ソムリエ直伝!家飲みワインの楽しみ方 ~浪漫あふれるボルドーワイン~

ソムリエ直伝!家飲みワインの楽しみ方 ~浪漫あふれるボルドーワイン~

真摯なワイン造りで世界を魅了するボルドー生産者の言葉に「ワイン造りに欠かせないもの、それはワインに愛を込めること」がある。生産者は良いワインを造るために、気候や土壌に適した品種の選定・栽培方法・醸造に試行錯誤している。そんなワイン造りの浪漫にふれると、「ボルドーの赤ワインは難しい」という方も心理的なハードルがグッと下がるのではないだろうか。

 ボルドーの気候に適した栽培の工夫とは? 

ボルドーは海洋性気候で、全般にフラットで温和な気候。メキシコ湾流が大西洋を流れていて、この暖流の恩恵で、秋になってもすぐに寒くならずブドウは10月まで成熟を続けることができる。一方で、大西洋は雨と湿気をもたらし、カビなどの病害は必然となる。2023年のボルドーは、ブドウのカビ病の一つであるベト病に悩まされた。ブドウの病害が多発すると、ワインの品質に影響するだけでなく、収穫量が減る=収入が減る。これは生産者にとって死活問題。では、どのようにしてブドウの病害と戦い、品質の高いブドウを収穫するために、生産者はどのような工夫をしているのだろうか。

◆畑での工夫:健康なブドウを育てるために、樹冠管理(キャノピー・マネジメント)をする。湿気が溜まらないように、ブドウの葉が重ならないように剪定する。

◆丁寧な選果:未成熟や病気の果実を取り除く。資金力がある生産者は光学選果台などの機械を使って選果する。

◆複数品種を植える:病害などのリスクを分散するため、成熟期などが異なる品種を栽培する。例えば、メルロ、カベルネ・フランといった早熟の品種を育てつつ、晩熟なカベルネ・ソーヴィニョンを育てる。

 ボルドーワインの特色 ブレンドとは? 

複数品種を育てるのはリスクを分散する目的以外に、ブレンドという目的もある。ボルドーワインの特徴の一つであるブレンドはヴィンテージ・ヴァリエーションへの対応で、単一品種が基本のブルゴーニュワインとの大きな違い。ブレンドをする事で、ワインのバランスを調整し安定した品質のワインを造る事ができる。それぞれのブドウ品種の持ち味を活かし、バランス・スタイルを保つ役割を担っている。

◆カベルネ・ソーヴィニヨン:晩熟品種。果皮が厚く小粒なので、色、タンニンを抽出し、長期熟成のポテンシャルに貢献し、骨格、黒系果実風味をもたらす。
◆メルロ:収穫時期が早い。ブレンドで、カベルネ・ソーヴィニヨンの強い味わいに、柔らかさやフルーティさ、そしてボディをもたらす。
◆カベルネ・フラン:スミレのようなフラワリーな風味、清涼感、酸味をもたらす。
◆プチ・ヴェルド:超晩熟で、晴天が続く年にしかうまく育たないが、色が濃くほんの少量でもスパイシーなニュアンスを与える。

 土壌から探る、右岸と左岸の味わい 

ボルドーには、ドルドーニュ、ガロンヌ、ジロンドという3つの川が流れている。自分が海に向かって立って、川の右を右岸、左側を左岸という。ドルドーニュ川の右岸にあるのが、サンテミリオン、ポムロール。ジロンド川の左岸にあるのがメドック地区。これらが世界に名だたる高級ボルドーワインを産出する地区だ。右岸と左岸では下層土が構成された時代が異なり、土壌に合った品種が植えられている。そのため、ワインの味わいにも違いが出る。

【左岸のワイン】

左岸は200万年前以降の氷河期に形成された。巨大な氷河によりピレネーやマシフ・サントラルなどから岩石が流れてきて丸くなり、砂利の層になった。砂利は太陽の熱を吸収してブドウ畑を暖かく保ってくれる。その利点を活かし、晩熟で暖かさを必要とするカベルネ・ソーヴィニヨンが主要品種になっている。メドック格付け1級のシャトーをもつ4つのコミューン(村)は、下流で最北のサン・テステフから、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーがある。1級シャトーのワインは高額であるが、そのシャトーが存在する村のワインはもっと身近に楽しめる。

