ワインボキャブラ天国【第131回】「接ぎ木」 英:grafting 仏:greffe
- 2022.06.19
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「接ぎ木」
英:grafting 仏:greffe (女性名詞 発音は「グレッフ」)
目次
『接ぎ木』とは??
『接ぎ木』は、ブドウ樹に限らず様々な植物に使用されている栽培手法です。同じ種類または近い種の植物を用意し、土台部分となる「台木(だいぎ)」に育てたい種である「穂木(ほぎ)」を繋ぎ合わせ、1本の木として育てる方法のことを言います。
『接ぎ木』のメリットは、例えば病害に強かったり花つきが良かったりする品種を台木としてその性質を生かし、台木よりも弱い穂木にその性質を受け継がせて守ることなどがあります。『接ぎ木』を行っても、穂木のもともとの性質が大きく変化してしまうことはありません。
次の段落に進まれる前に、まずこれだけ覚えておいてくださいね。
『フィロキセラ禍』の対策としての『接ぎ木』
さて、それではこの『接ぎ木』の手法がブドウ樹を病害虫から守るために活用された事例を見ていきましょう。
その前に、今回からこのシリーズを読み始めたという方はお時間があれば是非1回戻って第130回『フィロキセラ/ブドウ根アブラムシ』の回をざっと読んで頂いても良いかと思います。
第130回のページはこちらです。
ワインボキャブラ天国【第130回】「フィロキセラ/ブドウ根アブラムシ」 英:Phylloxera 仏:philloxera
読んで頂いてありがとうございました、それでは今回の内容を始めましょう。
アメリカ系のブドウ「Vitis riparia(ヴィティス・リパリア)」系品種、「Vitis rupestris (ヴィティス ルペストリス)」系品種がこの害虫に対して耐性を持っていたため、木に付着した外来種が生きたまま持ち込まれてしまいました。
そこで欧州の栽培家たちはそれを逆手に取り、フィロキセラ被害への対策としてアメリカ系の品種を「台木」としそこにヨーロッパ系品種の上部を穂木として接ぎ木した上で育成し、耐性を持たせて被害を防いだわけです。
『接ぎ木』の具体的なつなぎ方
それでは最後に、具体的にどうやって「木を接ぐ」のか、について画像を見て戴きましょう。
今回は上記のように3種類ほどの接ぎ部分画像をご用意しました。
まず一番左と真ん中は、台木部分を縦に長く割り、そこに先端を細く尖らせた穂木を接ぐ手法です。これは台木と穂木の接地面積が広いので、お互いの接合が成功する確率が高いそうです。
一番右側は最近のワイナリーでは一番よく目にするタイプ、台木と穂木にジグソーパズルの繋ぎ目のような丸い出っ張り/凹みを作って接ぐやり方です。日本国内で販売されているブドウの苗木でも、この手法で繋がれたものが多いのではないでしょうか。僕が以前自分で買ったカベルネ・ソーヴィニヨンの苗もこの接ぎ木がされていましたよ。
そして最後は、冒頭の画像に戻って戴いて、台木に今年の新芽を挿し込んで繋ぐタイプですね。接ぎ木した後はこのようにテープで巻き、切り口から雑菌などが繁殖するのを防ぎます。
もっと詳しく知りたい方は、園芸サイトなどを見ると色々画像がありますし、薔薇の接ぎ木などはYoutubeに動画も沢山ありました。それらを見ればより「接ぎ木」が理解しやすいかと思います。
欧州のブドウ品種はアメリカ系と接ぎ木されたのだから、現在のヨーロッパ系品種は純粋種では無い…なんて言う人もいますが、前述したように基本的には穂木はその性質を失うことはありません。19世紀後半のフィロキセラ禍によって壊滅的な被害を受けた欧州のワイン産地が復活したのはこの『接ぎ木』手法のおかげ。今もこの技法はしっかりと続けられています。
それでは今回はこのへんにしておきましょう。今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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