今月のおすすめワイン本【2019年12月】「ワインと戦争」
毎月第1月曜日のワインコラムは、読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本を毎月1冊ご紹介する『今月のおすすめワイン本』コーナーです。
今月のお薦め本は、10月にご紹介した『シャンパン歴史物語』の筆者による別の本。
『ワインと戦争 ヒトラーからワインを守った人々』
(ドン・クラドストラップ&ペティ・クラドストラップ著 村松 潔訳 飛鳥新社/ 税抜2,800円)』。
内容が内容だけに「面白かった」という言葉が不適切だということは重々承知の上で申し上げますが、『シャンパン歴史物語』以上にグイグイ読ませる内容・・・
もはや歴史本というより、活劇小説のようでした。
1940年代、ナチス政権の時代、シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ボルドー、ロワール・・・フランス国内のワイン銘醸地で行われたドイツ軍による収奪行為。
彼らが高額のワインを造る蔵元、例えばシャトー・ラフィットやサロンなどをターゲットにし、ワインを奪っていく様が、読んでいて辛くなるほどに克明に描かれています。
誰もが知る有名な蔵元・生産者の名前が次々に登場し、ワイン愛好家ならばその建物の様子までもが思い浮かべられるようなシャトーが舞台になるエピソードも沢山。
そして、ドイツ軍が蔵にやって来た時に生産者たちが「いかにワインを奪われないように隠すか」、の章にはとにかく興奮させられました。
カーヴへの入り口を大きな家具で塞いで隠す、壁を二重にしてその中にワインを隠す、ドイツ軍に献上するワインはボトルだけ立派にして一番低い品質のものを詰めて、などなど。
戦時中のエピソードに笑ってしまうなんて許されないとは知りつつも僕が思わず吹き出してしまったのは、シャトーの大きな池にワインを全部沈めて隠し・・・ところが、あることが起こりそれがドイツ軍にバレてしまう。
このシーンは是非、皆さんにも実際に読んで戴きたいですね。
この本はフランスのワイン生産者でその時代を体験した方々に取材をした話がベースになっており、決して100%公平・冷静な視点で書かれた本ではないのでその点はご承知おき戴きたいですがそれでもフランス人たちにとってのワインがただのお酒ではなく「魂そのもの」であることが、真摯に伝わってくる本だと思います。
魂を奪われまいとして闘う人々の姿に・・・・本当に、心を揺さぶられますよ。
10月にご紹介した「シャンパン歴史物語」同様、絶版のため書店では入手が難しそうですが、こちらもネットでは中古書籍が出回っています。
『ワインと戦争』で検索すると、その時に在庫のあるサイトが見つけられるはずですので、ご興味のある方は是非探してみてくださいね。
(*これを書いた時点では、Amazon他で中古書籍が結構出品されていました。)
次月も第一月曜日に、おすすめしたいワイン・お酒に関連した1冊をご紹介させて戴きます!
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