ワインボキャブラ天国【第132回】「火打石」 英:gun-flint 仏:pierre-a-fusil

ワインボキャブラ天国【第132回】「火打石」 英:gun-flint 仏:pierre-a-fusil

連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!

取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!

ということで今回ご紹介する言葉は・・・

「火打石」
英:gun-flint 仏:pierre-a-fusil (女性名詞 発音は「ピエール・ア・フュズィル」)

 

『火打石』とは??

「火打石」、これまでに様々取り上げてきた「ワインの香りを表現する比喩」のひとつです。
火打石を擦ったときに発する燻したような、焦げたような香り。
ワインの中にそんな「煙を想わせる香り」があったときに使用される表現だと覚えておいてください。そう、既にこの「煙のような、燻したような(スモーキーな)」という表現はこのコラム第54回(コラム末にリンクを掲載してあります)で取り上げましたので、簡単にその復習を。

-第54回より抜粋、加筆しました-
——————————————————————————————————-
例えば仏ロワール地方内陸の産地「プイィ・フュメ」で造られるソーヴィニヨン・ブラン100%のワインはその名の通り燻したような香りが特徴。これはプイィ・フュメの土壌に「火打石」の成分であるシレックス=ケイ酸塩が含まれているため、ブドウ果汁を通じてワインにそのニュアンスが残ったもの、と考えられています。

実際にこのワインの香りを嗅いでみると、煙で燻した時のような香りがほのかに。グレープフルーツなどのフレッシュな柑橘類の香りに複雑性のアクセントを加えています。実際に「フュメ」という言葉はフランス語で「煙で燻された」という意味ですので、ワインの名称字体にもこの香りが付けられているということになります。

『火打石』の成分について

さて、現在私たちの日常生活ではほとんど使うことの無くなった「火打石」について、簡単にご紹介しておきますね。
「火打石」は、火花で着火するために使用されてきた硬質な石の総称で、「火打石」という鉱物があるわけではありません。高校生の頃に地学の授業で学んだくらいの知識から幾つか例を挙げますと、黒曜石、石英、チャートといった鉱石がこのジャンルに入ります。

「火打石」を打っている様子と言われて思い出すのが、二つの石をカチカチとぶつけ合って発火させているところ。これは2つの同じ鉱石をぶつけているのではなく、「火打ち金」という鉄片に火打石をぶつけて欠片を削り取ったときに火花が散る、という仕組みになっています。
ちなみに時代劇などで出掛ける時に火打石をカチカチ鳴らして見送るのは、お祓いの一種で「切り火」と呼ばれていました。これは火を清浄なものと考え、魔除けのような意味合いで行われていた習慣だそうです。現代でも歌舞伎や落語など古典芸能の世界や下町の職人の世界ではこの習慣が残っているため、日本では火打石を作る工房が今も各地に残っているとのこと。

最近はキャンプなどでゲーム的に火打石を使った火おこしを人もいるようで、Amazonなどの通販サイトでも「火打石」と検索すると様々な種類のものが出品されています。
1,000円台のものからありますので、「火打石の香り」を実体験してみたい方は入手してみてください。

「火打石の香り」とは?

それでは最後に改めて「火打石の香り」を定義しましょう。
火打石の香りが感じられるワインとして代表的なものには、冒頭で紹介した『プイィ・フュメ』や、ジュラ紀のキンメリジャンという石灰質土壌を含む『シャブリ』などがあります。
これらの産地のワインはその土壌成分から由来する(とされている)火打石の香りを帯びているわけですが、実際にはミネラル分に香りがあるということは科学的に実証されていませんので正確なところは不明なんですよね。

後は、樽熟成に由来する香り。内部のローストを強めに入れて焦げ・煙のニュアンスが強くなった樽で熟成されたワインにこのニュアンスが付き、それが火打石的なニュアンスで捉えられる、というのも多いと思います。ワインの香りを取ったときに過ごし焦げたような香り、スモーキーな香りを感じた時には、その土地の土壌(テロワール)と併せ、どのような樽材でどのくらいの期間熟成がされたか、も調べてみると良いと思います。

それでは今回はこのへんにしておきましょう。
今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!

【今回紹介の用語「火打石」に関連したその他のコラム】

ワインボキャブラ天国【第54回】「煙のような、燻したような(スモーキーな)」英:smoky 仏:fume

ワインボキャブラ天国【第15回】「石灰質の」英:chalky 仏:calcaire

今月のおすすめワイン本【2020年4月】「ブドウ畑の「土壌」とワインの味わいの関係性」

CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
Translate »