ワインボキャブラ天国【第145回】「塩気のある」 英:salty 仏:sale
- 2022.10.09
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「塩気のある」
英:salty 仏:sale(最後のeに右上がりアクセント 形容詞:発音は「サレ」)
目次
ワインに「塩気がある」とはどういう意味?
「しょっぱいワイン」なんてあるの??と思われる方が多いのは当然。ワインはブドウからできる果実酒ですから、味わいのタイプが「辛口」と書いてあっても基本的には「塩辛さ」等は一切ありません。どんなに辛口の、ドライなスタイルのワインでも果実由来の甘さ、というのはごく控えめだとしても必ず含まれています。
ではその上で「塩気のあるワイン」とは何なのか??というのが今回の話。実際にそんな味わいニュアンスのあるワインを一例としてご紹介しながら、説明を進めていきたいと思います。
まずはこちらの写真を見て戴きましょう。
これは「アルバリーニョ」というブドウ品種。この品種はスペイン北西部の産地「リアス・バイシャス」で栽培されている、いわゆる土着品種(*限られた地域だけで栽培されているローカルなブドウ品種。一方で、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど世界中どこでも栽培されている品種は「国際品種」と称されます。)です。
リアス・バイシャスは日本の三陸地方などでも使用される「リアス式海岸」の語源にもなった場所で、ギザギザに入り組んだ地形の海岸が広がり、その海沿いにワインの産地が点々と広がっています。
この産地の栽培の特徴は、日本の生食ブドウと同様の「棚造り」。ブドウ狩りに一度は行ったことのある我々日本人にはお馴染みですが、欧州では限られた産地でしか採用されていない栽培スタイルです。
この栽培法の基本は、ブドウの蔓を這わせる棚を高めの位置に作ること。その棚が日陰を作り、ブドウの実を強い日照から守る役割を果たします。また、湿度の高い地方(日本などはまさにそうです)では房を地上から離す事で病害や湿気から守る意味合いもあります。リアス・バイシャスのように、海沿いの暑い地域ではまさにこの栽培法が最適なんですね。
ではなぜワインに「塩気」が?
実はこのリアス・バイシャス地域でアルバリーニョ種を使用したワインを表現するときによく使われる表現が本日のテーマ「塩気のある」又は「塩っぽい」。英語だと「ソルティー」という言い回しが使われます。
では、その「塩気」は何に由来するのか・・・?についてご紹介していきましょう。
ここで、リアス・バイシャスの風景の写真を見て戴きましょうか。
入り組んだ海岸線、そしてむき出しになっている岩肌が見えるでしょうか。この地域は、ミネラルを豊富に含む花崗岩の土壌。そして海に間近な地理条件から、土壌には自然と塩分が含まれています。そんな土地に飢えられたブドウですから、根から様々なミネラルと併せて塩分も吸収することとなります。
そして、海から畑に吹き付ける潮風。ブドウの実には潮風が運んだ塩分が付着し、収穫後その塩分も含んだ状態で仕込みが行われることとなります。こうして、ワインに「塩っぽさ」がもたらされるというわけです。
でもご安心を、普通においしいワインですよ!
とは言え、冒頭でも書いたように味わいについては決して「しょっぱいワイン」ではないのでご安心を。甘さの中にほのかな塩気を感じる程度の、非常に心地よいアクセントです。潮のニュアンス、これがあるワインは当然のように魚介類との相性が抜群に良いんですよね!!
勿論、リアス・バイシャスのアルバリーニョ以外のワインでも「塩気」を感じることはあります。特に海沿いの産地のワインには結構見られる特徴だと思いますよ。ワインを飲む時は産地のロケーションをチェックして、どんな土、どんな気候のもとで造られたワインなのかを知った上で飲むと、香りや味わいの構成要素に納得度が高くなり、より記憶に残しやすくなります。興味のある方は、その土地の郷土料理・食文化などを調べるのも楽しいですよ。
ということで今回の「ボキャブラ天国」はこれにて終了。
今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました!
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