ワインボキャブラ天国【第114回】「ブドウの破砕」 英:crushing 仏:foulage

ワインボキャブラ天国【第114回】「ブドウの破砕」 英:crushing  仏:foulage

連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!

取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!

ということで今回ご紹介する言葉は・・・

「ブドウの破砕」
英:crushing
仏:foulage (男性名詞:発音は「フゥラージュ」)

 

かつては、足踏みで潰していましたが・・・

今回のテーマは『ブドウの破砕』。畑で収穫されたブドウを醸造所に運び、ワインを仕込むための果汁を搾り取っていくまでの工程です。
上の「足踏み破砕」画像は、収穫を祝うお祭りのようなときにイベント的に行われていたもの。現在上の画像のような足踏み方式でブドウを潰してワインを仕込んでいる蔵元はさすがに無いと思います(が、もしかすると伝統製法原理主義の生産者で続けているところがあるのかもしれません・・・もしもそんな造り手をご存じの方がいらっしゃったら、是非教えてください!)。
ワインが「宗教的儀式の捧げもの」として位置づけられていた時代にはこういった造り方がされていた、ということをまずは知っておいてください。

収穫されたブドウが『破砕』工程に至るまで・・・動画でご覧ください!

それでいよいよ現代の具体的な『破砕』の様子を見ていきましょうか。今回はフランス ボルドー地方ポムロール村の有名生産者『シャトー・クリネ』が、動画を2本提供してくれましたので、そちらを見て作業工程を具体的に把握して戴ければと思います。
それではまず、1本目の動画です。

まず動画を観て戴くと、作業がブドウ畑の真横で行われていることがすぐに分かりますよね。ブドウは収穫してカゴなどに入れた段階から、野生酵母の働きで勝手に発酵を始めてしまうことがあります。適切な発酵をさせるためには、収穫してから1秒でも早く正規の醸造工程に移るのが重要。このように畑で収穫した真横で作業を始められるときは良いですが、蔵から畑が離れているときにはピストン輸送で急いでどんどん運んでいきます。

1本目の動画では、収穫されたブドウがコンベアで運ばれ、機会による『除梗=枝の部分を取り除く作業』が行われているのを見ることが出来ます。取り除いた果梗がどんどん機械から弾かれて出てくるところ、良く見てくださいね。
そして、一粒一粒に分けられたブドウは画面奥の方の『選果台』へと進んでいきます。それでは、次の動画に移りましょう。

『選果』は、人の目と手で行われます。ここで、未熟・過熟のものや不健全な状態と判断される粒を取り除いていきます。職人たちによってスピーディに不要な果実がピックアップされていく様子はまさに熟練の技。無事ワインの原料ブドウとして「合格」と見做されたブドウが、いよいよ果汁を搾り取る工程に運ばれていきました。

破砕・果汁の圧搾には様々な方式が使用されています。

そしていよいよ果汁の圧搾です。現在主流の方式は「空気圧式膜圧搾機」や「ブーハー型」と呼ばれる上の画像のような器械。これだけ見るとどうやって使うのかイメージしにくいのですが・・・簡単に説明を致しますね。
この大きな容器の中に選果されたブドウが入れられますと、男性の右斜め上にある布のような部分がゆっくりと風船状に膨らんでいき、左下部分に入れられたブドウをそっと押しつぶして果汁を絞り出していく、という流れです。
果皮と種に余分な圧力がかからない(抽出が強くなりすぎない)ため、非常にクリアなきめの細かい果汁を搾汁できるという利点があります。

そして次にお見せするのが、伝統製法である「垂直式」または「縦型」。大きなバケツ状の容器にブドウを入れ、上から大きな蓋を落として押し潰しながら果汁を絞り出していきます。シャンパーニュ地方で伝統的に使用されているバスケット・プレスと呼ばれる木製の圧搾機がこの「垂直式」タイプの典型です。
このほかにも、タンクの側面からブドウを押しつぶしていく「水平式」の圧搾もあり、生産地やワインのタイプによって使い分けられています。

近年は風船で潰す「空気圧式膜圧搾機」が主流ですが、シャンパーニュ伝統の「垂直式」をボルドーの生産者が新たに取り入れ始めるなど、それぞれの方式にメリットがあるようですね。

それでは今回はこのへんにしておきましょうか。圧搾に関しては以下リンク先のコラムで非常に細かく解説をしておりますので、今回の内容でご興味を持たれた方は是非読んでみてくださいね。

今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!

【今回の用語に関連したその他のコラム】

【醸造工程を識る】第1弾:プレス(バイイングアシスタント 谷川 涼介)

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