今月のおすすめワイン本【2022年12月】マリー・アントワネットは何を食べていたのか
- 2022.12.05
- 今月のおすすめワイン本
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本をご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ。
46冊目に選んだのは久しぶりに歴史に関する本。『マリー・アントワネットは何を食べていたのか ヴェルサイユの食卓と生活』(原書房 ピエール=イヴ・ボルペールさん著、ダコスタ吉村花子さん訳 税込定価2,200円)を選んでみました。
タイトルからも分かる通り、テーマはワインに留まらずフランス王室の食生活・料理メニュー、また会食の儀礼などについても詳細に触れられている1冊。フランス文化に興味のある方でしたら、絶対に楽しめますよ!
目次
「パンが無いなら…」は、そもそもマリー・アントワネットの言葉ではなかった
「マリー・アントワネット」はフランス国王ルイ16世の王妃で、オーストリアとフランスの政治的同盟のためルイ16世へ嫁ぎましたが、フランス革命の中38歳にして処刑されました。我々日本人にも「ヴェルサイユのばら」や歌劇などで知られる存在ですね。
では、「マリー・アントワネット」の名前を聞いてどんなイメージがまず思い浮かぶでしょう?
なんとなく「ワガママなお姫様」、という印象を持っている方も少なくないと思います。それはたぶん、誰もが知る有名な言葉「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」(実は元々のフランス語では「Qu’ils mangent de la brioche !=ブリオッシュを食べればいいじゃない」で、お菓子/ケーキなどに意訳された日本語とはちょっとニュアンスが異なります)という言葉に由来する印象かもしれません。
ですがそもそもこの言葉は“ある身分の高い姫君”が口にしたとされるもので、マリー・アントワネットの言葉だとは明確に記されておらず、現在では他の人の言葉だとする説が有力だそうです。
パンに関する言葉で何となくイメージが固定されてしまったマリー・アントワネット、彼女が実際にどんな食生活を送っていたのかが書かれているのが今回ご紹介の本書です。
フランス王室の食生活・・・こんなものを食べていたそうです
本書では、フランス王室の食生活、食事メニューについて非常に細かく解説がされています。詳しくは実際に読んで戴いたほうが面白いですから、ここではその中のネタを少しだけ紹介してみたいと思います。
まず、王室では当然のことながら毎食大変豪華な料理が供されていたわけですが、実は牛肉や豚肉などはあまり食べられていなかったそうです。それらの肉は一般にも出回っている「ありふれた肉」のため、仔牛肉や羊肉またアヒルや鴨、ツグミ、雉などのジビエがメインディッシュとなることが多かったようです。
そのような食文化の中、マリー・アントワネットは赤身肉があまり好みでは無かったという記録があり、白身の仔牛肉などを好んでいたそうです。また、この時代にも当時「ヌーヴェル・キュイジーヌ」と呼ばれた新たな料理文化が起こっていたそうですが、彼女は新風の料理についてもあまり気に入っていなかったのだとか。現代でも伝統料理とヌーヴェル・キュイジーヌの論争がありますが、実は18世紀には既に同じような議論があったんですね。
そして…彼女が最も好んでいた食べ物は、フルーツ。特にイチゴやメロン、サクランボ、杏といった果物を好み、特にこの時代には非常に貴重だった氷を使った苺の氷菓が大好きだった模様です。
そうなると当然、苺とシャンパーニュを一緒に楽しんでいたのでは…?なんて推察しちゃいますよね。
それでは、当時のフランス王室ではどんなワインが飲まれていたのか・・・?
マリー・アントワネットは、どんなワインを飲んでいたのか?
当時のフランス王室で飲まれていたワインについては、かなり詳細な記録が残っています。
ヴェルサイユ宮殿の酒蔵の在庫管理表には、シャンベルタン、ロマネ・サン・ヴィヴァン、リシュブールなどブルゴーニュの名立たる銘酒の他、ボルドーのグラーヴ、シャンパーニュ、ハンガリーのトカイワイン、マデイラ酒、そして南アフリカ産ワインなども記載がされています。
当時の王族はこれらのワインをそのまま飲むことは少なく、大抵は水で薄めて飲んでいたようですね。当時の醸造技術ではアルコール発酵のコンロトールをするのは難しかったでしょうから、濃度にも結構バラつきがあったのではと思います。
また、マリー・アントワネットの生きていた時代=1700年代の後半には既に瓶詰めされたワインの流通が始まっており、シャンパーニュも瓶入りで取引がされていました。但し当時のシャンパーニュは今と比べて段違いに甘口で、1Lあたり50g以上の残糖があったとか。そんな甘~いシャンパーニュと、大好きな甘酸っぱい苺を合わせて楽しんでいたのでしょうか・・・?
マリー・アントワネットのワイン生活については、本書を読んでみてのお楽しみ、その他にも王室の興味深い食生活秘話がたっぷりですよ。ワインを飲みながら読む本としてはうってつけ、是非是非読んでみてください!!
という訳で今回のワイン本紹介はこのへんで。おっと、またこんな面白そうな本を見つけてしまった・・・早速ポチっとな、と。早く届かないかなあ。。。
*本日ご紹介した書籍は、Amazon他にて新品・古書等で購入できます!
『マリー・アントワネットは何を食べていたのか』(原書房 ピエール=イヴ・ボルペールさん著、ダコスタ吉村花子さん訳 税込定価2,200円)
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