あ、せかんどおぴにおん 第6回「ドメーヌ・ダヴィッド ミュスカデ」

あ、せかんどおぴにおん 第6回「ドメーヌ・ダヴィッド ミュスカデ」

『あ、せかんどおぴにおん』第6
 ミュスカデ」

 

 このコラムについて

あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。

疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。

このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている五十嵐店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然五十嵐店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、五十嵐店長に質問することもあるかもしれません。

このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。

それでは早速商品ページを見ていきましょう
6回目にとりあげるのは、 です。

これがミュスカデ。現地での別名(シノニム)はムロン・ド・ブルゴーニュです。

イメージを覆す。

このワインを飲む前に、大前提となるのが、ミュスカデという品種の立ち位置です。今このコラムを読まれているあなたが特にミュスカデに対してネガティブなイメージを持っていなければ、わざわざ言うこともないんですが、、ミュスカデという品種にネガティブなイメージを持ってる人、意外と多いんです。

商品ページを少し下にいき、『生産者概要』をみるとこのように書いてあります。

軽くて安い白というミュスカデのイメージを覆すワインを生み出すエネルギッシュな新世代。

このワインはそれまでのネガティブなイメージを覆すワインだということ。これが重要です。しかも実は、そのミュスカデという品種のネガティブなイメージは結構根深いものがあるのです。それを知るために、ミュスカデの歴史をちょっとだけひも解いてみましょう。

ロワールのミュスカデの歴史。大どんでん返史。

 

状況を一変させたのは、第二次世界大戦だった。多くのパリジャンがナントに疎開したが、ナントでミュスカデを飲むようになった。終戦になってパリに帰り、味を憶えた懐かしさと、ブルゴーニュの白の高価を嫌ったパリジャンたちがミュスカデに手を出すようになった。かくて、赤のボジョレと白のミュスカデがパリの人気ワインになる。これに目をつけた外国の輸入業者がミュスカデ流行に一役買った。かくてミュスカデ全盛時代をむかえる。

ローヌとロワールのワイン -二つの河の物語-』
山本 博

ロワールとローヌの歴史を知るうえでこの本は本当に素晴らしいので、興味のある方はぜひ。ナントというのは、ロワール川最下流の最大の都市(地図上のNANTES)。ナントの勅令とか、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。第二次大戦までは地元の魚料理を楽しむ地酒的な存在に過ぎなかったミュスカデが、急激に人気を高めたのです。

しかしこのことがロワールのミュスカデの品質低下をもたらします。品質のいいものをそんなにたくさん生産できるわけもなく、安価でありながら低品質なミュスカデが出回るようになります。そうすると次第にロワールのミュスカデ全体の評価が凋落しました。そして生産者の説明に合った通り、「軽くて安い白」、あるいはシャバシャバしてるなんてイメージがついてしまったのです。

さて、歴史は巡る。永劫回帰です。ミュスカデのイメージが下がると、逆に高品質のミュスカデワインを生産しようとする生産者が現れるのです。元々人気を博したのはおいしかったからであり、美味しいミュスカデが産まれる下地はこの地にはあるわけです。本来のポテンシャルを発揮する、というか時代が下り技術も知識も増えているので、美味しいと評価された当時よりもさらに美味しいミュスカデを生産しています。ミュスカデの品質の大どんでん返しを果たしたその生産者こそか、今回のドメーヌ・ダヴィッドなのです。

 

ダヴィッドともう一人。

 

ドメーヌ・ダヴィッドは、1927年から続くドメーヌの4代目ステファン・ダヴィッドと、パリでソムリエとして働いていたセバスティアン・デュヴァレにより2011年に設立された。30haの所有畑の内、25haがミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌのアペラシオンに広がる。彼らが本拠とするル・ランドローは代々ダヴィッド家がワイン造りを行ってきた土地である。人口約20人という小さな村だが、ここはミュスカデの可能性を切り開いた偉人ギィ・ボサールもドメーヌを構える、ミュスカデの中核となる生産エリアだ。ミュスカデといえば軽快な味わいの安価な白を想像するが、ドメーヌ・ダヴィッドのワインはそれとは一線を画す。彼らの畑が属するミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌは、ミュスカデ全体の栽培面積85%を占め、ミュスカデ最良のアペラシオンと名高い。フランスでは珍しい石灰を含まない土壌が特徴的で、ガブロと呼ばれる火山性の岩石や花崗岩、シスト、片麻岩など変化に富んだ土壌を持つ畑が広がる様はパッチワークのようである。

ドメーヌ・ダヴィッドは、ワインのブランド名で、実際にラベルにも「Domaine David」と書いてありますが、会社名は「EARL David & Duvallet」で、オーナーもダヴィッドとデュヴァレの2人です。このデュヴァレ氏は、日本にも店舗のあるジョエル・ロブションが最初に独立して出したお店など、パリのレストランでソムリエをしていた人物です。この2人でこれまでのロワールのミュスカデとは一線を画すものを生産するという、ミュスカデ・ルネサンスを果たしました。

 

