ブルゴーニュの次のグラン・クリュを探す

ブルゴーニュの次のグラン・クリュを探す

気温上昇の影響を受け、ブルゴーニュのグラン・クリュは年々暑くなっています。さて、ここでかつて無視されていたオート・コート地区が本領を発揮するでしょうか?


ブルゴーニュの名高いグラン・クリュは、長い間、ブドウ栽培の王座に単独で座ってきました。

 

才能あるワインメーカー、長年の遺産、そして何よりも、比類なき神聖な栽培地が、これらのワインを世界中のワインリストの頂点に押し上げ続けてきました。しかし、偉大な名声には激しい競争がつきものであり、時には同じ産地内でさえも競争があるほどです。今日、ブルゴーニュで最もエキサイティングで先進的なブドウ栽培者の多くは、グラン・クリュの中ではなく、グラン・クリュ外の見過ごされがちなエリアでブドウ栽培を行っています。

 

このシナリオには様々な事情が絡んでいます。それは、グラン・クリュが現在完全に制限されているーつまり、土地の拡張が認められていない事に加え、畑の凄まじい価格上昇により、多くの若いワインメーカー、特に家族が引き継いできた遺産を持たないワインメーカーは、この尊敬すべきエリアに近づくことすらできないという点にあります。さらに、地球温暖化によって世界有数のブドウ栽培地域が揺らいでいる中、これらの至高の地は何を意味するでしょうか。少なくとも我々が生きている間は、グラン・クリュは常に名誉あるものとして扱われ続けるでしょうが、永遠に世界のブドウ栽培の頂点に立ち続ける事はできるのでしょうか?

 

ブルゴーニュのオート・コートに目を向けましょう。ここは、名高いコート・ドールの外側に位置し、コート・ド・ニュイの裏側とボーヌの西側に広がる広大な畑です。最近まで、これらの見晴らしの良い畑は、コート・ドールをベースとした畑に比べ、かなり劣ると考えられていました。しかし、ブルゴーニュの有名な黄金の斜面に連なるブドウ畑が暖かくなるにつれて、オート・コートの冷涼な気候がますます好まれるようになっています。そして重要なのは、この地域はワイン造りを夢見る人々にとって、まだ手ごろな価格が保たれているという点です。

 

2020年1月、Talloulah Dubourg  は  Hugo Mathuri  とともに  Domaine de Cassiopée  を設立しました。
「私たちがマランジュ地方に落ち着いたのは、この地がとてもエキサイティングだったからです。ここの風景は他の場所よりもずっと変化に富んでいて、森や畑、草原がたくさん残っています」
そう彼女は語りますが、決断の決め手となったのは、ブドウの成熟がコート・ドールに比べ遅く、より涼しいエリアという点でした。

 

お金次第

彼女はこう言います。「私たちが経験するリスクのある非常に暑い将来のヴィンテージに対し、(オート・コートは)適度なアルコール度数と高い酸度を持つブドウを収穫できる可能性があり、それは我々が特に好むところです」 さらに、お金が物をいいます。
「私たちがオート・コートに決めたもう一つの理由は、決して無視できないことですが、ブドウの価格が私たちのようにワイン生産者の子供ではない若者でも手が届く価格ということです」

 

2019年後半にオート・コートに3.4haの畑を購入した  Chantrêves  の栗山朋子氏と  Guillaume Bott  のケースも同様です。「私たちの区画は標高 400~470m に位置し、長いハングタイムと長い成熟期間の恩恵を受けます。この区画の購入は見逃すことの出来ない機会でした」と栗山氏は話します。地球温暖化があらゆるブドウ栽培地域に影響を与え続ける中、冷涼な気候のこの畑は、身の丈にあった深みのあるワインを生み出す大きな可能性を秘めていると彼女は付け加えます。

 

さて、ここで1つ質問が浮かびます。――テロワールを重視する新進気鋭のワインメーカーがグラン・クリュから締め出されている今、オート・コートでグラン・クリュに匹敵するような品質のワインは造られているのでしょうか?

 

この質問について、自信満々のワインメーカーもいます。「勿論です」と話すのは、ムロワジー出身でオート・コートでワイン造りを行う  Agnès Paquet  です。
「テロワールはコート・ドールと同様にリッチで多様です。この地は20年前はブドウが完全に熟すのに苦労しましたが、今日では温暖化の影響で果実の成熟度は完璧です。さらに、フレッシュさを残し、素晴らしくバランスの取れたワインを生み出すことも可能です」
彼女は、品質はグラン・クリュとまではいきませんが、非常に高品質であることは間違いないと話します。

 

Amélie Berthaut  は、Paquet  と同様、1970年代に祖父がオート・コートに植えたブドウ樹を、最近になって自身のドメーヌで栽培する機会がありました。しかし彼女はまだグラン・クリュに比肩するという点は確信していません。
「オート・コートにはとても美しいテロワールがありますが、 “グラン・クリュの品質” というのは少し誇張されていると思います。地球温暖化の中で、オート・コートは将来性のあるテロワールだと強く信じていますが、グラン・クリュと比較されるのは・・・ちょっと違うと思います」

 

品質への疑問

前述の質問に対し、そう簡単には答えられないと言う人もいます。

 

