今月のおすすめワイン本【2021年5月】ワインが登場するミステリ小説②
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本をご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ、先週に続いての連続企画テーマは「ワインが登場するミステリ小説」。
子供のころから大のミステリ好き、国内海外問わず読みまくっているが皆さまに是非とも読んで頂きたい3冊をチョイスしました。
読み始めたら止まらないミステリ小説をお供に、おいしいワインを楽しんでくださいね。
それでは、前回の『刑事コロンボ 別れのワイン』に続いてお勧めするワインミステリ小説はこちら!
『葡萄街道(ワインロード)の殺人』(平岩弓枝さん著/角川文庫 電子版 税込504円)
『御宿かわせみ』『はやぶさ新八』シリーズでも大人気の時代小説家、平岩弓枝さんによる現代ミステリです。
平岩先生は時代小説家としての印象が強いですが、かつては現代ドラマの脚本なども数多く手掛けてきただけに、さすがのエンターテインメント性と巧みなストーリーテリングでぐいぐい読ませてくれます。
時代小説に馴染みのない方も、安心して楽しめますよ。
本作の舞台は主にドイツとシャンパーニュ地方。
東京・麻布でドイツ料理レストランを営む主人公は、毎年ドイツ各地を訪れ懇意の生産者から直接ワインを買い付ける熱心なワイン専門家。
ラインガウから始まる買い付けの旅、その中で出会う様々な人々、そして起こってしまう悲劇・・・ロードムービー的に次々に移り行く舞台とその中に潜むトリック、という構成は、我々日本人にはもうお馴染みの「2時間サスペンスドラマ」的展開です。
さすがに「崖の上での犯人の告白」は無かったですけどね 笑
何分ミステリ小説ですので事件の詳細やストーリーについては具体的に触れられませんが、全体としては決して明るく楽しい物語ではありません。
後半に近付くにつれて前半の賑やかで人情味も感じるワイン買い付けツアー場面とは対照的な重く悲劇的な展開が続きます。
それでも本を置こうという気にさせず最後まで引っ張っていく平岩弓枝さんならではの「語り手力」を強く感じました。
様々なワイナリーを訪問し生産者とワイン談義をする様子や、各地の郷土料理と地ワインを楽しむシーンは、ワイン好きなら思わずグラスに手が伸びてしまうはず。
僕も、この本を読み進めている間はとにかくきりっと冷えたリースリングが飲みたくてたまりませんでした(勿論、実際に飲みながら読みました!!)。
そして、平岩先生は本当にワインが大好きな方なんだろうな、と思わされるセリフも沢山あります。
特に僕が「いいなあ、この台詞」とおもったものをひとつだけ引用させて戴きます。
ある登場人物がワイナリーを訪れた時につぶやいた一言。
「わたしはね、こうした地下貯蔵庫を訪ねると、思わず足音を忍ばせてしまうのだよ。静かに熟成しているワインの眠りをさまたげるような気がしてね」
いいこと言いますね~!!こんな、ワインに対して僕たちと同じような愛情を持っている人物が沢山出てきます。
ドイツワインの味わい表現なども細やかで、ワインテイスティング観点からも参考になりますよ。
(*この下の1行だけは、ネタバレしたくない人は読まないでください)
そして最後にほんのちょっとだけネタばらし。
今回殺される被害者は、ワインに全く興味のないとにかく無粋で下品な奴ですからご安心を・・・
こんなことを言ってはいけませんが、結構スッキリしますよ 笑
それでは今回はこの辺で。
ミステリ小説紹介シリーズ、第3弾はまたもアメリカ・カリフォルニアのワイナリーを舞台にした小説です。次回も是非読んでみてくださいね。
*本日ご紹介した『葡萄街道の殺人』は、角川書店公式サイトやAmazon e Booksなどで、電子版でもお楽しみいただけます。是非読んでみてください!
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https://www.kadokawa.co.jp/product/200399008526/
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