カリフォルニアワインの魅力とおすすめ銘柄~ソムリエ直伝!家飲みワインの楽しみ方~
- 2024.01.05
- おすすめワイン
カリフォルニアワインといえば「濃厚でパワフルな風味が楽しめる」「安くて美味いワインが多い」などさまざまな印象がありますが、何といってもコストパフォーマンスの良さが一番の魅力ではないでしょうか。高品質なのに低価格で楽しめることから、世代を問わずさまざまな人に愛されています。では、なぜここまで人気を集めるワインが多いのか。コスパの謎を紐解きながら、改めての魅力に迫ります。そして、ワイン専門商社フィラディスの直販ショップ Firadis WINE CLUBより、おすすめワインもご紹介!
目次
カリフォルニアワインはなぜ人気なのか?
世界中から人気を集めているカリフォルニアワインですが、なぜここまで人気なのでしょうか。そこには3つの理由が隠されています。
1. 価格は抑えめなのに高品質なワインが多いから
美味しいから人気な訳ですので、品質の高さは第一に考えられるでしょう。では、最初から品質が高かったのかと言われると実はそうではありません。そこに至るまでには、数々の歴史的要因が関係していました。19世紀後半、ブドウを侵し枯死させる「フィロキセラ」が大量発生し、各国のワイン産業は窮地に立たされました。もちろん、カリフォルニアも例にもれず危機に見舞われ、数多くのブドウ園が破壊されていきましたが、なす術なく途方に暮れていたなか、アメリカ原産の台木であればフィロキセラに耐性があることが発見されたのです。
それによって難を乗り越えたカリフォルニアワインですが、その後、新種のフィロキセラが発生し、最終的にはフィロキセラに屈することになります。しかしそのおかげで、品種の選定や仕立てが見直されることになり、カリフォルニアワインの品質が見直されるきっかけにつながっていきました。紆余曲折があったからこそ、いまの品質へとつながっているのです。
その後もアメリカでは禁酒法が導入され、ワイン産業は大きなダメージを受けることになりますが、禁酒法撤廃と同時に少しずつ復興し、品質向上への努力を惜しまないようになりました。数々の苦難を乗り越えたからこそ、さまざまな人の知恵と工夫で今があるといっても過言ではないでしょう。
2. 古樹による独特の風味が味わえるから
カリフォルニアワインのラベルをよく見ると、「Old Vines (オールド・ヴァイン)」と表記されていることがあります。これは「古樹のブドウから造られたワイン」を意味しており、「凝縮感と複雑みを楽しめるワイン」だということ。
樹齢が上がるごとに実の数は減少するため、一粒あたり栄養分が増え、それが果実のポテンシャルを引き立たせているのです。カリフォルニアでは古樹の「ジンファンデル」が有名で、その凝縮感ある果実味にバランスの取れた樽香や渋みと酸味のしっかりしたストラクチャーが魅力です。ジンファンデルは、ドライな黒系ベリーやシナモン、甘草のような特徴的な甘やかさとほろ苦さを思わせるアロマが主体です。ライトからミディアムボディに仕上がることはほとんどないため、フルボディ好きには欠かせない品種といって良いでしょう。
【おすすめ銘柄】マイケル・デイヴィッド・ワイナリー セブン・デッドリー・ジンス
3. コストパフォーマンスが優れているから
コストパフォーマンスに優れているとはズバリ、質の良いワインを造るためのブドウの生育条件が整っているということ。