彼らがモットーとするのは、畑ごとに異なるテロワールの特性とそれを取り巻く自然環境を尊重したワイン造りを行うことである。ブドウ栽培はリュット・レゾネを採用。除草剤は使わず、畑を耕し、土壌の活性化を図っている。また、収穫を早めてフレッシュな酸を残す昔ながらのミュスカデと対照的に、収穫を遅くし理想的な熟度に達したブドウのみを用いている。醸造はもちろん、区画ごとに分けて行っている。全ては畑のキャラクターを微細な違いも含めてワインに反映させるためである。テロワールの表現に情熱を注ぐ彼らの想いが最もクリアに伝わるのはレ・バルボワールとクロ・デュ・フェールのワインだ。ガブロと呼ばれる火山性の岩石からなる土壌を持つ平地の畑レ・バルボワールと、雲母状シストの土壌を持つ斜面の畑クロ・デュ・フェール。偉大な隣人ギィ・ボサールと同じく、この地に特徴的なそれぞれの土壌から造られたワインは、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌのテロワールから本来生まれるべき味わいを見事に体現している

 

さてこのドメーヌ・ダヴィッドのワインのポイントは次の2つ、遅摘みとテロワールです。徹底して収穫を遅くすることで、その分果実の熟度を高める。これは簡単なようで難しいです。なぜならばその分リスクも増え、手間もかかるかかるからです。

そしてもう一つのポイント、テロワール。彼らがテロワールにこだわっているのは、扱っている2つのワインからわかります。

今回テイスティングする、「 ミュスカデ」は実はこのワインの正式な名前ではありません。この生産者のベーシックなワインとして、当店では分かりやすく正式名称にしていないのですが、ラベルの真ん中に大きく「 Barboires(バルボワーズ)」と書いてあるように、正式名称は「Muscadet Sevre et Maine Sur Lie Les Barboires」です。そして当店ではもう一種類「ドメーヌ・ダヴィッド ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュール・リー クロ・デュ・フェール」を扱っています。(こちらについては同区画の古樹(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のみを使用した上級品も取り扱っています。180円しか変わりません。)

実はこのバルボワーズとクロ・デュ・フェールは土壌の違いによって分けられた2つなのです。前者は火山性の土壌で後者が雲母状のシスト。前者の方がパワーを、後者の方がミネラル感を感じる、というような違いを持ちます。ぜひ興味がある方はどちらも飲んでいただきたいと思いますが、いずれにしてもテロワールの違いでワインを分けて販売するというような、ミュスカデでここまでテロワールにこだわる生産者は非常に稀有な存在なのです

哀しい話

実は大どんでん返しを果たした、このロワールのミュスカデについて、哀しい話があります。このワインは土地のポテンシャルを最大限引き出して徹底的に品質を高めていますが、残念ながらまだまだロワールのミュスカデにはネガティブなイメージを持っている方は多い。。なので、なんとそのイメージが邪魔をし、過小評価されているので、あまり価格が高くないのです。

これは生産者にとっては哀しい話なのですが、消費者にとっては嬉しい話です。ネガティブなイメージがコストパフォーマンスの高さをもたらしていま。では、生産者の努力に感謝をして、いよいよテイスティングです。

いよいよテイスティング

≪五十嵐店長のテイスティングコメント≫

和食のように「素材の新鮮さ・自然のままの美味しさ」を最大限生かそうとする料理には、きりっと辛口フルーティなこの『ミュスカデ』がとにかく絶対のおススメです。レモンやグレープフルーツ、ミントを想わせるフレッシュな果実味と豊かなミネラル分が、新鮮な素材を生かした日本料理とも相性抜群!
ドメーヌ・ダヴィッドはフランスの港町ナントにほど近いミュスカデ地域の、小規模ながら優良な生産者。「軽くて飲みやすい」というイメージだけで過小評価されてしまうことが多い『ミュスカデ』というワインにおいて、完熟した果実のふくよかな味わいもバランス良く同居した造りで高い評価を受けています。動画コメントでは、テイスターの大越さんは鶏肉の冷しゃぶを提案してくれました。料理家川上ミホさんはそこに、ミュスカデの持つハーブと柑橘類のニュアンスに近い大葉とレモンの皮を加えてアレンジ、、、和と仏の優美なマリアージュですね。こういった簡単なおつまみでも合わせやすい、使い勝手の良いワインです!!

さていよいよテイスティング。

私はこのワインをまろやかさと爽やかさのバランスの良いワインだと感じました。

まず香りから。レモン、グレープフルーツなどの柑橘系、青リンゴくらいまでの爽やかで抜けるような香り。あとはお客様のレビューでもトースト香、なんて書いてありましたが、いわゆるシュール・リーのまろやかな香りを感じました。しかもこれは二日目のほうが強くなっている印象でしたね。

味わいは香りで感じた柑橘の雰囲気が口の中でも広がり、酸と共に上に抜けるような爽快感を演出します。果実の熟度に力を入れているだけに、酸と果実のバランスが良く、そこにまろやかさも加わります。それぞれのバランスが良いながらも、でもあくまでフレッシュで爽やか。確かに新鮮な素材との相性はよさそうです。素材の味わいを活かした料理に、そしてこれからの夏の季節に、千円台として重宝する白ワインだと思いました。

ただ私はもう一種類のクロ・デュ・フェール、しかもヴィエイユ・ヴィーニュのほうが好みだったりもします。これらも少し高いといっても大した差ではなく、千円台なので、ぜひ皆さんも好みに合わせてミュスカデをテロワールで選ぶ、なんてやってみてはいかがでしょうか。

たくさんの異論反論をレビューにてお待ちしております。

また、こちらでは、生産者インタビュー。それから西岡さんのワインペアリング奮闘記はこちら。これらも、よろしければぜひ。

Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。

<参考文献>
山本博『ローヌとロワールのワイン -二つの河の物語-』河出書房新社

 

CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
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