ワインボキャブラ天国【第116回】「シュール・リー(澱の上で)」 英:on the lees 仏:sur lie
- 2022.02.27
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「シュール・リー(澱の上で)」
英:on the lees
仏:sur lie
目次
『シュール・リー』製法とは?
今回のテーマは『SurLie(シュール・リー)』直訳すると“澱(おり)の上に”と呼ばれるワインの製法です。
まずは前回第115回『酵母』の回でもご紹介をした通りワイン醸造の一番最初の工程をおさらいしましょう。
収穫したブドウはステンレスタンクや木樽に入れられ、生産者が選んだ酵母を加えることで発酵が始まります。その発酵が完了すると、活動を終えた酵母は「澱(酵母粕、ともいいます)」となって徐々にタンク・樽の底に沈殿していきます。通常のワイン製法ではこの酵母の澱をここで取り除いてしまうのですが、『シュール・リー』製法は澱をそのままワインに漬け込んだ状態で一定期間熟成させる製法のことを言います。
酵母の澱が浮遊した状態ではワインは日本酒の「にごり酒」のように白濁していますので、瓶詰めの前にフィルター濾過を実施して酵母粕がボトルに入らないように取り除きます。
『シュール・リー』製法を採用しているワイン産地
この製法を取り入れている生産地で最も有名な場所は、フランス・ロワール地方の大西洋河口地域「ミュスカデ」ですね。上の画像は、ミュスカデ地域を一望した風景です。
この地域では商品名に『ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・“シュール・リー”』などとシュル・リー製法を実施していることを明記しています。『ミュスカデ』は、使用されるブドウ品種「ムロン・ド・ブルゴーニュ」種の香り・味わいが非常にストレートでシンプルなので、酵母の風味をプラスすることで味わいに厚み・深みを持たせています。醸造から1~2年の非常にフレッシュな段階で楽しめるこの地域のワインは酵母菌の香りに加え、瓶詰め時にボトル内に発酵由来の微量な炭酸ガスを残留させることでふくよか且つ爽やかなスタイルに仕上げることも多いです。
また、最近はシャンパーニュやブルゴーニュ地方では熟成後の香りに複雑性をもたらす要素の一つとしてこの製法を取り入れる生産者が多くなってきました。
分かりやすい写真見つけたので、ご紹介します。
このページ冒頭に載せたい画像は樽の下部に沈殿した酵母粕の部分だけを拡大したものなのですが、こちらの画像はもっと分かりやすいかなと思いまして掲載しました。この製法を最も伝統的かつ積極的に取り入れているミュスカデ地域では、見学者に製法の説明をするために上のような片面がガラス窓になっている樽で『シュール・リー』製法を見せてくれる造り手が多いのです。煙のようにワインの液中を舞っているのが酵母粕、結構な量が入っているように見えますよね。
フィラディスが取り扱っているミュスカデの生産者『ドメーヌ・ダヴィッド』では、キュヴェにもよりますが大体8か月から10か月、最も上級のものではなんと3年近くもの間シュール・リーを実施し、ワインにイーストのニュアンスを付加していきます。3年間酵母に漬け込んだ最上級キュヴェは『クリュ・ゴウレーヌ』、是非飲んでみて戴きたい1本です!
フィラディスでは『ミュスカデ・シュール・リー』製法のワインは4種類取り扱い中・・・『クリュ・ゴウレーヌ』もこちらに掲載されています。
↓↓↓
https://firadis.net/sc/searchresult.html?『ミュスカデ・シュール・リー』製法のワイン
それでは今回はこのへんにしておきましょうか。
『シュール・リー』を製法に取り入れたワインの香りや味わいスタイルについては、以下リンク先のコラム2本でより詳しく細かく紹介をしておりますので、今回の内容でご興味を持たれた方は是非読んでみてくださいね。
今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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