アメリカのように、ワイン造りの歴史が浅い”新世界”の多くは日照量に恵まれています。乾燥地が多く、一年を通して気候が安定しているため、ブドウが完熟しやすく、生産者にとっても手間がかからず、低コストで上質なブドウを手に入れることができるのです。そのため価格に対して味わいもしっかりしたものが多く出来あがります。
リフォルニアワインのラベルをよく見ると、「Old Vines (オールド・ヴァイン)」と表記されていることがあります。これは「古樹のブドウから造られたワイン」を意味しており、「凝縮感と複雑みを楽しめるワイン」だということ。
地図で見るカリフォルニアワインの魅力
カリフォルニアといえば2大産地「ナパ」と「ソノマ」が有名です。興味深いことに、これらの産地は隣接するにも関わらず気候が異なります。この気候の違いに大きく起因しているのが、太平洋の冷たい海流から生まれる冷涼な海風です。そして地図で見てもわかる通り、太平洋に直接面するソノマではこの影響をナパと比べてよりダイレクトに受けるため、気候はより冷涼とされています。ちなみに、ナパの南の方ではサン・パブロ湾という少し開けた場所があるため、ソノマほどではありませんが冷涼効果の恩恵を受けています。
気候が違えば当然、適正品種やワインの特徴も変わってくるため、同じカリフォルニアワインだからといってワインを選んでしまうと味の違いに驚くかもしれません。まずは、カリフォルニアワイン入門編とも呼べる両産地の特徴をおさえておきましょう。
ナパのワインはリッチな味わいが特徴
「ナパ」でお馴染みのナパワインは、ナパ・ヴァレーの一帯から造られたワインを指します。オーパス・ワンやスクリーミングイーグルを産んだ著名なワイナリーや有名畑のほとんどがこのナパにあります。地形の特性上、北は暑く乾燥する一方で、南は朝霧と午後に吹く冷たい風によって気温は緩和されるため、北と南で特徴が異なります。北〜中部にかけては温暖な気候を生かしてカベルネ・ソーヴィニョやメルロなどのボルドー品種が多く、南のサン・パブロ湾に面した所では冷涼な気候を生かしたピノ・ノワールやシャルドネのブルゴーニュ品種が多く栽培されています。
ナパといえばその温暖さを生かして造られる、凝縮感溢れるボルドースタイルのワインが目玉であり、カリフォルニアを代表する高級ワインの数々がこのスタイルで造られたものばかり。最近はヨーロッパ諸国さながらのエレガントなスタイルも多く見受けられますが、やはり価格もプレミアム。よって、1,000円〜10,000円ではいまだにナパらしい、凝縮感ある飲み応え抜群のフルボディが味わえます。
ソノマワインの特徴はバランスの良さ
ナパに次ぐカリフォルニアワインの人気産地がソノマ。太平洋に面している西側では冷たい海流の影響を受けて気候は冷涼で、内陸に行くほど温暖になります。ソノマワインは、ナパとは打って変わって上質なピノ・ノワールとシャルドネが目玉でしょう。フランスワインのようなエレガンスさとカリフォルニアらしいリッチさが共存するソノマのワインは、値上がり激しいブルゴーニュに代わる産地として注目を集めています。銘柄次第では、ブルゴーニュの1/2〜1/3の価格で同等の味わいが堪能できるため、コストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。
品種にこだわると、さらに楽しい
同じシャルドネでも、ナパとソノマでは気候や土壌、造り手が違うため、味わいも大きく変わります。品種と産地を関連づけて憶えておけば、より自分好みのワインが見つかるはず。ここでは品種の特徴をおさらいしつつ、フィラディス人気のおすすめ銘柄もご紹介します!