「オート・コートとコート・ドールは地質の成り立ちが大きく異なるため、この質問に答えるのは簡単ではありません。そのため、色々な不確定要素がありますが、温暖化という要因だけではオート・コートがグラン・クリュにならないことは確かです」 Chantrêves  の栗山氏は、オート・コートのポテンシャルの大きさに興味と期待を持つことを明言しますが、比較についてはこのように話します。

 

Dubourg  にとっては、グラン・クリュとオート・コートの比較にはあまり興味がないようで、それぞれのアペラシオンにはそれぞれの特徴と歴史があると言います。
「マランジュでもオート・コートであっても、グラン・クリュを真似するのが目的ではありません。私たちの醸造は100%区画単位なので、グラン・クリュを造るのと同じように細心の注意を払ってワインを造る事を心がけています」
Dubourg  はアペラシオンどうこうではなく、テロワール、土壌、気候を際立たせることが何よりの使命であると述べています。

 

Becky Wasserman & Co  の共同ディレクターである  Paul Wasserman  は、各アペラシオンはその地位に相応しいと認めています。
「ブルゴーニュのアペラシオンの階層は、偉大な遺伝子やインスピレーションに満ちた栽培やワイン醸造を含む公平な競争の場において、依然として有効であり極めて正確です」

 

しかし、オート・コートからのワインで、(コート・ドールの)ヴィラージュレベルのワインに匹敵するワインがある事は認めています。しかし、最上のプルミエ・クリュに比肩するオート・コートのワインには出会ったことがないし、グラン・クリュと同じ土俵に立てるワインは「絶対にない」と述べています。

 

「このヒエラルキーには物理的な現実があるのです。プルミエ・クリュとグラン・クリュは斜面の特定の場所にあり、日当たりや気候が限定的なため、その結果、特定のテクスチャーを持つワインになります。より深みがあり、複雑で、余韻が長く、熟成に適しています。コート・ドールの地質は著名な地質学者  Francoise Vannier  氏の研究によると、オート・コートよりも遥かに複雑であることが分かっています」

 

しかし、醸造の要素も見逃せません。
「自然派ワインの動きからヒントを得た比較的新しい生産者達が、多くの消費者にとってクラシックなワインよりも魅力的に映るワインを造っています。つまり、抽出が少なく、亜硫酸が少ないかゼロ、新樽率が低いか全く使われていないワインです」とWasserman  は説明します。

 

新参者の多くは、オート・コートのような控えめなアペラシオンの畑やブドウしか買えませんが、こうしたスタイルのワインのファンが、幾つかのグラン・クリュよりもこの地域に注目するのは理にかなっています。

 

優雅な熟成

「しかし、これらのクラシックではないワインを造っているセラーでも、ヒエラルキーの階層の幾つかを味わう事が出来ます」
そう  Wasserman  は話し、例として  Chantrêves  を挙げます。(このドメーヌの  Nuits-Saint-Georges Premierer Cru Les Damodes  は、彼らの Hautes-Côtes のワインよりも深みがある点も指摘します)。しかし、もし  Chantrêves  の全ラインナップを提案されたら、Wasserman  は  Damodes  よりも、よりフレッシュでクランチー、若いうちから飲みやすい  Hautes-Côtes  (もしくは他の控えめなアペラシオン)を選ぶだろう、と言います。
「ただ、もし10, 20, 30年先に飲むという事であれば  Damodes  を選びます。そして、もし  Musigny  も造られていたら、間違いなくそちらに手を伸ばすでしょう」

 

多くの人にとって、過去からの遺産に敬意を払い、各エリアのユニークな点を尊重することは重要です。

 

「グラン・クリュは今後もグラン・クリュとして存在するでしょう。さらにブルゴーニュの歴史と輝かしい名声は、特にグラン・クリュによってもたらされたと言えます」
Dubourg  はこう話します。そして  Berthaut  もそれに同意しブルゴーニュワインの格付けは変えるべきではないと述べています。しかし、気候の変化に伴い、今後も酸味が豊かでフレッシュなワインを造り続けるためには、標高の高い畑に植わるオート・コートのブドウ樹は今後も重要な役割を担っていくだろうと  Dubourg  は指摘します。「こういった畑は、今後はグラン・クリュよりもオート・コートでより容易に見つけられるようになるでしょう」

 

Wasserman  は、消費者にとってワインの熟成が重要であれば、アペラシオンの地質学的な側面を考慮することは必須であると指摘します。 しかし、その逆もしかりです。
「もし熟成が重要でないならば、人によってはグラン・クリュに匹敵するオート・コートのワインがあるかもしれません。ですが、オート・コートのワインがプルミエ・クリュやグラン・クリュと同じような熟成ポテンシャルを見せることはないでしょう」
また、この産地のワインが大きな需要、つまり高値で取引されることがあるとすれば、それはオート・コート地域だからなのか、ワイン生産者の力によるものなのかも、私たちはまだまだ分かっていません。

 

Paquet  は、この産地の将来と評判に自身を持っている1人です。
「このエリアの認知度は上がってきています。20年前、オート・コートのワインは全く売れませんでしたが、今では需要があると感じる事が出来ています」

 

では、ブルゴーニュのグラン・クリュ需要は?
現時点は何とも言えませんが、時が経てば分かるかもしれません。

 

 

引用元:  https://www.wine-searcher.com/m/2022/06/searching-for-burgundys-next-grands-crus

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