よく耳にするワイン用語「ヴィエイユ・ヴィーニュ」って何??
- 2020.04.23
- なるほどのあるワインコラム
- アメリカ, ヴィエイユ・ヴィーニュ, フランス, ラベル, 写真, 生産者
今回は「古木=ヴィエイユ・ヴィーニュ」についてご説明致します。
ワインを時々買っている方なら、この表記を見たことがあるかと思います。
「Vieille Vigne」とか、「V.V.」という形でラベルに表記されているのですが、フランス語で「古い樹」という意味の言葉です。
樹齢何年からを「古木」と呼ぶのか?という明確な基準・規定は実は決められていません。
ワイン生産者達は、一つの目安として「20~25年程度経ったら古木と表示してもよい」と考えています。
ブドウ樹は、育つ環境にもよりますが約120年間に渡って成長し実を付けると言われています。
生まれたばかりの若木と数十年経った樹の写真の2点を後ほど紹介する商品のページに掲載しているのですが、
まるで別の植物のように異なる外観。
青々と若々しくもどこか頼りない若木に対し、
太く剛健な古木は長い年月を生き抜いてきた真っ直ぐな生命力を感じさせます。
クスノキなどの大木が与える安心感とは異なる、
決して人間の思うままにならない自然の脅威までも感じさせるような、いのちの力でしょうか・・・。
では、古木から収穫されるブドウは何が違うのか???
簡単にまとめると、以下の3つとなります。
①長い年月をかけて成長した古木は、地中の奥深くまた広い範囲に根を張り巡らせ、多層に渡る土壌からミネラル・養分を吸収する。
そのためブドウ果汁に含まれる要素が非常に複雑となり、ワインにもその複雑性が反映される。
②ブドウ樹は樹齢を重ねるごとに実らせる房数が減少していく。
そのため、実る一房一房が蓄えるミネラル・養分量が相対的に多くなり、その果汁によって作られるワインも複雑で濃厚になる。
③実るブドウ果実の果皮が厚くなっていくため、果皮と果実の間に含まれる色素などの成分量が増える。
よって、色が濃く、骨格のしっかりとした力強いワインとなる。
根の張り方についても、商品ページに興味深い画像を掲載しておきました。
地表からは決して見えない深く広く張り巡らされた根は、植物の生きることへの執念を感じさせますね。
(*ワインはお買い上げにならなくても、この画像だけはぜひ見て戴きたいです。)
ワイン専門商社フィラディスの直販ショップ Firadis WINE CLUBが古木ワインの代表としてご紹介させて戴く1本は、
なんと樹齢150年以上という超ヴィエイユ・ヴィーニュから収穫されたブドウで造られるワイン。
「アバニコ・セレクシオン エテルヌム・ヴィティ 2013年」です。
今から約150年前、ヨーロッパのブドウ樹は「フィロキセラ」という名のアブラムシによりほぼ壊滅させられました。
ブドウの樹液を吸い尽くして枯らせてしまうこの害虫は、アメリカ産の苗木に付着してヨーロッパに上陸。
僅か10年程度の間にヨーロッパ全域のブドウというブドウを食い尽くしました。
ですが、このひどい災禍から逃れたブドウ樹が僅かながら存在します。
地理的・気候的条件でフィロキセラが生育できなかった場所に生えていたブドウ等がそれに該当するのですが、
この「エテルヌム・ヴィティ」に使われているブドウもその一つ。
押し寄せる完熟果実の波のような、圧倒的な古木のパワー。
時間に思いを馳せながら飲むのに最適な1本です。
新しいワイン体験を、この1本で是非。
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