ワインボキャブラ天国【第107回】「鉄」英:iron 仏:fer
- 2021.12.04
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「鉄」
英:iron
仏:fer (女性名詞 発音は「フェール」)
今回は「鉄」という鉱物による表現を選びました。
「鉄っぽい香り」「鉄っぽい味」などという表現は、実は結構頻繁に耳にします。例えば僕個人は、ブルゴーニュ地方、ジュヴレ・シャンベルタンのワインを飲むと、鉄っぽいなあ…というニュアンスを良く感じ取っています。
こういった香りや味わいを感じるとどうしても「土壌に鉄分が豊富に含まれているからだろう」と考えてしてしまいがちですが、実際には鉄分の多い土壌で育ったブドウに鉄の味がするということはありません。
鉄分が非常に多く含まれている野菜、小松菜や枝豆、ほうれん草なども、明らかな「鉄の味」はしないですよね。
その他のミネラル分についても同様で、以前「石灰質」の項目でも書きましたが、そもそもブドウが土壌から吸収して果汁に蓄えた程度の量の鉱物に香りや味わいを感じることはないようです。人間がビタミンなどの栄養分を過剰摂取しても必要料以外は排出してしまうように、植物も生育に必要な以外のミネラル分などを保持することはしません。
つまり、ワインに鉄っぽい香味があったとしてもそれは実際の鉄分ではありません。酸とタンニンの複合したものが鉄に似た味わいに感じられる…など、ワインの通常成分がそういった香味を形成しているものです。
鉄っぽさを感じるミネラル豊かなワインだ、などというコメントは何となくカッコいい感じはしますが実際には全くの間違いですので使わないようにしましょう!
それでは、今回は少し短かめですがこのくらいで・・・。
前回まで醸造関連の用語が続いていたので、今回から暫くは香りや味わい表現の用語を取り上げていこうかと思っていたら「fer」の次は当然のように「fermentation=発酵」が来てしまいました。ということで次回から数回続けて「発酵」関連の様々な用語を取り上げていきます。
化学式なども出て来るのでそれだけで敬遠してしまう方も多そうですが(僕自身がそうです)、ワインを知るうえで発酵のメカニズムを知ることはとても大切。出来るだけ簡単に分かりやすく書いていきますので、お付き合いください!
今日、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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