ワインボキャブラ天国【第112回】「フィルター濾過(ろか)」 英:filtration 仏:filtration
- 2022.01.16
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「フィルター濾過(ろか)」
英:filtration 仏:filtration (女性名詞:発音は「フィルトラスィオン」)
目次
「フィルター濾過」とは?
アルコール発酵によって出来たワインはたんぱく質などの目に見えない固形物や発酵後に残った酵母のかすなどが含まれている状態で、日本酒の「どぶろく」「濁り酒」のように濁った液色をしています。その状態から固形物・酵母などを除去し、皆さんが食卓で飲んでいる透き通った状態のワインにするのがこの作業です。
この作業は実は非常に伝統的なもので、貯蔵容器に入れたワインを長期間静置することで下に固形物を沈殿させ、上澄みだけを飲用にするという手法で実施されていました。現代でも、一定の熟成を経てから瓶詰めをするような赤ワインについてはこの手法が続けられています。一方で、フレッシュな段階で楽しむ若飲みの白ワインやスパークリングワインの元になるワインでは、機械によって実施されるようになったというわけです。
「フィルター濾過」を実施する目的と効果
フィルター濾過をする目的は、固形物を除去してワインを透明にすることだけではなく、瓶詰めしたワインがバクテリアなどで汚染されることや、残っていた酵母によって瓶内二次発酵が勝手に起こってしまうのを防ぐことです。
フィルターを使うタイミングとしては、アルコール発酵前から発酵後、そして瓶詰めの直前があります。それぞれの段階の果汁・ワインの状態と取り除きたい固形物の大きさに応じて、フィルターの「気孔(目)の粗さ・細かさ」を選んでいきます。例えば、アルコール発酵前の固形物が多く濁った果汁に対して目の細かいフィルターを用意しても、すぐに目詰まりしてしまって効果が発揮できません。逆に、瓶詰めの直前でワインから細かいバクテリア・酵母菌をきれいに取り除きたい時に目の粗いフィルターを使用しても、サイズの小さな菌はフィルターをどんどんすり抜けていってしまうことになります。それでは意味がありませんよね。
敢えて「フィルター濾過」を実施しないことも。
さて、その一方で「敢えて濾過を実施しない」という選択肢もあります。無菌状態を求めすぎるあまりワインを何度も細かいフィルターにかけることで、不要な固形物と一緒にワインの香味成分までもが取り除かれてしまい、色や香り、味わいが損なわれ、品種・産地・ヴィンテージの個性が失われてしまうこともあるからです。生産者の中には過度のフィルター濾過をするとワインが薄くなってしまうから、と一切フィルターをせずに瓶詰めするケースさえあります。これはいわゆる「ノンフィルタ=無濾過ワイン」ですね。
それなら無濾過ワインの方が本来の味わいがして良いじゃないか・・・濾過したワインなんでダメだ!と思われる方もいらっしゃると思いますが、一概にそうとも言えません。無濾過のワインは瓶内で再発酵が起こったり(*瓶内で炭酸ガスが生成されてしまい、高いガス圧向けに造られていないスティルワイン用のボトルだと爆発することもあります。非常に危険です。)、濁っていたり、バクテリアの繁殖により悪臭が発生することもあります。
「ノン・フィルター」は、汚染や再発酵のリスクなど品質を左右する危険な要素と常に背中合わせなのです。
近年、「自然派」と呼ばれる造り手を中心に、出来るだけ人工的に手を入れることはしたくないと、ノン・フィルターかつ酸化防止剤(SO2)もほぼ使わずにワインを造る生産者も数多く存在します。ただ、闇雲に無濾過や無添加が全て品質の良いもの、と考えるのはちょっと違うかな・・・と思います。品質を保持する観点から考えると、濾過によりワインに一定水準の「安定性」を与えることも非常に大事なことなんですよね。
ということで「フィルター濾過」についてのご紹介はこのへんで。
濾過についてもっと詳しく知りたい方は、この下の項でご紹介している「フィラディスワインコラムプロ」の記事を是非読んでみてくださいね。
今日も、あなたの表現するワインの世界が少し広がりました!
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