ワインのある景色―8月 (28)
- 2026.08.01
- ワインのある景色
目次
ブドウ畑の最終章
8月も後半になると、畑のブドウもラストスパートをかけて熟度を増してきます。太陽をたっぷりと浴びて日ごとに色づきを深めていくブドウ達は、ぎゅっと風味を凝縮させながら、最終章を迎える準備をしています。葉々の間からブドウが見え隠れしている光景の美しいこと。。。
憧れの地メドックで開催されるマラソン大会
フランス南西部、世界屈指のワイン産地として名高いボルドー地方。その中でも格付けシャトーがひしめくワインラヴァーの憧れの地メドック地区では、この美しい景色を思いっきり楽しむイベントが毎年9月の収穫を前に開催されます。「Le Marathon des Chateau du Medoc」、メドックマラソンと呼ばれるマラソン大会です。美しく広がるブドウ畑の中を走るために、世界中から一万人近いランナーが集まります。
この大会、ただのマラソン大会ではありません。
まず、ランナーはみんな仮装をしなければなりません。毎年、大会のテーマが掲げられ、そのテーマに合った仮装をしている人、全く関係ない仮装をしている人、その仮装で42.195㎞行けますか?と心配になってしまう人など、ランナー全員が思い思いのコスチュームに身を包んでスタートラインに並びます。
そして、コース上には美しい建物を誇る名だたるシャトーが点在し、その多くが給水所となっています。参加者の多くはこの給水所がお目当て。ワインが惜しみなく振舞われるのです。ペースを気にせず立ち止まり、シャトーの庭で一杯、とランナーたちは談笑を楽しみます。
飲んで、食べて、笑って、ゴールを目指す
飲みながら走るなんて無茶にも思えますが、それがこのマラソン大会の醍醐味。沿道ではチーズやパテ、エスカルゴにステーキに生牡蠣など、地元の食材や様々な料理が提供され、あちらこちらで奏でられるバンドの生演奏に応援されながら、いかに飲んで、食べて、笑って、なおかつゴールするかが勝負どころ。写真を撮りながら、シャトーを通るたびに立ち寄って、周りのランナーたちと乾杯。タイムは二の次で楽しむところが、世界中からこの大会に参加者が集う理由なのです。完走制限時間は6時間30分。時間内にゴールにたどり着けば、完走賞として記念メダルとワインが1本もらえます。そして、あらゆる誘惑に打ち勝ち、見事優勝したランナーには自分の体重と同じ重さ分のワインが贈呈されるという、つまり、「飲んだら遅くなる」「でも飲まなきゃもったいない」というジレンマと向き合いながら、自分との戦いを制した勇者がご褒美を受け取れるのです。これぞまさに、「マラソンは自分との闘い」ですね。
ボルドーの名物料理
42.195kmのコースにはボルドーを左岸と右岸に分けるように流れる雄大なジロンド川沿いも含まれています。その昔、ワインの輸送経路として大きな役割を果たしていたこの川やその支流ではウナギが獲れます。正確にはヤツメウナギですが、このウナギを赤ワインで煮た「Lamproie à la Bordelaise(ランプロワ・ア・ラ・ボルドレーズ)」はボルドーの名物料理のひとつ。ぶつ切りで煮込まれているその見た目は、蒲焼に慣れている私達日本人にはちょっと抵抗がありますが、口に運べばそのふくよかな味わいに魅了されます。合わせるワインはもちろんボルドーワイン。軽すぎず、果実味豊かで程よくタンニンが丸くなったワインが、ウナギの脂質や旨味を引き立ててくれます。年々、ヤツメウナギの漁獲量が減ってしまい、Anguille(アンギーユ=うなぎ)を使う場合が多くなっているようですが、ボルドーの赤ワインと濃厚なソースでじっくり煮込まれた一皿には、昔ながらの郷土の香りがしっかりと宿っています。
2023年5月から、「定期ワインコース」のお客様にお届けする冊子「エフスク」にコラムを連載しています。「ワインが好きだな。ワインのことを知りたいな。産地に行ってみたいな。ワインが飲みたーい!」と、皆様に思って頂けるようなワインのある景色をお届けできればと思っています。引続きどうぞよろしくお願い致します。
ライター紹介:新井田 由佳(Yuka Niida)

・J.S.A.認定 ソムリエ
・La Confrerie des Hospitaliers de Pomerol ボルドー ポムロル騎士団称号
大手総合商社在職中にワインに魅了され、退職して渡仏。ブルゴーニュを中心にフランス、イタリアの数多くの生産者を訪問し見聞を広める。知れば知るほど魅了されるワインの世界について、もっと知りたい!が現在進行形で継続中。
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