【ワインのある景色】ブドウ畑の一年に寄り添って【7月】
このコラムではブドウ畑と生産者の1年に寄り添いながら、ワインのある様々な景色をお伝えしていければと思っています。
目次
明るい夜が続く夏のヨーロッパ
7月。太陽が燦々と輝く夏のヨーロッパは日没が遅く、21:00を回っても明るい夜が続いています。気分もなんとなく解放されて「アペロしてから帰ろう」「ちょっと、外に食べに行こうか?」という回数が増えるのもこの季節。カフェやビストロでグラスを片手に会話が弾みます。 「今年のヴァカンスはどこに行くの?」「もうヴァカンスには行った?」ヴァカンスの話題はこの時期の定番中の定番。ヨーロッパは長期の有給休暇を保障している国が多く、フランスでは5週間、そのうちの2週間は連続して取得することが保障されています。はぁ〜、なんとも羨ましい。
ヴァカンス先として人気のプロヴァンス
ヴァカンスの行き先、過ごし方は人それぞれですが、人気の行き先の1つとして毎年あがるのは海を楽しめる場所。フランスでは南仏が昔から人気で、現大統領のエマニュエル・マクロンも5年連続で訪れているとか。かく言う私も南仏で夏を過ごしたことがあり(と言うと優雅ですが、1週間という期間。「過ごした」ではなく「訪れた」の方が正しいですね。)、ゴッホやセザンヌなど数多くの画家が愛した美しい景色のプロヴァンス、紺碧の地中海が美しいコートダジュールとヴァカンス先として人気があるのも納得です。
プロヴァンスはロゼワインの産地として有名で、海沿いのカフェでは多くの人がキリッと冷えたロゼや白ワインを口にしています。そんな中、地元の人々で賑わうカフェを訪れると、そのカフェではワイングラスではなくコップでワインを提供していました。まさにコップ酒状態(そういえば、ジブリ映画「紅の豚」のポルコもコップで赤ワインを飲んでいましたっけ)。そして、仲良くなった初老のご夫婦のワインには氷も浮かんでいてびっくり。ご主人は「この店のワインは冷えが足りないんだよ」なんていたずらっ子のような笑みを浮かべて常連さんならではの愛ある悪態をついていましたが、マダムの方は「私は氷で薄めたくらいの方がちょうど良いのよ」と赤ワインを召し上がっていました。ずっと昔から地元の人たちに愛され楽しまれているカジュアルなワイン。そういうワインにセオリーはなく、いかに自分が美味しく楽しく飲めるかが一番大事ということに気付かされたひとときでした。あとで知ったのですが、こういう飲み方を「カチ割りワイン」と言うらしいです。
ヴィニュロンたちのヴァカンス
ヴィニュロン達もヴァカンスに出かけます。6月に開花し結実したブドウはみるみるうちに大きくなり、緑の果房が一粒、また一粒と色づいてきます。この事を「ヴェレゾン」と言い、黒ブドウはだんだん赤みを帯びてきて白ブドウは緑の透明度が高くなってくる、心躍るとても美しい時期です。あとはこのブドウを育てる事に注力するのみ。風通しを良くしブドウに栄養を集中させるために実っている果房の数を減らしたり(適房)、元気一杯に繁る葉や枝を落としたりの畑作業が続きます。健全なブドウから素晴らしいワインを作るための、決して手を抜くことのできない作業です。この作業が一段落した時こそがヴィニュロンのヴァカンスのタイミングですが、出かけられるのはまだもう少し先になりそうです。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)
・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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