったことで収穫日の決定がしやすくなったことなどです。
生育期と収穫期
4月のブルゴーニュは平均よりも3.6℃高い気温でした。
シャブリでは3月下旬~5月上旬に霜との戦いが続き、William Fèvreでは霜対策の散水が9回行われました。
しかし、La Chablisienneは、多くの畑が乾燥していたおかげでシャブリの収量は全体で10〜15%しか減少しないと予想します。
その後5月下旬に涼しくなったものの、6月3日までにコートドールの少なくとも半分で開花が見られ、最も早い年の1つとして記録されました。
ブルゴーニュワイン委員会によると、ブドウの成長は過去25年間の平均より2週間早く、2019年より3週間早くなっています。
こうした状況で多くの生産者は今年を暑い年ではなく早熟な年だと主張します。
もちろん暑い日がなかったというわけではありません。
8月シャブリでは昨年の最高・最低気温をそれぞれ超えましたが、雨不足や高温でもブドウはそれほどストレスを受けませんでした。
雨が少なかったため病気も見られず、8月初旬の恵みの雨によって収量は保たれました。
生産者たちは皆口をそろえて、一部の過熟と日焼けを除いて、ブドウの品質は完璧だと言っています。
収量とブドウの出来
シャブリの収量は全体的に満足できるものでしたが、ブドウの出来はバラバラでした。
Château Grenouillesでは、同じ木からとったブドウ房の色が異なっていました。
William Fèvreは、片側は熟しもう片側は緑のままという房もありうると述べています。
シャブリ以南でも状況は複雑でした。
Taupenot Mermeでは、収穫を待つ5日の間で潜在アルコールに達した畑がありました。
一方、今年のブドウは果汁に対する果皮の割合が最も高く、区画や品種の熟度に大きなムラのある年でした。
Chambolle Musigny Combe d’OrveauやGevery Chambertin Bel Airなどの畑では6週間で収量が半減し15-20 hl/haとなりました。
一方Charmes ChambertinやMazoyères Chambertinを含むやや平坦な畑では収量は30-40hl/haとなりました。
暑さと水不足はシャルドネよりも繊細なピノ・ノワールに影響を及ぼすとDomminique Lafonは言います。
彼は通常樽を満たすのに330kgのブドウを必要としますが、今年は360kg必要でこれは平均すると25-30 hl / 程の低収量でした。
ジュヴレでは8月28~30日に雨が降ったため、Fourrierはいつ収穫したかによって収量が変わると言います。
雨の前は糖度が高いが、収量は20~22 hl / haと少なく、雨の後では糖度は低下するも収量は27~30 hl / haとなりました。
一方、シャルドネも簡単ではありません。8月初旬、Fontaine Gagnardはブドウ木の列の西側が枯れて乾燥しているのを見つけました。
ブドウは果肉が濃いものの果汁はほとんどなく果皮が厚かったのでひどい味でした。
Ferretは、雨が均等に降らなかったためプイィ・フュイセのような小さなAOCであっても非常に不均一な年だったと述べました。
セラーでは
Lafonは、白はフレッシュでバランスが取れており素晴らしい品質になると信じています。
赤は2005年を思い起こさせ、ややしぼんだ果実に13.5-14%のアルコール、pHはやや高めでした。
マセラシオンも2-3日短くし、2005年よりも穏やかな抽出だったため最終的には今年の品質の方が良くなるとみています。
William Fèvreは、酸度はかなり低く、pHは3.2-3.3でフレーバーはリッチで凝縮していると言い、Château de Beauregardは、果汁と果皮の成熟に差があったせいでpHが低く酸度も低いという異常な現象が起きたことを指摘した。
このフレッシュさによって2020年は2003年、2009年や2015年のスタイルとは異なった味わいとなった。
Fontaine Gagnardはマストの分析値は2017年に似ていたが、酒石酸が多かったので背筋の通ったワインになったと述べました。
まとめ
今年のワインが2003年に似ていると感じた生産者は一人もいませんでした。
収穫の早いヴィンテージだからといって、酷暑のヴィンテージだと安直に決めつけてはいけません。
2020年の収穫が早かったのは、主にブドウの生育期が早く始まったためであり、他の結論に飛びつくべきではないのです。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/10/early-burgundy-vintage-confounds-expectations
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