◆サン・テステフ:堅牢で素朴、色が濃く、若いうちは少々固いこともあるが、非常に長命であるという独特のスタイル。3級のカロン・セギュールはハートのラベルでヴァレンタインなどイベントにも人気。

◆ポイヤック:5つの1級畑のうち3つ(ラフィット、ラトゥール、ムートン・ロートシルト)がある。カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培比率が高い。カシス、杉、シガーボックスという表現をよくされる。高い凝縮感、タンニン、酸味で長期熟成できる。左岸で最も骨格のあるワイン。

◆サン・ジュリアン:北にある“パワフル・骨格のポイヤック”と、南の“フィネスのマルゴー”に挟まれており、バランス、繊細さ、伝統を求めるワインラヴァーから評価されている。深い色合いで、食欲をそそる、飲みごたえのあるワイン。

◆マルゴー:深いルビー色、骨格、凝縮感に加え、妖艶な香りとシルキーなタンニンを兼ね備えている。これら4つの村名ワインの中で、最もエレガント。マルゴーは優美なスタイルで、その対照的な例としてポイヤックがよく挙げられる。

【右岸のワイン】

右岸は3,000万年前に形成された。ボルドーは海の中で、堆積による石灰岩を母岩とする粘土石灰質土壌の他、砂や砂利質土壌もみられる。特にポムロールの酸化鉄が含まれる粘土は有名である。粘土は水分を含むため温度が低くなり、低い温度でも育つメルロが右岸の主要品種となっている。またメルロは過熟になるとジャムのような味わいになるため、冷たさのある右岸の土壌の方が向いている。

◆サン・テミリオン:メルロが栽培面積の60%を占め、ドライフルーツのような甘やかさをワインに与えている。なめらかな口当たり、しなやかな喉ごしで、柔らかさを感じるワイン。メルロはカベルネ・ソーヴィニヨンよりもタンニンは少ないので、ワインの熟成スピードは左岸のワインよりも早い傾向。

◆ポムロール:サンテミリオンの北西に位置する小さな産地。小規模生産者が多く、生産量が限られているため、高価なワインが多い。ボルドーで最も高額ワインと言われるペトリュスは、ここポムロールにある。メルロが80%を占め、華やかで豪華、果実味豊かな赤ワインで、熟成すると官能的なフレーバーが出る。

出典:
The Oxford Companion to Wine, 4th Edition (https://www.jancisrobinson.com/ocw) by Jancis Robinson
Inside Bordeaux by Jane Anson

ライター紹介:近藤美伸(Kondo Minobu)

Dip WSET
J.S.A.認定ソムリエ・エクセレンス、ワインエキスパート
International A.S.I. Sommelier Diploma – Gold
イタリアNative Grape Odyssey マエストロ
International Wine Challenge (IWC) associate judge
Japan Wine Challenge(JWC) 認定ジャッジ
第9回サクラアワード審査員
サーブルドール騎士団叙任
Les Piliers Chablisiens シャブリ騎士団叙任

大学卒業後、航空会社のフライトアテンダントとして国際線ファーストクラスや日本政府の特別フライトを担当。サービスインストラクターとして、外国人CAに接客マナーの指導を行う。世界各国の滞在先で数々のワインや郷土料理に触れ、食文化に深い関心を持つようになる。ECC外語学院英語講師、日本や欧米誌のエディター・ライターの経験を経て、現在は日本のワイナリーの業務に携わっている。
パリとLAに長期滞在した経験と世界中のワインや食体験を元に、ワインセミナーを開催している。ワインを学ぶ事により、自分自身が感じた「世界を旅するような感動」を伝えて行きたいと思っている。2022年に英国WSET®最難関の国際資格WSET Level 4 Diplomaを取得。

CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
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