ピノ・ノワール
本場ブルゴーニュを筆頭に、名だたる高級ワインへと姿を変えるピノ・ノワール。ナパとソノマでは、ブルゴーニュとはまた違った味わいを楽しむことができます。
■ナパ×ピノ・ノワール
ナパのピノ・ノワールは、その温暖な気候の恩恵を受けた、ジューシーな果実味とふくよかなボディが特徴です。時にジンファンデルをも思わせる甘やかな果実味や樽香を感じられ、上質なものほど酸味とのバランスが取れた上質な仕上がりになります。
【おすすめ銘柄】テート・ドッグ ピノ・ノワール カルロスズ・キュヴェは、芳醇に香るイチゴ、ラズベリー、クローブにシナモンなどのアロマが好きな方や、フランスのピノ・ノワールでは物足りないという方におすすめです。
■ソノマ×ピノ・ノワール
ソノマではナパとはタイプが異なり、冷涼な気候に由来して酸味が生きたエレガントで上品な味わいが特徴です。果実味と樽香、酸味とのバランスが取れ、カリフォルニアらしい凝縮感ある赤系ベリーの要素がありつつ、綺麗な酸味が余韻を引き締めてくれる印象です。
【おすすめ銘柄】アントヒル・ファームズ ピノ・ノワール ソノマ・コーストは、優しく柔らかな果実味を纏ったエレガントスタイルがソノマの特徴です。ピノ・ノワールの入り口としては勿論、ブルゴーニュ好きの方も満足できるバランスを備えた味わいのものが多いでしょう。
シャルドネ
本産地と造り手によって大きく表情を変えるカメレオン品種のシャルドネ。こちらも当然、ナパとソノマではスタイルに差が見られます。
■ナパ×シャルドネ
ナパのシャルドネといえば、カリフォルニアらしい「トロピカルフルーツ」や「樽香」がはっきりと感じられて、酸は控えめなフルボディなスタイルが特徴です。しかし、近年は嗜好の変化もあり、よりライトな味わいへと造りが変化しており、このようなスタイルは影を潜めつつあります。よって、「昔は濃厚なスタイルだけど、今はエレガントなナパシャルドネも多い」とおさえておくと良いでしょう。
■ソノマ×シャルドネ
ソノマのシャルドネはいわば、ヨーロッパの伝統国シャルドネのエレガントなスタイルとカリフォルニアのボリューム感が融合したスタイル。ナパと比べて海風による冷涼効果を受けるため、充実した果実味や樽香を支える上質な酸味にぜひ注目してみてください。
【おすすめ銘柄】ダットン・ゴールドフィールド シャルドネ ダットン・ランチは、南国フルーツを思わせるトロピカルな果実味が好きな方や、濃厚さの奥に隠れた複雑味や繊細さを堪能したい方にはぴったりの銘柄です!
カベルネ・ソーヴィニョン
やはりカリフォルニアワインを語る上で欠かせない品種が、カベルネ・ソーヴィニョンですよね。ブドウ栽培面積も2位のピノ・ノワールにおよそ2倍の差をつけるほど、圧巻の人気を誇ります。
■ナパ×カベルネ・ソーヴィニョン
カベルネ・ソーヴィニョンといえばやはりナパ!昼夜の寒暖差からもたらされるブドウの凝縮感は流石の一言。リッチでパワフル、甘いブルーベリーやブラックベリーのアロマに交わる特徴的なヴァニラ香がたまりません。
【おすすめ銘柄】シックスティーン・バイ・トゥエンティ カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレーは、ナパのカベルネ・ソーヴィニョンは、濃厚なフルボディワイン好きの方におすすめ!グラスから溢れんばかりの果実味と樽香が魅力です。
ライター紹介:田中 純平 (Junpei Tanaka)
J.S.A認定ソムリエ、ワインエキスパート
J.S.A認定SAKE DIPLOMA
WSET Level3
大学時代のスペイン留学中にワインの魅力に囚われ、帰国後はスペイン語とワインの二足の草鞋を決意。在学中にヴィノスやまざきでインターンを経験し、同年にワイン関連の資格を諸々取得する。卒業後はフリーランスとして独立し、スペイン語レッスンや(株)楽天グループの翻訳担当を経て人気ソムリエが監修を務めるお酒のウェブメディアや西日本新聞社運営の焼酎メディアにて監修ライターを務める。現在は副業にて、ワインD2C会社であるHomewineに携わり、ワインに関する相談にお答えするソムリエコンシェルジュサービスを担当中。
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