生牡蠣×泡、マリアージュ徹底実験 レポート第2回『さっぱり系牡蠣に合うのは、どんなワイン??!』
「生牡蠣×シャンパーニュマリアージュ実験 / 生牡蠣に本当に合うシャンパーニュを探せ!」の第2回です。
誰もが知る王道マリアージュと言われるこの組み合わせ、
でも定番だからこそ、もっと深く突き詰めて「本当に合うシャンパーニュ」を見つけよう!という試みです。
まずは今回の実験で用意したものと流れを改めて。
●牡蠣は2種類を用意。
・最もスタンダードなさっぱりとした味わい系統のもの(長崎県・五島列島産)
バランス良くミネラル感と出汁っぽいコクのあるタイプ。
(ですが実は3月という時期は年間で最も濃厚な時期だそう。)
・ミルキーで濃厚なタイプ(兵庫県・室津産) ぷっくり丸く身の膨らんだ、実に濃厚な味わいタイプ。
●シャンパーニュは10種類を用意。
・ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、複数品種ブレンド。
・ドサージュ(甘味リキュール添加)量3g/L程度のものから、10g越えのものまで
・マロラクティック発酵(乳酸発酵)実施の有無
上記の3条件でバラツキを持たせて選定。
これら全ての組み合わせで、
ワインの銘柄を見ない目隠しのテイスティングによるマリアージュ試飲。
牡蠣2種類(*調味料は一切無し)×シャンパーニュ10種類の20セッションを実施する、という流れです。
セッションごとの評価は、
0点(組み合わさることでどちらかの悪いところが出てしまう)
~4点(相乗的に美味しくなり、単体を遥かに超える味わいが体験できる正に「マリアージュ」)の5段階で採点。
ひとつのマリアージュを試したらそれについてメンバーがそれぞれの評点を発表し、
マリアージュについて評価・議論をして全体の意見をまとめる、という流れです。
それではまず、長崎県五島列島から取り寄せた、
贅沢なさっぱり系生牡蠣とのマリアージュについての実験結果から始めてみたいと思います。
皆さんは、さっぱりとした牡蠣にだったらどんなワインやシャンパーニュが合うと思いますか??
敢えて事前にみんなで予想を話すことはしませんでしたが、僕を含めフィラディスメンバーの先入観は・・・
「あっさりした味わいの牡蠣なら、レモン・すだち・かぼす等、酸味のシャープな柑橘類的な印象を持つ
シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン、そして甘さの出来るだけ低いものが一番合うはず!」でした。
フレッシュな生牡蠣の旨味を生かして美味しく楽しむ、と言ったらシンプルにレモンを絞るか、
ワインビネガーのソースなどが一般的な調味料でしょう?
さあ、では10種類のシャンパーニュを、順番に目隠しテイスティングで試していきましょう。
牡蠣を一つ口の中に入れ、そしてシャンパーニュを。
まずは「テクスチュア=食感」がうまく混ざり合うか、が大事な判断基準。
何故って例えば柔らかな食材にとても堅い感じのワインが乗った時には、やはり一体感が感じられないからです。
さっぱり×牡蠣シャンパーニュ1つずつの試飲を重ねていきます。
熟練のテイスター達は目隠しされたシパーニュを次第に「当てていこう」としてしまうようになります。
「これはブラン・ド・ブランっぽい・・・やっぱり柑橘系のニュアンスが生牡蠣と合う感じだな。
これは黒ブドウが多そう、味が濃厚過ぎて牡蠣の繊細な旨みが消えてしまっているな・・・」
と言う感じで、ついつい定石に当てはめてしまいそうになり、それを堪えつつ客観的に実験。
だって今回は、「生牡蠣に“真に合う”シャンパーニュ」だけを探すのですから。
でも実は僕も、黒ブドウの入っていそうなシャンパーニュ(飲まなくても色から分かったりします)については、
これは多分合わないよな・・・と先入観を持って接してしまうこともありました。
一人一人のマリアージュ評価は、どうしてもばらついてしまうものです。
ある人は4点なのにある人は0点、なんていうものも中には1-2本ありました。
個人の味覚や好みが評価に加わってしまうのを修正するのが、各マリアージュについて全員で議論する時間。
再度同じマリアージュを試し、評価を出来るだけ客観的に統一します。
その中で、なんと全員一致で満点を付けたシャンパーニュが1本だけありました。
比較的やわらかな口当たりと味わいに程良いベリー感の果実味、酸は控え目。全体的にバランスが良いスタイルです。
生牡蠣と一緒に口に入れると・・・これは、全てが完璧。
牡蠣の滑らかな食感とシャンパーニュが優しく一体化し、
魚介特有の潮の旨味、程良いミルキー感など全ての要素が、シャンパーニュと素晴らしく調和していく感じ。
飲みこんだ後も、双方の心地よいフレーヴァーが余韻として長く長く続くのでした。
でも、全員が心の中で「これ、どう考えてもブラン・ド・ブランではないけど・・・。」
目隠しを取ってみると…なんと、黒ブドウ「ムニエ」種を60%、「ピノ・ノワール」種を30%使用した、
ほぼブラン・ド・ノワールに近いシャンパーニュ、
『ヴーヴ・オリヴィエ カルト・ドール・ブリュット N.V.』でした。
ドサージュ量こそ6g/Lと比較的控え目ですが、
定石から考えたら決して一番にはならないはずのシャンパーニュに全員が満点。驚きました。
確かにブラン・ド・ブランはレモンのようにさっぱりした酸味を加えて、牡蠣を更にフレッシュにしてくれます。
でも、極論を言えば「だったらレモンをかければ良い」ということ。
味わいを邪魔せず、食べやすくはしてくれるものの、『その先の新しい風景』は見られなかった。
でも、黒ブドウのシャンパーニュが、生牡蠣を一味加わった新しい料理に進化させてくれた。
この意外性溢れる面白さ、これこそが「マリアージュ」なんだ!と、正直心が震えました。
・・・とこのへんで今回はこのあたりで。
次回は完結編の「ミルキー牡蠣」。
ヴーヴ・オリヴィエは、ミルキー牡蠣でも新たな感動を与えてくれるのでしょうか??
-
前の記事
生牡蠣×泡、マリアージュ徹底実験 レポート第1回『王道マリアージュのその先へ!』 2019.09.02
-
次の記事
生牡蠣×泡、マリアージュ徹底実験 レポート第3回『クリーミー系牡蠣に合うのは、どんなワイン??!』 2019.09.14