今月のおすすめワイン本【2021年8月】現状、私的オールタイム・ベスト・オブ・ワインエッセイ本!
読むとワインを飲むのがもっと楽しくなる本をご紹介する『今月のおすすめワイン本』シリーズ、32冊目となる今回は久しぶりのワインエッセイを選びました。先日フランスのコミックエッセイは取り上げましたが、純粋なエッセイ物を選ぶのは本当に久しぶり・・・そしてこれは、2021年8月現在僕個人としてはワインをテーマにしたエッセイ本で断トツNO.1に好きな一冊!パリ在住40年を超える大ヴェテラン在仏邦人、戸塚真弓さんによる『ワインに染まる』をお薦めしたいと思います。
『ワインに染まる パリから始まる美酒の旅』(戸塚真弓さん著 中央公論新社/税込定価1,980円)
パリ在住の日本人が各エッセイというと「私はパリでこんな素敵な暮らしをしているの」「フランスは日本と違って~」「日本の男はこうだけど、フランス人の男性はホニャララで」みたいな自己陶酔とフランス礼賛だけの正直どうにもいけ好かないものが多いですが、いやあくまでも僕個人の感想ですが 笑、戸塚さんの本は決してそんなことはありません。
DRCドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティでの古酒試飲に招かれるなどの特別なエピソードもありつつ(*戸塚さんには『ロマネ・コンティの里から』という名著もあります)、普段のワイン生活は地に足の着いた「スーパーマーケットのワイン探求」派。日々スーパーのワイン棚を眺め、推理・推測を重ねながら安くておいしいワインを探す姿には僕も自分を重ね合わせました。
スーパーって、ワインショップみたいに「何かお探しですか」って話しかけられないから心安らかにゆっくり物色できるんですよね。日本のスーパーマーケットも、大手ビール会社取り扱いの有名銘柄ワインで棚を埋めるのではなく、その店にしかないような個性的な品揃えをすればもっとワインの売上は増えると思います(スーパーのバイヤー様、これを読んでいらっしゃったら、フィラディスのワインは如何ですか??)。
僕は今回戸塚さんの本で最も記憶に残ったのは、ワインの色合いの表現についての1文。戸塚さんは、ワインの微妙な色合いを見てそれが言葉にならない時『日本の伝統色』という本を見て色の表現を探すのだとか。エピソードで取り上げられていたのはオレンジ色がかったロゼ・シャンパーニュの色を見た時の話で、その色は日本では「洒落柿」という実に粋な名前だそう。その他にも「古武士の品格が漂うようなワイン」など、日本人ならではの表現を使うのは、とても素敵ですよね。
そして巻末には、著者がこれまでに飲んだ「忘れられないワイン」たちが紹介されています。ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に日本ワインまで銘酒がずらり。1本1本に飲んだ時のエピソードや感想が事細かに記されていて、飲んだワインの記録の付け方という意味でも参考になりました。僕は折角毎日良いワインを試飲する機会があるのに、コメントを書くための最低限のキーワードしか残していないので時間が経つとどうにも香りや味の印象がボンヤリ。残りの人生はもっと丁寧に1本のワインに向き合って記憶していかなくちゃ、と反省しました。
最後に、この本は決して難解な内容は書かれていませんが、ワイン初心者の方向けというよりはある程度ワインを飲んでいる人、フランス文化に強い興味のある人に適した内容だとは思います。産地や生産者の固有名詞がバンバン出てくるので、それらがピンとこないと楽しく読み進めるのは難しいかも。まずは書店やオンラインで第1章を読んでみて、いけそうだな、と思ったら読んでみてください。凄く濃密で充実した1冊ですよ!!
ということで今回はこのへんで。
次回はどんなワイン本をご紹介しようかな・・・おっと、またこんな面白そうな本を見つけてしまった・・・早速ポチっとな、と。
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